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2008年11月 5日 (水)

テミルカーノフ/サンクトぺテルブルク・フィル 2008来日公演 チャイコフスキー「悲愴」他

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サンクトぺテルブルク・フィルが来日して「チャイコフスキー・フェスティヴァル」と称するコンサート・ツアーを行っています。今日は初台のオペラシティでのコンサートを聴きに行ってきました。プログラムは全てチャイコフスキーで、幻想序曲「ロミオとジュリエット」、「ロココ風の主題による変奏曲」それに「悲愴交響曲」の3曲です。

指揮はユーリ・テミルカーノフ。この人は1988年にムラヴィンスキーの後を継いでこの楽団の首席になりました。ちょうど20年前です。その時にはこの楽団の名前はかの「レニングラード・フィルハーモニー」でした。ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルといえば、もはや神格化された存在ですが、僕の音楽人生最大の後悔といえば、そのムラヴィンスキーを実演で聴いていないことです。しかし今ごろそう言っても始まらないので、いにしえの名楽団の現在を楽しむしかありません。

さて、そのコンサートですが、最初の「ロミオとジュリエット」から非常にテンションの高い演奏を聞かてくれました。ムラヴィンスキー時代の研ぎ澄まされて怖ろしいほどの切れ味というのとは多少違いますが、弦も管も非常に凄みのある音は未だ健在と感じました。今年70歳になるテルミカーノフの棒(いやこの人はタクトは使いません)(^^) は旋律の歌わせ方も堂に入っていてとても上手いです。チャイコフスキーの甘いメロディをたっぷりと味合わせてくれました。

次の「ロココ風の主題による変奏曲」は、独奏チェロを弾くのがロシアのタチアナ・ヴァシリエヴァという若手女流奏者ですが、とても上手いソリストで中々楽しめました。

そしてメインの「悲愴」ですが、演奏のテンションが増々上がって、これは大変なものでした。そもそも第1Vnが9プルト18名、チェロが10名でコントラバスが同じ10名という編成自体もえらく分厚い弦楽の音を響かせましたが、それでいてアンサンブルの精度は非常に高く凄みがあります。この曲においても歌わせるべきところはたっぷりと歌わせてくれるのが嬉しいです。そして第一楽章後半と終楽章のあの真のカタルシス!まるでこの世の終わりのように凄かったです。この曲はやはりこうでなければ。

チャイコフスキーを聴くのは、やはりロシアの優秀な楽団に限ると改めて感じ入ったコンサートでありました。

それにしても今日は帰り道が寒かったです。真冬になったら部屋の暖房をガンガンにしてチャイコフスキー三昧なんて生活が訪れるのももうすぐだなぁ(^^)

さて、せっかくですので、僕の愛聴CDをご紹介させて頂きます。

幻想序曲「ロミオとジュリエット」

877 ゲルギエフ指揮キーロフ管弦楽団(フィリップス盤) 僕は現役指揮者の中ではゲルギエフが最も好きです。(というのも、とっくに死んだ指揮者ばかりを聴いているから?)(^^) それはともかくとして、この演奏は実に素晴らしいです。音の切れの良さとロマンティックな歌わせ方がどちらも最高だからです。これは、この人の「悲愴交響曲」の旧盤に組み合わされていますが、「悲愴」の演奏もとても良いです。

交響曲第6番「悲愴」ロ短調 op.74

458 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送響(グラモフォン盤) 既にファンには良く知られた最高の「悲愴」です。僕は普段は偏執的?(^^)なほどに本場物の演奏を好みますが、これだけはハンガリー人とドイツオケとの有無を言わせぬ圧倒的な名演奏なのです。第一楽章や終楽章の有名な旋律がかつてこれほどまでに悲しく響いたことがあったでしょうか。断じて有りません。しかも極めてドラマティックな展開も正に最高です。「悲愴」が好きで、もしもこの演奏を聴いていない方が居たらそれは一生の不覚です。

172 フェレンツ・フリッチャイ指揮バイエルン放送響(オルフェオ盤) 実はフリッチャイには上記のグラモフォン録音とは別に1960年のライブ録音が有ります。これは知る人ぞ知る、演奏だけをとればベルリン放送盤をも更に(!)しのぐ凄演です。録音も極上のモノラルですので、聴いていて音の違いは気にならなくなってしまいます。解釈はベルリン盤とほぼ同じで、ライブでの感興の高さが更に増すだけです。ベルリン盤のファンにはこちらも是非聴いて頂きたいです。

125 ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(グラモフォン盤) ここでこの演奏を外すわけにはいかないでしょう。これを初めて聴いた時、それまでカラヤンのゴージャスな響きに馴染んでいた学生(30年前の私です)の耳には非常にショッキングでした。脳天につきささるような鋭利な金管の響き、異常なほどに切れの良いリズム、徹底的に鍛え上げた凄みの有るアンサンブル。それでいていかにも自国の楽団でしか味わえないようなロシア風の歌いまわし。すっかりとりこになってしまいました。ムラヴィンスキーはライブ盤も素晴らしいですが、このグラモフォン盤は原点と言えます。

<追記>
この曲については、「悲愴交響曲 名盤」で、この3枚と合わせて他の愛聴盤をご紹介しています。

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チャイコフスキー(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

チャイコフスキーの「悲愴」はフリッチャイのオルフェオ盤は残念ながら持っていませんがグラモフォンでのフリッチャイとムラヴィンスキーは、数多いこの作品の録音の中で絶対はずせないものと思います。おっしゃる通りカラヤンの演奏と次元の違うものを感じます。
なおムラヴィンスキー盤は私の所持しているのは後期の3曲の交響曲を2枚のCDに収めた徳用盤ですが、写真にあるようなオリジナルジャケットのCDに買い直したいと思っています。この録音を聴くたびに一度だけ生のステージで観た背がピンとはって指揮台に立つムラヴィンスキーの姿をどうしても思い出してしまいます。
その他、この作品の録音では以前から朝比奈隆が1994年、新日本フィルを指揮したCDがお気に入りでしたが最近、1992年、新星日本響を指揮した録音が発売され、たいへん気に入っています。外面的演奏に全く背をむけた朝比奈隆ならではの心の演奏を聴くことが出来ます。また第3楽章での豪快さは迫力満点です。

投稿: オペラファン | 2008年11月 6日 (木) 10時04分

オペラファンさん、コメントありがとうございました。

ムラヴィンスキーの実演に触れられたとのこと。大変羨ましい限りです。小生は映像でしかその姿を目にしたことは有りませんが、その毅然とした指揮姿は神々しいほどですね。
チャイコフスキーの三大交響曲はやはり1曲毎にCDに納められている3枚組みのセットが一番良いと思います。

投稿: ハルくん | 2008年11月 6日 (木) 23時29分

サンクトペテルブルグフィルの演奏を聴きに行かれたのですね。綴られた文中からも当夜の熱気が伝わって来るようです。
私は今の団塊さんたちよりも、少し上の世代ですので、今は亡き音楽家の来日ライブの主だったものは結構聴いてきたつもりです。1977年のムラヴィンスキーの東京公演も10月19日のシベリウスの7番をNHKホールで僥倖にも聴くことが出来ました。
92年にNHKが放映した「幻の記録」と題されたシューベルトの「未完成」とショスタコーヴィチの「5番」という貴重なフィルムに刻印されている彼の極めて峻厳且つ透徹した指揮をする彼の姿を観れば「美は人を沈黙させる」それだけでもう十分のような気がいたします。今も記憶に強く残る演奏でした。
なんだか「クラシックCDの名盤」における評者の推薦盤と重なっているようで、大きな顔は出来ませんが、どなたが聴かれても「なるほど納得」で異論が出ないかも知れませんね!
そこでフリッチャイになりますが、LP初期の頃、セルジュ・モルー、またはH・スティーヴンスのバルトーク論の著作の影響もあって、フリッチャイの「弦チェレ」「オーケストラのための協奏曲」「青髭」など彼のレコードを耳たこで聴いてきたのがとても懐かしく偲ばれて来ます。ハルくんが聞いておられる「悲愴」の2枚も見事な演奏で私も大好きです。

投稿: ISCHL | 2008年11月 7日 (金) 22時19分

私も1977年のムラヴィンスキーの日本公演を聴いていますが、私が聴いたのは9月27日の東京文化会館での公演で、ワーグナーとブラームスの第2が演奏されました。これが私の唯一のムラヴィンスキー体験です。
真近で見る事が出来たムラヴィンスキー。ステージに現れたとたん言い様もない会場内の空気がピンと張ったような緊張感を感じました。まさに真の巨匠と言っても過言ではありません。初来日の時のNHKテレビでの放送の映像、残っているならば、ぜひDVD化して欲しいものです。

投稿: オペラファン | 2008年11月 7日 (金) 23時09分

ISCHLさん、コメントありがとうございまいした。

往年の名演奏家の来日ライブを数多く聴かれましたか。実に羨ましいかぎりです。私は昔はLP収集が中心でしたのでコンサートにはそれほど行きませんでした。これはもう後の祭りですね。

フリッチャイは昔LPでベートーヴェン「第5」「第7」とか「新世界より」に感銘を受けました。その他にもモーツァルト「大ミサ」や、おっしゃられたバルトークとか色々と名盤が有りますね。

投稿: ハルくん | 2008年11月 8日 (土) 08時22分

オペラファンさん再びコメントありがとうございました。

ムラヴィンスキーの日本公演のDVDは本当に見たいものですね。ベームはシンフォニーもオペラも出ましたから少々期待したいところです。

投稿: ハルくん | 2008年11月 8日 (土) 08時27分

ハル君にはクラシックの素養でかなり遅れをとる私パパが唯一つ胸を張って誇れること、それはムラヴィンスキーーレニングラードの生演奏を聞いていることでしょう!1977年来日公演はおそらく東京文化会館で、曲目はモーツァルトの交響曲第39番とショスタコの5番!かなり人気のプログラムで、チケット受付時間開始前から延々2時間くらい新芸術家協会に予約の電話を入れたのを覚えています。わくわくしながら始まった演奏はまずモーツァルト。ムラヴィンスキーという指揮者はその当時も幻の巨匠で、実際目の前で繰り広げられる演奏がこの世のものなのか、夢見心地でした。特に感銘を受けたのはその澄み切ったピアニシモ!当時は大変恵まれた時代で、カールベームやバーンスタイン、クーベリックといった巨匠の演奏も聞くことが出来ましたが、私がもっとも衝撃を受けたのはムラヴィンスキーのピアニシモでした。ショスタコはもうあまりのすばらしさに何も言えねぇ!トリ肌が立ちっぱなしでした。繊細なピアニシモの後に来る壮大なフォルティシモはこのオーケストラがロシアのものであることを雄弁に語っていました。演奏が終わってアンコールに呼ばれるムラヴィンスキーの姿を見ようと大急ぎで階段をくだり、ステージ横の花道で「ブラヴォー」を叫んでひょっとして握手してもらえるかもと思い、手を伸ばしました。そのときムラヴィンスキーは立ち止まって普通はないことだそうですが、指揮棒でわれわれの差し出す手にちょんちょんと触れてくれました。感激でした。その後は文化会館の楽屋出口で楽員たちに握手をしたり、サインをもらったりしながら演奏会の余韻に浸ったのでした。
ところで、ムラヴィンのチャイコは4・5・6しか録音が残されていないのでしょうか。パパ的には1番「冬の日の幻想」なんていうのが大好きで、しかもベストの演奏がなく、捜しています。情報あったらお願いします。

投稿: パパゲーノ | 2008年11月 8日 (土) 21時40分

パパさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。

ムラヴィンスキーのモーツァルト39番とショスタコの5番ですか!ため息がでます・・・
CDで聴いていてもどちらも最高ですからね。

ところで私もチャイコフスキーの1番は大好きですが、ムラヴィンスキーに4,5,6番以外の録音は無いと思います。
昔はロジェストヴェンスキー/モスクワ放送響の全集をLPで持っていましたが、1番は非常に良い演奏でした。第2楽章のホルンのソロも最高でした。ただこの演奏は自分もCDで欲しいのですが残念ながら出ていません。
それで私のCDはエフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団の1993年スタジオ録音盤です。彼は別のライブ録音も有りますがそちらは聴いていません。私はこういう曲はどうしてもロシアの本場物の演奏で聴きたいので個人的には一押しのお薦め盤です。ロシアの冬を満喫できますよ~♪

投稿: ハルくん | 2008年11月 8日 (土) 22時41分

ムラヴィンスキーを聴けた方々はうらやましいです。シベリア鉄道に延々と乗って来日したのでは?
個人的にはチャイコフスキーにトラウマ体験があって、あまり好きではないのですが、ムラヴィンスキーは唯一「チャイコを男性的に演奏する指揮者」であるように感じます。ただ、5番を演奏することになって勉強する目的で1枚選んだ時には、ムラヴィンスキーの演奏が体にしみつくと(でも真似はできないので)困ったことになると考え、ロジェストヴェンスキーにした記憶があります。

投稿: かげっち | 2008年12月 3日 (水) 12時58分

かげっちさん、コメントありがとうございました。
チャイコフスキーにトラウマ体験ですか!一体どんな体験なのだか聞いてみたくなりますね。
私はチャイコは普通は男性的だと思うのですが。女性的な演奏って有りますか?

でも確かにムラヴィンスキー/レニングラードフィルでは演奏の教材にはなりませんよねー。(笑)

投稿: ハルくん | 2008年12月 3日 (水) 22時51分

こんにちは。

フリッチャイ/バイエルン/Orfeo盤を入手。
丁度50年前の録音なんデスね。強奏でも適度なのでgood

スヴェトラーノフ/東京Liveは強奏の振り幅が大き過ぎて感銘どころか恐怖感を植え付けられたのでsweat01スタジオ録音が嗜好に合いマス。

フリッチャイも、どちらか選ぶならDG盤かと。あくまで演奏でなく【CD】として。録音自体も上ですし。でもよく日本企画で商品化してくれました。こんな演奏が眠ってたなんてcoldsweats02

投稿: source man | 2010年9月23日 (木) 15時10分

source manさん、こんにちは。

フリッチャイのLIVE盤を聴かれましたか。僕自身は演奏のみで言えばLIVE盤が上回るとは思っています。けれども録音はDG盤のほうが良いですし、総合的にはやはりDG盤でしょうね。

スヴェトラーノフの東京LIVEとスタジオ録音では、これは好みの問題だと思います。ただ「悲愴」に関しては僕もどちらかいえばスタジオ盤かもしれません。でも両方を聴き比べて楽しむのがベストですよ。

投稿: ハルくん | 2010年9月23日 (木) 22時24分

こちらにも書かせて頂きましたm(_ _)m
サンクトペテルブルクの来日公演、私も二度行きました。PCと5番のサントリーでの回とハルさんの行かれた6番の回です。サントリーでは指揮者の体調不良で、マチネがなくなりましたね。
それにしても、やはりサンクトペテルブルクの音は深いですね。モスクワではなく、レニングラードの音。ムラヴィンスキー師亡き後も健在です。
同行した者も「オーケストラが音楽をどう弾けばよいか分かっている!」と驚嘆していました。加えて「あの指揮者、大丈夫?」とも。彼女は音大の講師なので耳は信用できます。
確かに、確信に満ちた演奏です。特にコンマスの人、自信タップリでした。それが本当の伝統と云うものでしょう。今は世界的に少ないです。残念ですね。それに比して指揮者の情けないこと!もともと期待はしていませんが、交通整理すら覚束ない。彼女曰く「こんな凄いオーケストラなら私が振ったって、もう少しマシ」と(・_・; 手厳しい。
しかし「悲愴」の最後のコーダは、感動的でした。ムラヴィンスキー以外、不感症の私でも感動しました。チャイコフスキーの死には謎が付き纏いますが、レクイエムを作曲しようとしていたこと等を考え合わせると、これはチャイコフスキーの事実上のテスタメントではないかと疑いたくも、と云うか、その時点では確信したくらい素晴らしい音楽でした。深い深い音だけが広がり、指揮者の姿すら消えました。もともと影、薄いですけど(笑)。

投稿: シャルリン | 2010年9月24日 (金) 19時23分

シャルリンさん、こんばんは。

僕はそのマチネのチケットを買っていたのですが、中止になったのは体調不良というよりは、一日二回の公演に体力が持たないからという理由からでした。これはマネージメントをした梶本の責任です。高齢指揮者に初めから無理なスケジュールを組んだ商業主義の企画そのものが失敗だったと思うのです。僕も実はテミルカーノフが目当てで聴きに行った訳ではありませんが、ムラヴィンスキー亡きあとにオケの実力を落とさずにいるという事実は評価しています。本番の指揮での動きは小さいですが、それだけトレーニングを重ねたうえでのステージでしょうから、あれで良いと思いますよ。あの素晴らしく感動的な演奏が全てです。

投稿: ハルくん | 2010年9月24日 (金) 23時35分

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