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2009年1月 4日 (日)

J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 BWV1046-51 名盤

Baha2 まだ松の内ですので暗~い曲を聴くのは何となく避けたくなります。やはり厳かで、尚かつ楽しい曲が聴きたくなりますよね。
そんな気分にぴったりなのが「ブランデンブルグ協奏曲」です。何も”お正月限定”ということでもないですが、新年にとても聴きたくなります。バッハの峻厳さは年明けの新鮮な気分にとても向いているからですね。

最近は、どちらかいえばバッハの器楽曲よりも声楽曲に惹かれていますが、この曲の楽しさはやはり格別です。大バッハを自分なんかよりもずっと沢山聴かれている方は大勢いらっしゃいますし、これほど有名な曲を今更でも有りませんが、この曲集は傑作中の傑作だと思います。

ブランデンブルクというのは現在のベルリン一帯の地名ですが、この曲のタイトルは時のブランデンブルク選帝侯の息子に曲集が献呈されたことから名付けられました。その全6曲は、それぞれの曲が編成も、中心となって活躍する楽器も、曲想も驚くほど多種多様でバラエティに富んでいて、聴いていて絶対に飽きることがありません。

全曲とも完全無欠の名曲なので、どの曲が好きかと聞かれても困るのですが、個人的に特に挙げるとすれば第1番、それと地味な第6番でしょうか。昔はヴィオラを弾いていましたので、ヴァイオリンの入らない第6番のスコアの各声部を弾いては遊んでいました。

この曲集のCDはそれこそ数えきれないほど多く出ていますので、そのごく一部しか聴けてはいませんが、その中から印象的な演奏をご紹介させて頂きます。

51ef28vxmyl__ss500_カール・リヒター指揮ミュンヘンバッハ合奏団(1967年録音/アルヒーフ盤) 余りにも有名な演奏です。当時はまだ一般的であった大編成によるロマン的な演奏のアンチテーゼとなる新しいバッハでした。けれど、その演奏すら今では古楽器派の台頭によって、すっかり古臭い演奏という烙印を押されてしまったかのようです。ですが、それはとんでもない話です。速めのテンポで生き生きとしたリズムと生命感が有り、聴いていてとにかく楽しいです。使われているのが現代楽器であろうが何だろうが、ヴァイオリンのシュネーベルガー、フルートのニコレをはじめとした演奏者達は素晴らしいです。僕は今でもこの演奏は大好きです。

938 ルドルフ・パウムガルトナー指揮ルツェルン音楽祭合奏団(1978年録音/オイロディスク盤) 各楽器に選りすぐりの名奏者が集まった有名な演奏です。全体的にテンポはゆっくり目ですが、楽しさにかけてはリヒター盤にも劣りません。スークのヴァイオリンやニコレのフルートソロが実に素晴らしいです。第1番などは今では幾らか遅過ぎるようにも感じますが、逆に第3番は現代楽器ならではの豊かな美しさに魅了されます。第6番でもスークのヴィオラがとても美しいです。今聴いても古臭さを少しも感じさせませんし、古楽器と比べれば音の豊かさ、美しさは圧倒的です。

592 ゲルハルト・ボッセ指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス・バッハ合奏団(1981年録音/シャルプラッテン盤) ゲヴァントハウス管のコンサートマスターにしてゲヴァントハウスSQの第1Vnであったボッセ教授が指揮をしてヴァイオリンも弾いている演奏です。ゲヴァントハウス管はいわばバッハゆかりの聖トーマス教会合唱団の専属楽団。バッハ演奏は筋金入りです。雨後の竹の子のように出てきた古楽器学究派の及ばない生きた演奏の歴史を持っています。地味で目新しさは無いですが、ドイツの頑固親父のようなどっしりとした貫禄が有ります。やはり本家ライプチッヒのバッハはこれです。僕は教授のヴァイオリンともども大好きな演奏です。僕の好きな第6番も実に魅力的です。

Cci00004 ヘルムート・ヴィンシャーマン指揮ドイツ・バッハ・ゾリスデン(1993年録音/日本コロムビア盤) これはこの団体の1970年代の旧盤ではなく新盤のほうです。ヴィンシャーマンはこの時代でも現代楽器を使用して頑張っていました。かつてのヴィンシャーマンの演奏するオーボエは骨太の音とおおらかさがとても好きでしたが、ここでは残念ながらご自分では吹いていません。古楽器派の台頭を意識してか、旧盤よりもテンポが全般に速めになった気がしますが、おおらかさには変わりは有りません。ドイツの演奏家でこれほど温もりを感じさせる演奏家も少ないのでは無いでしょうか。この温和さが良くも悪くもこの人の魅力だと思います。第5番もなんとものんびりしています。

457 グスタフ・レオンハルト指揮クイケン兄弟、ブリュッヘン、ビルスマ他(1976年録音/SEON盤) 当時の古楽器派の若手の名手達がレオンハルトの元に一同に集まった記念碑的な演奏です。最近の古楽器演奏と比べると随分と遅めのテンポでゆったりしています。古楽器派の古典的な?録音とでもいうところでしょうか。以前は古楽器の音はどうも乾いていて潤いが無く、色気に乏しいように感じていましたが、時と共に耳が慣れて古雅な響きが楽しめるように成りました。パウムガルトナーと比べれば貧相な音ではありますが、そんなことを言うと「それがバロックだ!」と叱られてしまうのでしょうか?

331 ラインハルト・ゲーベル指揮ムジカ・アンティク・ケルン(1986-87年録音/アルヒーフ盤) リヒター盤から20年後の録音です。時は流れて先鋭な古楽アンサンブルMAKの激演です。どうせ古楽器の痩せて貧相な音ならばこれぐらいやってくれた方が良いのかもです。1楽章から生き生きしたリズム、過激なホルン、ゲーベル自身のヴァイオリンが冴えて楽しいです。以後どの曲も快速テンポで息つく間を与えません。緩徐楽章にも不思議な味わいが有るのは凄いです。但し問題は第6番の猛スピードで、これだけはいくら何でもやり過ぎに思います。余談ですが、僕はMAKの管弦楽曲全集も同様に好きで愛聴しています。

さて、音色の比較で例えれば、古楽器の干物魚(?)のような音が好きか、現代楽器の脂の乗りきった養殖ハマチのような音が好きか、これはなかなか難しい問題ですね。自分の好みで言えば、現代楽器を端正に弾いているルツェルン音楽祭合奏団やゲヴァントハウスの音に惹かれます。しかし実際には楽器の音色だけでは演奏の良し悪しは決まりませんし、その時の気分で聴き分けることにしています。結局は聴き手の好みの問題ですね。

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J.S.バッハ(協奏曲)」カテゴリの記事

コメント

クラシック音楽を聴き始めた頃は同曲をリヒターの演奏を聴いていましたが、今はMAKのCDを愛聴しています。

ただ、ハルさんの文章を読んで久しぶりにリヒターの演奏を聴きたくなりました。昔の表現や演奏スタイルを全て否定する社会進化論的な今の論調には首を傾げたくなりますよね。

私が一番好きな曲は第4番です。リコーダーが活躍し、爽やかな気分にさせてくれます。

投稿: たろう | 2009年1月 4日 (日) 12時19分

たろうさん、コメントありがとうございます。

リヒターはやはり不滅の演奏だと思います。
声楽曲などはかなりロマンティックな表現と言えますが、あの精神的な感動はそう簡単に他に変えられるものでは無いでしょう。

演奏評価は見方の尺度で随分変わると思います。昔の表現や演奏スタイルのほうが芸術として優れていると思えるケースは多々有りますね。

投稿: ハルくん | 2009年1月 4日 (日) 23時07分

この中ではリヒター、レオンハルト、ゲーベル盤を持っています。

レオンハルト盤は、今でもよく名曲名盤を紹介した本等で推薦されていますが、そんなにいい演奏ではないですよね・・・?
ゲーベルのは個性的で面白いと思います。

私の愛聴盤は、ジークベルト・ランペ(指揮&チェンバロ)のものです。
十数年前の古楽器録音ですが、CDから最初に音が出た瞬間に、ブッ飛びました・・・あまりの元気さに。(笑)
これ以降、ブランデンブルクのCDは買ってないです。
(満足しちゃったので)

残念ながら国内盤が出なかったので、当時このCDは全く話題にもなりませんでした。
ランペは最近、モーツァルトの鍵盤音楽の全集録音で、だいぶ知られるようになっていますが。

投稿: REIKO | 2009年1月 8日 (木) 00時03分

REIKOさん、コメントありがとうございます。

レオンハルト盤は余り好きでは有りません。
もちろんお好きな方もいらっしゃるのでしょうけれど。

ランペ盤ですか。聴いたことがありませんが、なかなか興味深いところです。
貴重なご情報をありがとうございます!(^^)


投稿: ハルくん | 2009年1月 8日 (木) 06時03分

ブランデンブルクの祝祭的な雰囲気も新年に似つかわしいですね(別のページにはちがうことを書いたような気もするが)、バッハコレギウム・ジャパンの演奏はどうですか?けっこうな水準だと思いますけど。

レオンハルト盤はやっぱり「変」ですよね。聴いて(演奏して)気持ちよいように演奏するのがバロックだと私は思うので、この盤は「私にとってのバロック」ではありませんね。ブリュッヘンも若い頃の独奏は好きだったんだけどな・・・中学生の頃、彼のライブを聴いた(見た?)ことが、私を木管楽器の世界へ魅きこんだのでした。

投稿: かげっち | 2009年1月 8日 (木) 12時32分

バッハ・コレギウム・ジャパンは残念ながら聴いたことが有りません。以前、別の曲を聴いた時に特別な印象が無かった為です。でもブランデンブルグは聴いてみたいですね。

レオンハルト盤は皆さんにもどうも評判が余り良くないですね。しかし考えてみれば、録音年代を考えるとこれは上出来なのかもしれません。何しろまだまだ古楽器で演奏さえすれば新鮮だった時代です。
後にその反動としてゲーベルみたいな人が出てきたわけですから。

投稿: ハルくん | 2009年1月 8日 (木) 22時06分

バッハ・コレギウム・ジャパンはおそらく時々メンバーが入れ替わっているでしょうから、時期によって場所によって演奏は異なる可能性があると思いますが、ブランデンブルクの録音はいろいろな点から聴いてもけっこう気に入っています。

関係ないですが昨夜はクライバー来日時のNHK録画に釘付けでした。あんな指揮で演奏したら楽しいだろうなとか、大胆に楽譜の指示にないことをしているのに自然に聞こえるのは凄いなとか、楽員を本当に信頼しているんだなとか。

投稿: かげっち | 2009年1月10日 (土) 12時26分

かげっちさん、再びコメントをありがとうございます。

よく思い出してみたらBCJは10年近く前にコンサートで聴いたのでした。以来まともには聴いていません。実は昨年ブランデンブルグの全曲演奏会に行きたかったのですが、結局行けませんでした。
日本で定期的に聴くことの出来るバロック演奏団体としてはやはり存在価値が有りますね。

Cクライバーは、ウイーンPOの昔を知る古い団員からも、「本番は父エーリッヒよりも息子の方が凄かった」と言われるようですね。曲によっては音楽が健康的に過ぎる場合も有りますが、目の前であんな風に棒を振られたら団員は燃えてしまうでしょう。

投稿: ハルくん | 2009年1月10日 (土) 22時08分

BCJの鈴木雅明氏に加藤浩子氏がインタビューした「バッハからの贈り物」(春秋社)という本はお読みになりましたか?一人のバッハ観をまとめて読めるという意味では興味深い本でした。加藤氏は以前にも「バッハへの旅」(東京書籍)という良い本を出しています。

C.クライバーのBeethovenの7番をこんどお聴きになる時は2楽章の最後に注意してみてください。ふつうは弦楽器のpizzが最後だけarcoになるところ、彼は最後までpizzで弾かせます。結果として最後の音符は木管の響きだけが残ります。

これを聴いた私の友人は「2楽章の最初も木管だけだっけ?」と私に確かめてから「じゃあそれでいいんだ」と指摘しました。彼の指摘で私も思い出しましたが、Wagnerはこの楽章の冒頭を「魔法の国へ誘う鏡」に譬えています。その魔法の国から再び戻ってくるのが最後の木管の和音だと彼は言うのです。納得!やっぱりクライバーは凄い!

投稿: かげっち | 2009年1月11日 (日) 21時40分

かげっちさん、こんばんは。

「バッハからの贈り物」は読んでおりません。「バッハへの旅」のほうは一度ざっと読んだことが有ったと思います。

クライバーのべト7ですが、実は私は余り好きではなく、おそらく10年は聴いていませんでした。久しぶりに聴いてみました。なるほど2楽章はこう弾かせていたのですねぇ。ところがこの演奏はやっぱり、どうにも健康的過ぎと言うかスポーツ的と言うか、腰が軽すぎるのです。私にとってはカラヤン盤と同じに聞こえてしまうのです。
それではどういうのが好きかと言えば、かげっちさんのお好きでないフルトヴェングラー。(笑) でなければフリッチャイ/ベルリンPO。重厚な演奏が好きなのです。好みの隔たりだけは如何ともしがたいです。

投稿: ハルくん | 2009年1月11日 (日) 23時13分

こんにちは。

リヒターの音源がいくつあるのかわかりませんが、やはりニコレのフルートは清澄で品格があります。ソリストが異なるメンバーで5番を演奏した映像(1970年?)を見たのですが、これは多少雑な印象を受けました。リヒターにもかなりミスタッチがあって、逆になんとなく人間らしさを感じました。

レオンハルトは最近亡くなったようですね。私は好きですが、独奏曲ではかなりくせのあるフレージングがあるのも確かだと思います。昔はFM放送などでもよく紹介された人でしたよね。

投稿: NY | 2014年3月 3日 (月) 23時42分

NYさん、こんにちは。

古い記事へのコメントを頂きましてどうもありがとうざいます。

ブランデンブルグ協奏曲の録音はそれほど多くは無いと思います。ニコレ参加の演奏はやはり素晴らしいですね。リヒターは1950年代末から60年代にかけての演奏が非常に厳しさが有って良いです。70年代に入ると少しづつ”緩く”というか、人間的な温かみを感じさせるように変わっていったので幾らか好みは分かれるかもしれませんね。

レオンハルトも人気が高かったですし、古楽器演奏の普及の上では貢献度が凄く高いでしょうね。クセのある弾き方については、これは好みによると思いますが。

投稿: ハルくん | 2014年3月 4日 (火) 11時55分

こんにちは。

グールド/ベーカー(fl)/シュムスキー(vn)で5番のテレビ映像(1962年)を見ました。フルートとヴァイオリンの掛け合い、特にベーカーのフルートが比類のない美しさです。グールドは改造ピアノみたいなものを弾いているので好みは分かれるかもしれませんが、テンポがゆったりしていて立体的に聴こえますし、計算され尽くした知性派の雰囲気の中で優雅なロマン性も感じられます。

ジュリアス・ベーカーもオスカー・シュムスキーもとても偉い大家だったのですね。実は最近まで知りませんでした(汗)。

投稿: NY | 2014年4月13日 (日) 12時09分

NYさん、こんにちは。

さっそくご紹介の映像を見つけて観ました。

グールドが弾いているのは、かの「ハープシピアノ」のようですね。わざわざピアノを改造させて制作したそうです。

演奏は現在の耳で聴くとゆったりと感じますが悪く無いですね。鍵盤楽器がピアノで無くてチェンバロらしい音なので、古臭さは感じません。さすがにピアノで聴きたいとは思いませんので。
ベイカーのフルートもシュムスキーのヴァイオリンも流石に大家らしい演奏ぶりですね。

投稿: ハルくん | 2014年4月15日 (火) 14時54分

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