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2009年1月

2009年1月29日 (木)

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23 名盤

Tchaikovsky チャイコフスキーは古今の音楽家の中でも稀代のメロディメーカーでしょう。私見ではプッチーニと正に双璧だと思います。白鳥の湖の「情景」や、「悲愴」の第1楽章中間部の有名なメロディなどはチャイコフスキーの代名詞と言える名旋律でしょうし、このピアノ協奏曲第1番の冒頭と第1主題も実に素晴らしいと思います。まさに「これぞクラシック音楽!」と言いたいほどの大傑作です。ところが彼が34歳の時に完成したこの曲は、最初は母国ロシアの音楽家達に全く認められずに初演すら出来ませんでした。やむなく曲を贈った名指揮者のハンス・フォン・ビューローがボストンで初演したところ大絶賛されたのです。今ではとても考えられないことですね。

この曲は、まず冒頭のホルンの4つの音を聴いただけで完全にノックアウトされます。なんという天才的な序奏でしょうか。そこに更にあの美しい第1主題がたたみかけてきます。展開部のロシア風の舞曲もとても楽しいですし、壮麗な終結部も圧巻です。第2楽章の美しさも比類が有りません。詩情溢れるロシア風のメロディの主部に対して中間部のフランス風とも言える洒落た雰囲気の対比が正に絶妙です。第3楽章はロシア舞曲を基にしたような盛り上りに大興奮させられます。この曲は正にピアノ協奏曲の「女王」と言えるでしょう。えっ?それでは王様は何の曲かですって?それは決まっています。ブラームスの第2番です。するとさしずめ「皇帝」が皇太子というところですね。(笑)

これほどの名曲なので古今の名盤はあまたなれど、僕が特に愛聴するCDをご紹介させて頂きましょう。

Cci00013 ウラディミール・ホロヴィッツ(Pf)、セル指揮ニューヨークフィル(1953年録音/Otaken盤) ホロヴィッツにはトスカニーニと組んだ録音も幾つか有りますが音が悪すぎました。その点、このセルとの録音はかなり音が良く、特にピアノの音がとても明瞭です。実演なのでミスタッチが無いわけではないですが、いかに昔のヴィルトオーゾの演奏が凄まじいかをまざまざと思い知らされます。テンポは早めですが、味の濃さはちょっと比類が有りません。3楽章の最後の追い込みもセルともどもまるで鬼神のようです。全盛期のホロヴィッツの迫真の演奏は一度は聴いておくべきだと思います。

Cci00011 エミール・ギレリス(Pf)、ライナー指揮シカゴ響(1955年録音/RCA盤) ギレリスはおそらくこの曲の録音の数が一番多いと思います。まだ若い時代のこの録音は、非常にきりりと引き締まった、ピアノパートのみについてはあらゆる演奏のリファレンスと言えるような見事さです。ライナーの伴奏もいつものように筋肉質なので、少々色気の不足は感じますが、ギレリスとの組み合わせのバランスが取れているので良いと思います。

Cci00015b エミール・ギレリス(Pf)、メータ指揮ニューヨーク・フィル(1979年録音/CBS SONY盤) ギレリスにはスヴェトラノフと組んだ非常に期待できるはずだったライブ盤も有りますが、いかんせん録音が悪過ぎました。その点、同じライブ録音でも、このメータ盤は高弦の音がざらついてはいるものの全体としてはずっと良いです。ギレリスのピアノも若い頃よりも表現が豊かになり、それに加えてライブならではの気迫が素晴らしいです。2楽章の叙情性なども感心するばかりです。メータもロシア風とは幾らか異なりますが、よく歌わせた大熱演をしてくれているので聴き応えが有ります。 

8361144 スヴャトスラフ・リヒテル(Pf)、カラヤン指揮ウイーン響(1962年録音/グラモフォン盤) リヒテルも古いライブ録音が幾つか有りますが、やはり残念なことに録音の良いものが見当たりません。このカラヤンとのスタジオ録音は音質も良く、昔から一つの定番として人気がありますが、両者ともどうも構えてしまっていて、中々熱くなりません。確かにピアノもオケも非常に立派な音が鳴ってはいるのですが、逆にそれが空虚にすら感じられてしまいます。リヒテルには条件の良いライブ録音を残して欲しかったと思います。 

Cci00013b アルトゥール・ルービンシュタイン(Pf)、ラインスドルフ指揮ボストン響(1963年録音/RCA盤) 初演の地にちなんでボストンでの録音も挙げておきましょう。スタジオ録音ということもあるのでしょうが、ルービンシュタインのピアノがずいぶんと穏やかでおっとりした演奏です。余り刺激的でないので心地よさも感じますが、悪く言えばややBGMのようなのです。もちろん好みも有りますが、僕の耳には少々物足りません。オケ伴奏にも余り魅力は感じません。 

Cci00014b マルタ・アルゲリッチ(Pf)、コンドラシン指揮バイエルン放送響(1980年録音/フィリップス盤) 僕はアルゲリッチの若い頃の演奏はそれは大好きでした。出来栄えに凸凹は有っても、彼女の本能の命ずるままの閃きのある演奏にとても惹かれたからです。ところが後年は、すっかり演出臭い恣意的な演奏をするようになってしまいました。彼女もこの曲には幾つもの録音が有りますが、中ではロシアの名匠コンドラシンの伴奏指揮で弾いたこの演奏が僕は一番好きです。 

Cci00014 エフゲニ・キーシン(Pf)、ゲルギエフ指揮サンクトペテルブルグアカデミー響(1987年録音/YEDANG盤) キーシンのデビュー間もない16歳の時に若きゲルギエフの伴奏指揮で弾いたライブ演奏です。翌年のカラヤン伴奏のグラモフォン録音盤は有名ですが、なんだかお爺さんの監視の下で子供がお行儀良く遊んでいるようで面白みの無い演奏でした。それに比べてこちらは近所のお兄さんと子供が元気一杯に遊んでいるような演奏なので断然楽しいです。力強く輝かしい打鍵でこんなにも上手く表現力豊かな天才少年にはほとほと驚かされます。

91jgcovjowl__sl500_aa300_アンドレイ・ガヴリーロフ(Pf)、アシュケナージ指揮ベルリン・フィル(1988年録音/EMI盤) 名ピアニストのアシュケナージの指揮するベルリンPOがバックとあっては並みのピアニストなら萎縮すると思いますが、さすがに超人ガヴリーロフです。この難曲を軽々と演奏しています。余りに楽々と弾く(上手過ぎる)ので、部分によっては緊迫感が失われ気味なのが欠点ですが、感興が高まった時の演奏は唖然とするほど凄いです。ベルリンPOにロシア的な土臭さは薄いとしても、やはり名盤の一角を占めると思います。

Cci00015 中村紘子(Pf)、スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1990年録音/CBS SONY盤) これは日本でのスタジオ録音ですが、オーケストラの演奏が絶品です。金管の荒々しさと木管や弦の歌い回しはつくづくロシアのオケを感じさせて、「ああこの曲はやっぱりロシアの音楽だったのだ!」と改めて認識させてくれます。この曲の管弦楽の素晴らしさが初めて完全に味わえたと言っても大げさではありません。中村紘子については、彼女に特別な音楽性が有るとも思いませんし、強烈な打鍵を持つわけでもないですが、ここではとても立派なピアノを聴かせています。ロシア国立響の深い音にしっとりと溶け合っていて非常に美しいです。これは掛け値なしの愛聴盤です。

以上、結局のところ僕はどれも楽しめてしまうのですが、独奏ピアノについては、ギレリス(SONY)、アルゲリッチ、ガヴリーロフがベスト3。敢闘賞がリヒテルとキーシンです。一方、オケ演奏については断然スヴェトラーノフがナンバーワン。ところが実際にギレリスとスヴェトラーノフが共演した録音が有るのにそれほど良くないですから、世の中なかなか上手くは行かないものですね。

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2009年1月24日 (土)

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調op.64 名盤

チャイコフスキーの交響曲の中で、「第5番」は第6番「悲愴」と並んで特に人気の有る曲でしょう。クラシックの入門者が一度はとりこに成る曲ですね。逆にマニアにとっては、それほど人気度は高く無いかもしれません。何故なら聴き易いが為に、余りに数多く聴き過ぎると結果的に飽きてしまうからです。曲想も4番、6番と比べると多少深みに欠ける気がします。そういう自分も、この曲を長い間聴かない時期がありました。それを再びこの曲に引き戻してくれたのは、素晴らしい演奏の出現が有ったからです。それはワレリー・ゲルギエフが1998年のザルツブルク音楽祭でウイーン・フィルを指揮したライブ録音のCDなのですが、詳しくは愛聴盤CDの紹介の中でお話ししたいと思います。

前にも書きましたが、第4番迄の交響曲は非常にロシア臭さが強いので、僕はロシア人指揮者がロシアのオケを振った純血ロシアンの演奏を好みます。しかし第5番と第6番については、ロシアのオケ以外の演奏にも好きなものが結構存在します。おそらくそれはチャイコフスキーの音楽が晩年になるとロシアのローカルな曲想から抜け出して、もっと国境を越えた普遍性を得たからだと思います。特にこの第5番は様々な国の指揮者やオケが世界のいたるところで頻繁に取り上げる定番のコンサートピースです。第1楽章の勇壮さと熱い情熱のほとばしり、第2楽章のロマンティックで美しいメロディ、第3楽章の楽しいワルツ、第4楽章の燃え上がるような迫力と絢爛豪華な終結と、初めから終わりまで聴き手を心底楽しませてくれる、実にサービス満点の曲です。もちろんところどころに現れるロシア的な味わいにも不足していません。

それでは僕が愛聴しているCDを順にご紹介させて頂きます。

125 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1960年録音/グラモフォン盤) 言わずと知れた3大交響曲のグラモフォンへのセッション録音です。但し演奏の出来栄えとしては4番、6番の順に優れていて、5番が一番落ちると思います。曲を面白く聞かせるために細部に渡ってありとあらゆる表現の工夫をこらしていて、それはまるで弦楽四重奏の様であり、凄いことには違いないのですが、仕掛けが余りに過剰で、少々「姑息」に感じてしまうからです。これは天才ムラヴィンスキーだからこそ陥ってしまった落とし穴なのではないでしょうか。

689 ジョージ・セル指揮ケルン放送響(1966年録音/EMI盤) 「20世紀の偉大な指揮者シリーズ」の1枚ですが、珍しいセルのライブ録音です。スタジオ録音では完璧性が冷たさを感じさせて、意外と感動出来ないことの多いセルですが、ライブは感情の高まりが感じられるのが良いです。この演奏では全体の造形性を保ちながらもテンポの微妙な変化もみられ、ロマンティックな雰囲気を充分に味あわせてくれるのが非常に素晴らしいです。録音も自然で奥行きが有るので満足できます。

496 アルヴィド・ヤンソンス指揮レニングラード・フィル(1970年録音/Altus盤) この人はマリス・ヤンソンスの父親です。録音は非常に少ないですが、レニングラード・フィルの日本演奏旅行のときにムラヴィンスキーの代わりに大阪で指揮した録音が運良く残されています。ムラヴィンスキーに比べれば何とオーソドックスな指揮ぶりでありましょう。チャイコフスキーだからといってことさら過剰な表現を好まない人にはお薦めできると思います。事実この演奏を非常に好む友人も居ます。

Tchaikovsky_karajan_3817982ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1971年録音/EMI盤) 当時ベストセラーとなった「三大交響曲集」は、まるでライヴのように熱くドライブした演奏が魅力で、カラヤンの録音の中では第一に取りたいと思います。但し第4番ではロシアの香りの無さにかなり不満を感じました。それがロシア臭さが薄れてくる第5番になるとそれほど不満にはならなくなります。絢爛豪華な演奏もそれなりに楽しめます。個人的にはロシア・オケの演奏を好みますが、西側(今では古い言葉だ)のオケによる最上のチャイコフスキーと呼べると思います。

Cci00009 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1983年録音/メロディア盤) ムラヴィンスキーはこの曲を頻繁に演奏していたのでライブ録音の数も非常に多いです。ところがどうも決定打になり得る演奏を聴いたことが無いのです。特に最近宇野功芳先生が推薦されている1977年の日本ライブは酷すぎます。ムラヴィンスキーとは思えない乱暴な管の咆哮と、まるで昔のカセットデンスケで録音したような酷い録音には失望しました。そのCDをこれから聴かれる方はどうぞご覚悟されることを。自分ならば録音の良い1983年盤をとりたいと思います。晩年の演奏で迫力には欠けますが、ずっとオーソドックスであり以前の演奏のような違和感を感じないからです。 

Cci00013エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1990年録音/CANYON盤) 有名な東京ライブ全曲チクルス演奏の中の白眉です。何といってもライブならではの気迫・迫力の凄まじさに圧倒されます。巨大なスケールでゆったりとした部分の味わいもロシアの楽団ならではです。何度も繰り返して聴くには3年後のモスクワでのスタジオ録音の方が適しているのかもしれませんが、この演奏の魅力は一度聴き始めてしまうと全てを忘れさせるほどです。

Cci00009_2 ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトぺテルブルグ・フィル(1992年録音/RCA盤) テミルカーノフはこの年に三大交響曲を録音していて、4番は出来がいまひとつでした。ところがこの5番は大変素晴らしいです。非常な弱音でゆっくりと始まる導入部からしてユニークですが、全楽章とも一貫してかなり遅いテンポで慌てず騒がずじっくりと音楽を進めるのが個性的です。終楽章も迫力は有りますが決して力みかえりません。ムラヴィンスキーのレニングラード時代の豪放かつ繊細なオケの音が健在なのが嬉しいところです。この演奏も非常に気に入っています。

41xbkg7f3bl__sl500_aa300_ エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1993年録音/CANYON盤) 東京ライブの3年後のモスクワでのスタジオ録音です。熱狂的なライブと比べるとやはり全体的にテンポが遅めでスケールが大きいです。たっぷりと心ゆくまでロシアの雰囲気を味わうことができます。録音が優秀なので、ロシア・オケの底力の有る音を充分に楽しめます。この曲は個人的には東京ライブに惹かれていますが、できれば両方を聴き分けたいと思います。

098 ウラジミール・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響(1998年録音/Relief盤) これは拍手が入っていますので間違いなくモスクワでのライブです。録音は今一つパリッとしませんが、このシリーズの特徴です。けれども演奏はメリハリのついたテンポ設定に、ロシア的な音色や節回しがふんだんなので嬉しいです。しかもスヴェトラーノフのライブばりにエグく演奏してくれているので、興奮します。ロシア音楽はやはりこうでなくてはいけません。特に終楽章のたたみかけるような迫力には圧倒されます。

Cci00065 ワレリー・ゲルギエフ指揮ウイーン・フィル(1998年録音/フィリップス盤) 当時すっかりこの曲から離れていた自分を再びこの曲に引き戻してくれた名演奏です。ゲルギエフはこの曲を大変得意にしていて、世界のあちこちで演奏して聴衆を熱狂させています。ムラヴィンスキー並に表現力満点、振幅の大きいドラマティックな演奏ですが、それが自然で決して姑息などには感じさせないところが凄いです。ウイーン・フィルの大熱演ぶりと、彼らにしては精一杯ロシアの味を出しているのに感心します。

Cci00010 小林研一郎指揮チェコ・フィル(1999年録音/EXTON盤) ロシア人指揮者以外であれば何といってもコバケンでしょう。僕は昔からこの人が大好きです。あるアマチュアオケの練習の時に目の前で指揮されて楽器を弾いた経験が有るのですが、物凄いオーラを感じました。そうでなければハンガリーやチェコの名門オケをあれほど多く振ることは出来無いでしょう。チェコフィルは同じスラブ系とは言ってもロシアのオケの音色や節回しとはやはり似て異なりますし、この人は実演の人なのでスタジオ録音ではやや不完全燃焼を感じますが、やはりこれは表現力豊かな良い演奏だと思います。

Cci00065b ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(2005年録音/Harvest盤) ウイーンフィル盤は大好きですが、不満が有るとすればロシアのオケでないことだけです。その不満を解消してくれる素晴らしいディスクが有ります。手兵マリインスキー劇場管とのストックホルムでのライブ盤です。これは海賊盤ですが、最新のデジタル録音であり録音は超優秀です。演奏の勢いはウイーン・フィル盤の方が勝っていますが、こちらにはロシアのオケしか持たない深く暗い音色が有ります。これは何物にも代えがたいのです。現在はこのマリインスキー盤の方を好んで聴いています。

以上の中から僕のフェイヴァリット盤を挙げるとすれば、ゲルギエフのウイーン・フィルとマリインスキー劇場管の両盤、それにスヴェトラーノフの両盤です。次点としてはテミルカーノフ盤、それに「失敗」とは言いながらもやはりムラヴィンスキーのグラモフォン盤、というところでしょうか。

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2009年1月17日 (土)

チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調op.36 名盤

758471840931893posters_2チャイコフスキーの初期の交響曲では、第1番も第2番もロシアの雰囲気で一杯です。ところが第3番は何故かタイトルが「ポーランド」。いきなり隣国に侵攻?してしまいます。個人的にはこの第3番はそれほど好んでいません。いっそのことタイトルを「シベリア」とか「ヴォルガ川」とかにして、ずっとロシア風に作曲した方が良かったのではないでしょうか。

それはともかく、充実度で言えば何と言っても第4番以降の後期三大交響曲が断然優れています。中でも最高傑作で、僕自身も一番好きなのはやはり第6番「悲愴」です。残る第4番と第5番は、中々の良い勝負ですが、この第4番の土臭さ、激しさ、豪快さは大変に魅力的です。特に第1楽章と第4楽章の緊迫感と迫力は尋常ではありません。第2楽章の典型的なロシア民謡風の哀愁漂うメロディもチャイコフスキー・ファンをしびれさせますね。これはやはり傑作です。

この曲は曲想から特にロシア人指揮者がロシアのオケを指揮した本場物の演奏で聴きたいところです。そんな僕の愛聴盤をご紹介させて頂きます。

125 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1960年録音/グラモフォン盤) 余りに有名な演奏ですので今更何をいわんやですが、西ヨーロッパへ演奏旅行をしている途中に彼らがグラモフォンへ後期三大交響曲をセッション録音してくれたのは本当に幸運でした。中でも、この4番の演奏が一番凄いと思います。まるで、この世の全てを切り裂くような鋭い金管、切れ味の鋭い弦楽器群、ロシアの味わい一杯の暗い音色の木管群と、どれをとっても最高ですが、それを厳格にコントロールするムラヴィンスキーの指揮の冴え。初めて聴いた時には、異常なまでの音の鋭さに度胆を抜かれたものです。「この演奏が有れば他に何も要らない」と言いたくなるほどです。

Tchaikovsky_karajan_3817982ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1971年録音/EMI盤) 「三大交響曲集」が当時ベストセラーとなり、自分も購入して大いに愛聴したものです。確かにまるでライヴのように熱くドライブした演奏はカラヤンの録音の中では第一に取りたいと思いますが。けれどもロシアの土臭さを強く残したこの曲を、こうも華々しく演奏されると少々閉口します。金管がどんなに壮絶に鳴らしてもロシアの荒々しい豪放さは感じませんし、あるいは暗い民謡調のメロディの箇所からは余り悲哀を感じさせません。カラヤンの音楽を聴く分には良いですが、チャイコフスキーを聴いた気にはなれません。

Cci00007 ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮レニングラード・フィル(1971年録音/BBC Music盤) 全盛期のレニングラード・フィルを指揮したロンドンでのライブ録音です。西側の国でのライブであった為か、異常に高揚した演奏です。同じ頃の手兵モスクワ放送響とのスタジオ録音と比べると雲泥の差と言ってよいでしょう。録音は多少バランスの悪さも感じますが、当時としては標準的なレベルでしょうか。ライブなので演奏に多少の傷は有りますが、何しろ演奏の興奮度合いならばムラヴィンスキーにも負けない凄さですので、爆演の好きな方は是非ご一聴を。

Cci00007b ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省響(1990年録音/ERATO盤) BBCのライブやモスクワ放送響との1972年の全集盤と比べると、ずっと落ち着いた演奏です。この楽団は彼の為にわざわざ新設された団体なのですが、管楽器群のレベルが少々落ちる気がします。弦の滑らかな歌いぶりは素晴らしいです。第1楽章や第2楽章での沈み込むような佇まいは良いとしても、全体的には迫力不足で、どうも物足り無さを感じてしまいます。

Vcm_s_kf_repr_337x336 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1990年録音/CANYON盤) これは東京でのライブ録音です。会場はサントリーホールです。3年後のスタジオ録音盤と、基本的な表現に違いは有りません。録音条件はスタジオには敵いませんが、元々CANYONの録音は優秀なので問題ありません。それにライブならではの感興の高まりと力強さではスタジオ盤を上回ります。特に1楽章の終結部や終楽章の迫力は正に圧巻です。

Cci00009 ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィル(1992年録音/RCA盤) 昨年11月のこのコンビの来日コンサートはとても素晴らしかったです。但しこれは今から15年以上も前の録音です。ずいぶんゆっくりとした演奏ですが、テミルカーノフがまだ円熟していないために意外にスケール感を感じません。レニングラード・フィルから名前が変わって楽団のレベルが落ちた訳では無いようですが、ムラヴィンスキーの表現力との差は如何ともし難かったのでしょう。このコンビでの今後の再録音に期待したいと思います。

Cci00008 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1993年録音/CANYON盤) ムラヴィンスキー盤は真の天才の名演。一方、スヴェトラーノフ盤は凡才の名演です。表現は野暮ったく、どこにも聴き手をはっとさせるような仕掛けや閃きは有りません。ですが、そこが良いのです。他の指揮者が変化球を織り交ぜて勝負してくるのを、この人は剛速球一本やり。もしも音楽に土臭い素朴なロシアの大地を感じたい場合には、この演奏がベストだと思います。優秀な録音も、この重量級の演奏をとことん堪能させてくれます。

407ウラジミール・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響(1998年録音/Relief盤) どうやらモスクワでのライブ演奏のように思えますが、記述はどこにも見当たりません。音質がくすんでいて、セッション録音っぽくは聞こえないからです。演奏はテンポと言い、表情と言い、オーソドックスなロシア風です。各楽器の音色や節回しが安心して聴いていられます。但しフェドセーエフにしては、やや安全運転に過ぎている印象で、更にゴリゴリとえぐくエグく演奏してくれればもっと良かったと思います。そうしてみるともしかするとこれはライブでは無いかもしれません。

41v9jkyv4cl__ss500_ ワレリー・ゲルギエフ指揮ウイーン・フィル(2002年録音/フィリップス盤) ゲルギエフはウイーン・フィルを振って後期の3曲をライブ録音しましたが、そのうち最初に録音した第5番の演奏が最も優れていて、4番と6番はそれに比べるとやや劣ります。個人的にはむしろ手兵キーロフ管との演奏を聴いてみたい気がします。とは言え、ウイーン・フィルにこれだけのチャイコフスキーを演奏させる実力は流石がです。荒々しさ一本やりでなく、ゲルギエフらしい洗練さを持ち合わせた、中々に良い演奏だと思います。ゆったり気味でスケールの大きい第1楽章は特に素晴らしいですが、第2楽章でのロシア風の節回しはいまひとつです。

ということで、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル盤がベスト。続いてロジェストヴェンスキー/レニングラード・フィルのBBC盤、スヴェトラーノフの2種が僕のベスト3です。ゲルギエフも手兵のキーロフ管と将来再録音してくれたら是非聴きたいと思っています。
ロシアの楽団以外では一つだけ、昔LP時代に友人宅で聴いたズデニェック・コシュラーが(たしか)ロンドン響かどこかを指揮した演奏が忘れられません。第1楽章が20分を越える遅いテンポで、深く深く沈みこんでゆくようなユニークな名演奏でした。

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2009年1月12日 (月)

チャイコフスキー 交響曲第1番「冬の日の幻想」ト短調op.13 名盤 ~厳寒~ 

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毎日寒い日が続きます。おかげで毎日部屋の暖房をガンガンにしてチャイコフスキー三昧です。それもロシアの雰囲気が一杯の曲が良いですよね。僕は昔から哀愁漂うロシア民謡が好きで、「ともしび」や「トロイカ」「ポーリシュカ・ポーレ」などの大好きな歌がたくさん有ります。チャイコフスキーは後期の作品になるとかなり国際的な普遍性を持った雰囲気の曲が多くなりますが、初期の曲にはロシア民謡丸出しの作品が多く有ります。交響曲で言えば第4番辺りまでです。なかでも第1番「冬の日の幻想」と第2番「小ロシア」。この2曲は好きですね。チャイコフ好き~!なんちゃって。そこで今日は第1番の方を聴きながらロシアの冬の日を想像することにしましょう。

彼は交響曲の第1作目を完成させるのには少々苦労したようです。その理由はロシア音楽の先駆者グリンカも目指した、従来のヨーロッパの古典派、ロマン派の技法に何とか自国の音楽を融合させたいと考えたからです。果たして苦心の末に完成した第1交響曲はその通りの名作になりました。

この曲は「冬の日の幻想」というタイトル以外にも更に、第1楽章には副題が「冬の旅の夢想」、第2楽章には「陰鬱な土地、霧深き土地」と付いています。それはともかく、この曲は若々しい甘さとロシア風のほの暗いメロディが幾重にもつづられて非常に魅力的な作品です。僕が好きなのは第1楽章と第2楽章。実にロマンティックな名旋律の第2楽章はファンにとても人気が有ります。第4楽章もまるで「走れトロイカ!」。ロシア民謡丸出しのノリと迫力が実に楽しいです。

41xzcgsj99l__sl500_aa300_ エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1990年録音/CANYON盤) これは東京オーチャードホールでのライブ録音です。スヴェトラーノフには3年後のスタジオ盤も有りますが、91年にソヴィエト連邦の解体が有ったので楽団の名前が変わってしまいます。ライブということもあり、スタジオ盤に比べて臨場感が有りますし、終楽章がパワフルなので、こちらを好む方も多いとは思いますが、僕自身は楽器のバランスが取れていて録音の優秀なスタジオ盤を好んでいます。

Cci00006 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団(1993年録音/CANYON盤) こういう曲だけは僕はロシア人がロシアの楽団と演奏した本場物以外はちょっと聴く気になれません。それは、よその国の人の歌うロシア民謡を聴かされるようなものですので。そうするとCDも限られてはきますが、スヴェトラーノフはやはり素晴らしいです。スケールが大きく豪快でロシアの大地の雰囲気に満ち溢れています。やはりチャイコフスキーはこうでなくてはいけません。CANYONの優秀な録音にも大満足です。

僕がその昔、LP盤で聴いていたのは若きゲンナジ・ロジェストヴェンスキーが70年台初めに手兵モスクワ放送響と録音した全集の中の1枚でした。後期三大曲あたりではムラヴィンスキーあたりと比べるとまだまだ若造の棒だったのですが、初期の曲は逆に若さがプラスして非常に良い演奏でした。特に1番の2楽章などはロストロポーヴィチ級の主席チェロ奏者ヴィクトル・シモンが率いるチェロパートの歌いっぷりが抜群でしたし、ホルンのソロも最高でした。この演奏は全集でも分売でもどちらでもCDでの再発売を心待ちにしているところです。

ということで、しばらくはロシア音楽特集を続けて、雪解けが近くなった頃に大好きなシベリウスに行こうかと思っています。

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2009年1月 8日 (木)

チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」イ短調op.50 名盤

お正月気分もどこへやら。すっかり元のせわしない生活に戻ってしまいました。しかも、寒さも厳しさを増して、明日は関東でも雪になるかもしれないそうです。こんな時には家で暖炉にあたりながら音楽を聴いていたいです。と言いたいところですが、我が家に暖炉なんてものは無いので、エアコンとファンヒーター併用でぬくぬくしながら音楽を聴きます。(^^)

Tchaikov 冬にはやっぱりチャイコフスキーの音楽がうってつけです。凍てつくロシアの大地を想像しながら、ワシーリーやゴーゴリー(誰だそれ?)になった気分で彼の音楽を聴いていれば、気分はすっかり冬のロシアです。

チャイコフスキーは交響曲、ピアノやヴァイオリン協奏曲、それにバレエ音楽も良いですが、室内楽にも名作が有ります。弦楽四重奏曲や六重奏曲です。しかし、なんといってもピアノ三重奏曲が群を抜いた出来栄えの傑作です。「偉大な芸術家」というのは、モスクワ音楽院の初代院長でピアニストのニコライ・ルービンシュタインのことです。(ポーランド出身のアメリカの大ピアニストのことでは有りません。)その院長の死を弔って書いた作品です。曲は長大壮大で、演奏時間に約50分を必要とします。第1楽章の中心となるのは悲歌風の主題ですが、それがチェロ、ヴァイオリン、ピアノと交代に何度も繰り返されます。なんと悲しくも美しいメロディなのでしょうか。チャイコフスキー一世一代の名旋律です。第二主題以降も魅力に溢れていて、本当に息つく暇も与えません。長大な第1楽章はこの曲の前半部分であり、後半は二部に分かれた第2楽章です。僕は延々と変奏の続く第2楽章も大好きです。変奏の一つ一つが、とてもしゃれていたり、激しかったりと、本当に変化に富んでいる傑作だからです。

この曲は彼の交響曲、それも後期のそれらと比べても、同等かそれ以上に好きなのです。同じピアノ・トリオで比較をしても、僕の大好きなブラームスの3曲よりも好きかもしれません。

さて、それでは、僕がぬくぬくと部屋で温まりながら聴いているCDをご紹介させて頂きますので、どうぞお付き合いください。

Rostrotrio_tchaikoコーガン(Vn)、ロストロポーヴィチ(Vc)、ギレリス(Pf)(1952年録音/ビクター盤) これは昔、新世界レコードから出たLP盤で何度も愛聴した演奏です。少々古いモスクワでの録音ですが、3人の技術的レベルと音楽性が正に最高です。これから西側の音楽界へ羽ばたいて行こうとする若き3人の実力と気迫が凄まじいのです。三者が真剣で切り合うような凄みに満ちていますが、各者の力量が全くの同格ですので、見事な黄金比を形成しています。しかも全員が純血ロシアンメンバーですので母国の音楽への共感が限りなく深く、一つ一つの節回しにロシアの味わいが滲み出ています。正に桁違いの演奏です。この録音は、以前ビクターがCD化しましたが、現在は廃盤です。強音部で幾らか音が割れますが、全体的には良好の音質です。現在はカナダのDremiがセット物で出しているのみだと思います。やや高価ですが、この演奏を聴くだけでも充分に価値が有ると思います。

1977 スーク(Vn)、フッフロ(Vc)、パネンカ(Pf)(1976年録音/スプラフォン盤) これは僕が学生の時にベストセラーになった演奏でした。このトリオはいかにも「室内楽」という感じで好感は持てるのですが、その分スケールは小さく、スーク以外の2人の技術が弱いです。なのでチャイコフスキーあたりになると聴いていてどうしても物足りなさを感じてしまうのです。ですので正直言って、この演奏でこの大曲を心底味わえるとは思えません。

Cci00005 カガン(Vn)、グートマン(Vc)、リヒテル(Pf)(1986年録音/Live Classics盤) これも純血ロシアンメンバーの演奏です。既に老境入りのリヒテルと若手2人との組み合わせなので、完全にリヒテル翁が主導権を握っています。翁の手のひらの上で2人が懸命に踊っている感じなのです。従ってコーガン達盤のような凄みに不足するのはやむを得ません。またライブ録音なので傷も多いですが、逆に感興の高さは充分です。スケールの大きさも素晴らしいですし、ロシアの味わいや悲歌の表現ぶりも見事です。

579 キョンファ(Vn)、ミュンファ(Vc)、ミュンフン(Pf)(1988年録音/EMI盤) 純血コリアンブラザー&シスターズの演奏です。ブラームスの時にも書きましたが、韓国の人は「恨(ハン)」という朝鮮民族特有の性質を心に秘めているそうです。なのでこういう悲歌を歌わせると実にツボにはまるのです。ロシア風とはちょっと違いますが、エレジーでの泣き節が非常によく似ている気がします。チェロが若干弱さを感じさせますが、それでも3人とも立派に弾いていて、なかなか見事です。

122 クレーメル(Vn)、マイスキー(Vc)、アルゲリッチ(Pf)(1998年録音/グラモフォン盤) これは東京のトリフォニーホールで演奏会が行われた際にセッション録音したものです。僕はその時の演奏会を生で聴きました。当然、前評判通りの実に興味深い演奏でありました。実力者3人がその持てる個性を披露し合ったのです。ところがどうもチャイコフスキーにはいまひとつ聞こえませんでした。演奏家の個性のほうが勝っていたのです。これは特にアルゲリッチに原因が有ると言って良いです。ご縁が有って後日、宇野功芳先生とこの時のコンサートについてお話する機会が有ったのですが、先生も僕と全く同じ感想を持たれていました。

Cci00064b スターン(Vn)、ロストロポーヴィチ(Vc)、ホロヴィッツ(Pf)(1976年録音/SONY盤) 凄い顔ぶれですが、この演奏は番外です。何故ならこれはカーネギーホール85周年記念演奏会で第一楽章のみ演奏された録音だからです。3人とも元々はロシア出身なのでこれもほぼ純血ロシアンメンバーと言って良いです。しかしホロヴィッツの個性が余りに強烈であるのとマイペースなので、コーガン達盤のような黄金バランスによる凄みは有りません。またライブ録音の為にどうしても音量バランス的にもピアノが勝っています。ですが、それでも聴き応え充分のこの演奏、もしも第二楽章も演奏されていればコーガン達盤に並び得る唯一の録音になっていたことでしょう。非常に残念です。

以下を追記加筆しました。(2009.10.18)

Cci00032 レーピン(Vn)、ヤブロンスキー(Vc)、べレゾフスキー(Pf)(1997年録音/Erato盤) ロシアの若手3人による新しい録音についてもご紹介しておきます。先輩達の歴史的録音のように大見得を切る事は有りません。それではこの演奏が味気ないかと言えば決してそんなことは無く、同郷人の共感がしっかりと胸の内に秘められているのを感じます。どの変奏曲もごく自然に歌われて曲の美しさを味わう事ができます。アルゲリッチ盤とは対照的な演奏なので好みは分かれるでしょうが、個人的にはこちらの方が好きです。テクニックも楽器バランスも申し分なく、録音も優秀です。

以上、この曲はコーガン/ロストロポーヴィチ/ギレリス盤が余りに凄すぎるので、他の演奏が少々気の毒です。それにしても、このような天下の名演がずっと廃盤のままというのは、一体なんとしたことでしょうか。レコード会社の見識の無さには呆れるばかりです。

なお、入手しやすいもので1枚、録音の良いものを求められる方にはレーピン達のCDを強くお薦めします。

<後日記事> 

チャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出」 もうひとつの名盤

チャイコフスキー「偉大な芸術家の想い出」 クレーメル新盤

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2009年1月 4日 (日)

J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 BWV1046-51 名盤

Baha2 まだ松の内ですので暗~い曲を聴くのは何となく避けたくなります。やはり厳かで、尚かつ楽しい曲が聴きたくなりますよね。
そんな気分にぴったりなのが「ブランデンブルグ協奏曲」です。何も”お正月限定”ということでもないですが、新年にとても聴きたくなります。バッハの峻厳さは年明けの新鮮な気分にとても向いているからですね。

最近は、どちらかいえばバッハの器楽曲よりも声楽曲に惹かれていますが、この曲の楽しさはやはり格別です。大バッハを自分なんかよりもずっと沢山聴かれている方は大勢いらっしゃいますし、これほど有名な曲を今更でも有りませんが、この曲集は傑作中の傑作だと思います。

ブランデンブルクというのは現在のベルリン一帯の地名ですが、この曲のタイトルは時のブランデンブルク選帝侯の息子に曲集が献呈されたことから名付けられました。その全6曲は、それぞれの曲が編成も、中心となって活躍する楽器も、曲想も驚くほど多種多様でバラエティに富んでいて、聴いていて絶対に飽きることがありません。

全曲とも完全無欠の名曲なので、どの曲が好きかと聞かれても困るのですが、個人的に特に挙げるとすれば第1番、それと地味な第6番でしょうか。昔はヴィオラを弾いていましたので、ヴァイオリンの入らない第6番のスコアの各声部を弾いては遊んでいました。

この曲集のCDはそれこそ数えきれないほど多く出ていますので、そのごく一部しか聴けてはいませんが、その中から印象的な演奏をご紹介させて頂きます。

51ef28vxmyl__ss500_カール・リヒター指揮ミュンヘンバッハ合奏団(1967年録音/アルヒーフ盤) 余りにも有名な演奏です。当時はまだ一般的であった大編成によるロマン的な演奏のアンチテーゼとなる新しいバッハでした。けれど、その演奏すら今では古楽器派の台頭によって、すっかり古臭い演奏という烙印を押されてしまったかのようです。ですが、それはとんでもない話です。速めのテンポで生き生きとしたリズムと生命感が有り、聴いていてとにかく楽しいです。使われているのが現代楽器であろうが何だろうが、ヴァイオリンのシュネーベルガー、フルートのニコレをはじめとした演奏者達は素晴らしいです。僕は今でもこの演奏は大好きです。

938 ルドルフ・パウムガルトナー指揮ルツェルン音楽祭合奏団(1978年録音/オイロディスク盤) 各楽器に選りすぐりの名奏者が集まった有名な演奏です。全体的にテンポはゆっくり目ですが、楽しさにかけてはリヒター盤にも劣りません。スークのヴァイオリンやニコレのフルートソロが実に素晴らしいです。第1番などは今では幾らか遅過ぎるようにも感じますが、逆に第3番は現代楽器ならではの豊かな美しさに魅了されます。第6番でもスークのヴィオラがとても美しいです。今聴いても古臭さを少しも感じさせませんし、古楽器と比べれば音の豊かさ、美しさは圧倒的です。

592 ゲルハルト・ボッセ指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス・バッハ合奏団(1981年録音/シャルプラッテン盤) ゲヴァントハウス管のコンサートマスターにしてゲヴァントハウスSQの第1Vnであったボッセ教授が指揮をしてヴァイオリンも弾いている演奏です。ゲヴァントハウス管はいわばバッハゆかりの聖トーマス教会合唱団の専属楽団。バッハ演奏は筋金入りです。雨後の竹の子のように出てきた古楽器学究派の及ばない生きた演奏の歴史を持っています。地味で目新しさは無いですが、ドイツの頑固親父のようなどっしりとした貫禄が有ります。やはり本家ライプチッヒのバッハはこれです。僕は教授のヴァイオリンともども大好きな演奏です。僕の好きな第6番も実に魅力的です。

Cci00004 ヘルムート・ヴィンシャーマン指揮ドイツ・バッハ・ゾリスデン(1993年録音/日本コロムビア盤) これはこの団体の1970年代の旧盤ではなく新盤のほうです。ヴィンシャーマンはこの時代でも現代楽器を使用して頑張っていました。かつてのヴィンシャーマンの演奏するオーボエは骨太の音とおおらかさがとても好きでしたが、ここでは残念ながらご自分では吹いていません。古楽器派の台頭を意識してか、旧盤よりもテンポが全般に速めになった気がしますが、おおらかさには変わりは有りません。ドイツの演奏家でこれほど温もりを感じさせる演奏家も少ないのでは無いでしょうか。この温和さが良くも悪くもこの人の魅力だと思います。第5番もなんとものんびりしています。

457 グスタフ・レオンハルト指揮クイケン兄弟、ブリュッヘン、ビルスマ他(1976年録音/SEON盤) 当時の古楽器派の若手の名手達がレオンハルトの元に一同に集まった記念碑的な演奏です。最近の古楽器演奏と比べると随分と遅めのテンポでゆったりしています。古楽器派の古典的な?録音とでもいうところでしょうか。以前は古楽器の音はどうも乾いていて潤いが無く、色気に乏しいように感じていましたが、時と共に耳が慣れて古雅な響きが楽しめるように成りました。パウムガルトナーと比べれば貧相な音ではありますが、そんなことを言うと「それがバロックだ!」と叱られてしまうのでしょうか?

331 ラインハルト・ゲーベル指揮ムジカ・アンティク・ケルン(1986-87年録音/アルヒーフ盤) リヒター盤から20年後の録音です。時は流れて先鋭な古楽アンサンブルMAKの激演です。どうせ古楽器の痩せて貧相な音ならばこれぐらいやってくれた方が良いのかもです。1楽章から生き生きしたリズム、過激なホルン、ゲーベル自身のヴァイオリンが冴えて楽しいです。以後どの曲も快速テンポで息つく間を与えません。緩徐楽章にも不思議な味わいが有るのは凄いです。但し問題は第6番の猛スピードで、これだけはいくら何でもやり過ぎに思います。余談ですが、僕はMAKの管弦楽曲全集も同様に好きで愛聴しています。

さて、音色の比較で例えれば、古楽器の干物魚(?)のような音が好きか、現代楽器の脂の乗りきった養殖ハマチのような音が好きか、これはなかなか難しい問題ですね。自分の好みで言えば、現代楽器を端正に弾いているルツェルン音楽祭合奏団やゲヴァントハウスの音に惹かれます。しかし実際には楽器の音色だけでは演奏の良し悪しは決まりませんし、その時の気分で聴き分けることにしています。結局は聴き手の好みの問題ですね。

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2009年1月 1日 (木)

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61 名盤 ~迎春2009~ 

皆様、明けましておめでとうございます。

035615昨年8月にこのブログをスタートしましたが、初めのうちは訪れて頂く方もとても少なくて寂しかったものです。それがいつの間にか多くの方にお立ち寄り頂くようになりました。皆様に心から感謝しております。未曾有の景気悪化の中で生活を維持するだけでも大変な時代ですが、音楽を愛する方々とこうしてブログを通じて日常的に触れ合えることは本当に大きな喜びです。本年もどうぞ宜しくお願い致します。そして皆様、良いお正月をお過ごしください。

さて、今年の聴き初めですが、年末の聴き納めが「第九」でしたので、ここは年の初めもやっぱりベートーヴェンで行きましょう。曲はヴァイオリン協奏曲です。

ヴァイオリン協奏曲の中で僕が特に好んでいるのはベートーヴェンとブラームスなのですが、この2曲は雰囲気が随分と異なります。崇高な精神に溢れ、高貴なほどに気品のあるベートーヴェン。ジプシー調で激しい感情の起伏を荒々しく吐露するブラームス。謂わば「宮廷音楽家」と「旅回り大道芸人」ほどの違いが有るでしょう。ですので新たな気持ちで新年を迎えるような時にはやはりベートーヴェンが向いていますね。

でも、この曲は演奏が実に難しい曲です。”技術的に易しい”と言う評論家が居ましたが、とんでもないことです。全ての音を美しく弾くことが必須ですが、それが出来ている人は意外と少ないのです。またパッションだけでもどうにもなりません。ブラームスなら、あるいは情熱と気迫だけでもそれなりに面白い演奏になるでしょう。ところがこの曲の場合、そうは行きません。また厳しい精神が不在だと何とも空虚な音楽になります。そのような難しい曲なので、並みの演奏を聴いた場合にこれほどつまらなく感じる曲は他に有りません。逆に良い演奏の場合には限りなく深い感動を与えられます。正に演奏家の本当の姿をさらけ出してしまう写し鏡のような怖い怖い曲なのです。

何はともあれ僕の愛聴盤をひとつづつご紹介して行きましょう。

Cci00061 フリッツ・クライスラー(Vn)、ブレッヒ指揮ベルリン歌劇場管(1926年録音/NAXOS盤) 案外音が良い(はずは無いですが鑑賞は可能)です。ただしオケの音は非常に薄いです。バイオリンのテクニックに怪しい部分は多々有るのですがそれが全然気になりません。余りに柔らかく甘い表情の音に気を取られてしまうからです。1楽章中間部や2楽章などは思わず聞き惚れてしまいます。反面、襟を正すような厳しさはここにはありません。3楽章でリズムがずっこけそうなのはご愛嬌です。

Cci00061b ブロニスラフ・フーベルマン(Vn)、セル指揮ウイーン・フィル(1934年録音/EMI盤) 「ヴルトゥオーゾ」という呼び名がこの人ほど似合うヴァイオリニストは居ないでしょう。この演奏も正にそんな演奏です。他の人では考えられない即興的な節回しの大連発なのです。そうかと思うと意外にデリカシーを欠いて雑に弾き飛ばす部分も有ります。要するに現代の演奏家の尺度ではとても計りきれない規格外の大名人なのです。好き嫌いを越えて一度は聴いておくべき演奏だと思います。セル/ウイーン・フィルは実に立派で素晴らしいです。

P1000280 アドルフ・ブッシュ(Vn)、F.ブッシュ指揮ニューヨーク・フィル(1942年録音/biddulph盤) ブッシュはまるでベートーヴェンの魂そのものといったバイオリンを聞かせます。細かい技術云々を言う以前に、他の奏者とは全く格の違いを感じてしまうのです。加えるに兄フリッツ・ブッシュの指揮が素晴らしいのです。デンマーク放送響との第九などは余り大したことは無かったですが、この伴奏は実に立派です。第2楽章の限りない深さと高貴さなどは正に最良の伴奏です。写真は独EMIのLP盤ですが、biddulphの復刻CDが驚くほど音が良いのでお薦めできます。

3199011327 ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1953年録音/グラモフォン盤) 戦後のベルリン、ティタニア・パラストでのライブです。シュナイダーハンはとても好きなヴァイオリニストですが、この曲をライブでこれだけ弾くというのは確かな技量が無ければ出来ません。フルトヴェングラーの自在な伴奏も流石です。ただ、音質が充分とは言えないので、シュナイダーハンのこの曲の演奏としては、ヨッフムとのステレオ盤を好んでいます。

51yh9srtaml__sx300_ ユーディ・メニューイン(Vn)、フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア(1953年録音/EMI盤) メニューインも大好きなヴァイオリニストですが、この曲に関しては不向きだと思っています。他にもフルトヴェングラー/ベルリンPOとのライブ、シルヴェストリ/ウイーンPO、クレンペラー/NPOなどの録音が有りますが、どれも技巧的に聴き辛さを感じるからです。それらの中では、このスタジオ録音とシルヴェストリ盤が比較的ベターです。それにフルトヴェングラーの伴奏も前述のシュナイダーハン盤よりも良いと思います。

571 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)、ミュンシュ/ボストン響(1955年録音/RCA盤) この人も20世紀を代表するヴルトゥオーゾです。ただしこの人はパフォーマーというよりはテクニック上の大名人といった感じです。とにかく音の一つ一つの存在感が他の奏者とは次元の違う上手さなのです。ですが正直言って「だからどうした?」というのが僕の実感です。この肩で風を切るようなさっそうとしたベートーヴェンには違和感を感じてしまいます。これがチャイコフスキーだったら良かったのですが。

260 ダヴィド・オイストラフ(Vn)、クリュイタンス指揮フランス放送管(1958年録音/EMI盤) さあ困りました。世評の高い演奏なのですが、ちっとも立派に聞こえないのです。極端に言えば、単にヴァイオリンが上手に音符をなぞっているだけに聞こえてしまいます。余りに楽天的で厳しさに欠けている気がするからです。これを「幸福感に満たされた」と受止めることも可能かもしれませんが、僕には無理です。そうなるとハイフェッツよりもつまらなくなってしまいます。(オイストラフのファンの方ゴメンなさい!) 強いて言えば曲想から唯一終楽章だけは楽しめます。

Cci00046 ヨゼフ・シゲティ(Vn)、ドラティ指揮ロンドン響(1961年録音/フィリップス盤) ハイフェッツ、オイストラフとはまるで別の曲を聴く趣きです。こちらはテクニックでなく深い精神性で際立っています。これほど衰えた腕で、これほどまでに人を感動させることのできる演奏家は他に決して存在しません。間違っても表面的な音にとらわれることなく、しっかりと心の耳でこれらの音の一つ一つに込められた意味の深さを是非とも聞き分けて頂きたいのです。ドラティの指揮も気迫に溢れてなかなか立派です。

461 ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)、ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) シュナイダーハンは大変な名人だと思います。モーツァルトを弾く時には柔らかくウイーン風に、ブラームスを弾く時にはがっちりとドイツ風にと、ものの見事に弾き分けてしまからです。このベートーヴェンはドイツ風に弾いていますが、そこはかとなくウイーンの香りを漂わせるのはやはりウイーンの出身です。フルトヴェングラーとのモノラル盤も素晴らしかったですが、この人の美しい音を味わうにはステレオ盤のほうがやはり良いと思います。ヨッフム/ベルリン・フィルの音も非常に重厚で立派です。

221 ヘンリック・シェリング(Vn)、シュミット=イッセルシュテット指揮ロンドン響(1965年録音/フィリップス盤) シェリングが最も得意とするレパートリーは疑いなくバッハの無伴奏とこのベートーヴェンの協奏曲です。この曲にはスタジオ録音やライブ録音が多く存在しますが、いずれの演奏も完璧。ライブであろうと一つとして怪しい音を出さないのには感服します。しかし本当に凄いのはそんな事では無く、技術と精神の両立なのです。謂わばハイフェッツとシゲティを足して二で割ればシェリングなのです。全ての音は優しさに包まれて美しく、なおかつ厳しいです。これは最初の録音盤ですが、全ての音符が「このように弾かれねばならぬ」という存在感を示しています。そんな演奏の出来る人は他に知りません。我が尊敬する中野雄さんもこの演奏を推しておられました。

51wvw6ooocl__aa300_ ユーディ・メニューイン(Vn)、クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア(1966年録音/EMI盤) メニューイン最後のスタジオ録音ですが、技巧の衰えに耳を覆いたくなります。ブラームスでは感じないのですが、ベートーヴェンでは致命的です。ステレオ盤では1960年のシルヴェストリ/VPO盤を取りたいと思います。但し、クレンペラーのスケールが大きく堂々とした伴奏は非常に素晴らしく、それだけでも聴く価値が有るのですが、メニューインのヴァイオリンが残念でなりません。

Cci00062b ヘンリック・シェリング(Vn)、シュミット=イッセルシュテット指揮バイエルン放送響(1966年録音/GreenHILL盤) 上記スタジオ録音の翌年のライブ演奏です。オケはバイエルン放送です。出だしのうちはスタジオ盤が上かなと思っているうちに、どんどんオケも独奏も高揚感と集中力が増してきてあっという間にスタジオ盤の記憶がどこかへ行ってしまいます。2楽章の深さ、3楽章の精神の高揚も比類ありません。中野先生ご推薦のあのスタジオ盤よりも遥かに上なのですから恐れ入ります。これは海賊盤ですが放送録音に定評の有るGreenHILLなので録音も優秀です。なおカップリングのブラームスの交響曲3番も絶品です。中古店で手に入るうちに是非。

267 ヘンリック・シェリング(Vn)、ハイティンク指揮コンセルトへボウ管(1973年録音/フィリップス盤) スタジオ盤ではどちらか言うと65年の旧盤を推薦する評論家が多いようですが、新盤のハイティンク盤も決して劣りはしません。コンセルトへボウの持つ音色や分厚い響きはロンドン響よりも上ですし、録音も含めればこちらを推しても良いぐらいです。ただし指揮の実力・品格で言えばむろんイッセルシュテットが上です。3楽章の高揚感にやや不足するのも惜しい点です。

Cci00062 ヘンリック・シェリング(Vn)、ツェンダー指揮ザール・ブリュッケン放送響(1982年録音/CPO盤) ハンス・ツェンダー・エディションの中の1枚。「田園」「1番」とカップリングされていますが演奏はヴァイオリン協奏曲が優れています。実は73年盤でも僅かに感じていたのですが、ボウイングの滑らかさの減衰(衰えというほどのレベルではない)が更に感じられます。音楽の深さに変わりは無いですが、シゲティのように精神性だけで勝負するわけでは無いので多少のマイナスと言えるかもしれません。とは言え晩年の生演奏でミス無く完璧に弾き切る技術には改めて感服します。ツェンダーの指揮は悪くは無いですが特別に立派ということもありません。録音は優秀です。

Cci00063 カール・ズスケ(Vn)、マズア指揮ゲヴァントハウス管(1987年録音/シャルプラッテン盤) ズスケのヴァイオリンの生の音は昔カルテットの来日公演で耳にしました。非常に端正で美しい音でした。この演奏の音も全く同じです。誠実な弾き方はこの曲の場合は大いに好感が持てますし、2楽章の祈りの深さなどは素晴らしいと思います。ですが1楽章や特に3楽章になると真面目過ぎて物足りなさも多少感じてしまいます。マズアの指揮もやはり同じ印象です。

345 チョン・キョン‐ファ(Vn)、テンシュテット指揮コンセルトへボウ管(1989年録音/EMI盤) シゲティ、シェリングのような精神性タイプのヴァイオリニストであるキョンファは当然ベートーヴェンに向いています。甘さを排除した禁欲的な雰囲気がとても好ましいと思います。1楽章は重々しいオケの伴奏がテンシュテット節全開。その分ややキョンファの音楽とのずれを感じないでもありません。2楽章の静かで深い沈滞も良いのですが、よくよく聴いているとベートーヴェンと言うよりはロマン派の曲のようです。テンシュテットファンは絶賛だろうと思います。ところが3楽章がソロ、オケとも軽めなのは意外です。いっそのこと最後まで重量級で通して欲しかった気がします。

以上の中で、僕が断然気に入っているのはシェリングのGreenHILL盤です。これほどの名演奏なのですから、放送局の正規録音で世に広く知られるようになると良いと思います。最近オルフェオから出たブラームスの協奏曲ライブ盤も最高だったからです。
次点にはシェリングの残りの演奏全て。それにブッシュ、シゲティ、シュナイダーハンの新盤は外せません。

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