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2008年11月

モーツァルト 「レクイエム」 ニ短調 K.626 

Erz13001 一週間後の12月5日はウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの命日です。それにしても天才モーツァルトの残した多くの作品ほど世界中で演奏されている音楽は無いでしょう。なんでも彼の作品にもしも著作権が残っていたとしたら、それだけで小さな国がひとつ買えてしまうのだとか。小室哲哉氏が聞いたらなんと羨ましく思うことでしょうか。(^^)

私はこれまでモーツァルトの命日に「レクイエム」をことさらおごそかに聴いてきたという人間ではありませんが、今後残された人生で彼の命日にこの曲を聴いてみるというのも悪くないな、という気が最近してきました。

かつての私の職場の上役に相当のモーツァルトファンが居ました。その人は病気の為に定年前に亡くなってしまったのですが、生前に自分の葬儀にはレクイエムを流し続けて「モーツァルト葬」にしてほしいと言っていました。それなので奥さんは実際に本人の希望通りにしたのです。ご主人は本望だったことでしょう。だが私の葬儀のときにはどうでもいいので、生きているうちにせいぜいこの曲を聴いておきたいと思います。

「レクイエム」には今では様々な版が存在しています。私は正直、余り版にはこだわりません。理由は、結局どれをとっても本人の完成品では有り得ないからです。ジェスマイヤー版にケチをつけるのは学者やファンの自由ですが、モーツァルトが死の床で作品の完成をかりにも託した人物の偉業(とあえて言いたいです。彼が途中で補作をやめていたら、これほど演奏されるようにはなり得なかったからです。)は到底無視できるはずはありません。ましてやあの「ラクリモーサ(涙の日」を更に補作するなどというのは余計なことではないでしょうか。モーツァルトだってジェスマイヤーに「この曲はこのまま手をつけなくて良い」と指示した可能性だって充分考えられるのですし。

演奏も最近では古楽器演奏が流行りですが、それぞれの良さが有ると重うので余り限定はしたくありません。私はそんなに多くの演奏を聴いたわけでは無いですが、心に残った演奏は多く有りますし、最近知った素晴らしい演奏も有りますので是非ここでご紹介させて頂きたいと思います。

Cci00035 オイゲン・ヨッフム指揮ウイーン交響楽団(1955年/グラモフォン盤) これは記念碑的な演奏です。生誕200年の年にモーツァルトゆかりのウイーン・ステファン大聖堂において彼の命日に行われたミサがそのまま収録されています。その雰囲気には当然ただならぬものが有ります。だが、ミサという割にはどうもソロ歌手(特にソプラノのゼーフリート)がオペラチックなのが気に入りません。我慢して続けて聴いていると段々気にはならなくなるのですが。これは当時のスタイルとしては仕方が無いところでしょうか。

953 ブルーノ・ワルター指揮ウイーンフィル(1956年/オルフェオ盤) ワルターのモツレクには数種類の録音が有り、先に世に出た同じ年のウイーンフィル盤がSONYに有りますが、私はこのオルフェオ盤の方が好きです。オケ、合唱、独唱ともに欠点が少ないですし録音もなかなか良いです。演奏の感動が最も伝わってくるのです。但しやはりアルトがオペラチックな歌い方なので古さを感じてしまいます。

Cci00037 カール・シューリヒト指揮ウイーンフィル(1962年/Tresor盤) これもステファン大聖堂でのライブ演奏です。ワルターが出たらシューリヒトを出さない訳には行きません。モーツァルトの演奏にかけてはこの二人は別格だからです。ロマンティックなのですが、ヨッフムやワルターのように粘り気はありません。ずっと爽やかな印象なのです。この辺りはシューリヒトならではと言うところです。これは聴くたびに魅力が増してくる不思議な演奏です。やはりソリストの歌い方が古いのはこの時代では仕方ありません。

Cci00038 カール・リヒター指揮/ミュンヘンバッハ合唱団(1961年/テルデック盤) リヒターは「マタイ」や「ロ短調」のように遅いテンポのロマンティックな演奏も有りますし、逆にあの時代にしては早めのテンポできりりと引き締まった演奏も有ります。これは後者のスタイルです、正に襟を正して聴きたくなる演奏です。合唱の彫りの深さと仰ぎ見るような立体感は流石だと思います。現在でも余り古さを感じさせない名演奏だと私は思っているのですが。

713 カール・ベーム指揮ウイーンフィル(1971年/グラモフォン盤) 私が初めて買ったレコード(LP盤)です。当時は最新盤だったのに時の経つのは早いものです。最近ではすっかり古楽演奏派に押されてしまい、「もはや古いスタイル」と言われています。ですが、古くて何がいけないのだ!これほど感動的な演奏を前にして演奏スタイルがどうのこうのと言う方がおかしいと思います。確かにテンポは相当に遅いですが、その分スケールの大きい実に立派な演奏であり、時代を超えた普遍性を感じます。決して古臭いとは思いません。ベームのこの余りに美しく悲しい「涙の日」を聴く時には私はとても普通では居られなくなるのです。

Cci00023 ハンス・ギレスベルガー指揮/ウイーン宮廷音楽教会管弦楽団&合唱団(1979年/タワーレコード盤) この指揮者をご存知でしょうか?ウイーンの合唱界では有名な人です。一見聞いたことも無いような団体ですが、ウイーンフィルの団員と国立歌劇場合唱団が特別参加しています。この演奏は名門SEONレーベルがウイーンの音楽界の総力を挙げて録音に臨んだものなのです。最初の「キリエ」からして雰囲気が違いますし、合唱に非常に厚みが有ります。どんどん立体的に重なり合ってくる様は正に圧巻です。そして何より素晴らしいのは、いかにも大聖堂で教会合唱団を聴いているような厳かで敬虔な響きであることです。ソプラノとアルトはウイーン少年合唱団。しかもソロパートまでを少年が歌っているのですがこれが信じられないほど上手いのです。この純粋無垢な声を聴いてしまったら、大人の歌手はもちろんカウンターテナーでもとても聞けなくなるほどです。オーケストラの管楽パートも滅法上手いです。トップは皆ウイーンフィル団員なのだから当たり前ですが。この演奏がぬるま湯教会演奏などと思ったら大違い。「怒りの日」など切れ味と緊迫感が凄いです。この時代にこれほど正統的かつ新鮮な演奏をしていたギレスベルガーには本当に驚きます。

このCDには「戴冠式ミサ」も合わせて収められているのが嬉しいです。「レクイエム」の演奏と比べるとやや落ちますが、それでもフィリップスの同じウイーンのクリスチャン・ハラー盤よりもよほど良いと思います。録音も優秀ですし、タワーレコードの廉価盤として出ているので是非とも一聴されることをお薦めします。

Cci00036 ペーター・ノイマン指揮/ケルン室内合唱団(1990年/ヴァージン盤) モーツァルトで古楽器演奏は取り立てて好きということはありませんが、ひとつくらいは挙げておきたいです。P.ノイマンは宗教合唱曲のスペシャリストだけにやはり素晴らしいのです。前述のギレスベルガーやこういう演奏を聴いていると、所謂「巨匠指揮者」の演奏がどんなに感動的であっても、宗教曲の場合にはその専門家と合唱団が歌う方がやはり本物かな、と思えてきます。

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ブラームスの室内楽 ピアノ四重奏曲集 

ブラームスの書いたピアノを伴う室内楽曲は全て名作と言えます。と言うよりもともと完璧主義者の彼の作品にはそうでない物はおよそ存在しないのですが、ともかくはピアノ五重奏曲の次はピアノ四重奏曲に行きましょう。彼はこのジャンルでは3曲を残しています。

「ピアノ四重奏曲第1番 ト短調Op.25」 若かしい曲想に満ちていて(ブラームスにしては)(^^)、とても親しみ易い名作だと思います。そのため最も演奏される機会が多いです。短調の割りには暗すぎず、終楽章などは実に情熱的。第三楽章の中間部にとつぜん行進曲が出てくるのもユニーク。この曲には有名なシェーンベルクが編曲した管弦楽版も有りますが、その行進曲部分の大迫力には思わず仰け反ってしまいます。

「ピアノ四重奏曲第2番 イ長調Op.26」 第1番と同時進行で書かれたらしいですが、第2番のほうが曲想はやや明るめです。しかし随所に哀愁漂う旋律がちりばめられていますし、第2楽章などは完全にエレジーです。この辺りはやっぱりブラームス先生ですねぇ。(^^)

「ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調Op.60」 さすがにこの頃の作品になると円熟して実に素晴らしいです。曲の進行に無駄が無く、飽きるところが有りません。不安げな曲想の第二楽章スケルツォ、歌謡調の第三楽章アンダンテ、暗い情熱一杯の終楽章アレグロコモード、いずれも大好きです。

私は第1番と第3番が特に好きなのですが、どうせなら3曲まとめて聴きたいものです。そこで3曲まとまった演奏をということなのですが、これが案外と少ないのです。ここでは私の愛聴盤を二つだけご紹介させて頂きます。

415 イエルク・デムス/バリリSQ(1956年/ウエストミンスター盤) オールドファンなら誰でも知っている、長年王座に君臨してきたバリリSQ盤です。モノラルでも再後期の録音なので音質は良好。表現はどこまでも無理なく自然。若きデムスのピアノもとても味わい深いです。何よりも今では失われてしまった古きウイーンの情緒をバリリSQの名演奏でたっぷりと味わえるのがかけがえがありません。正に永遠の名盤と言えるでしょう。

880 デレク・ハン(Pf)/イザベル・ファウスト(Vn)/ブルーノ・ジュランナ(Va)/アラン・ミュニエール(Vc)(1996年/ブリリアント盤) 実は私はずっとバリリSQの一本道だったのでしたが、最近この素晴らしい演奏を知りました。ヴァイオリンのイザベル・ファウストについてはホルントリオの記事でご紹介しましたが、この演奏は10年前のデビュー直後にこの録音されました。メンバーが凄いのです。弦に詳しい方ならヴィオラのブルーノ・ジュランナはご存知でしょう。昔はウィリアム・プリムローズがヴィオラの神様でしたが、その神様の後継者と言えばこの人でした。ピアノのデレク・ハンのことは知りませんでしたが、ゼルキンにマールボロ音楽祭に招かれた程のピアニストだそうです。どうりで実力は確かなはずです。チェロのミュニエールについてだけが良く分かりませんがやはり上手いです。若手実力ヴァイオリニストをベテラン勢が脇をしっかり固めただけあって演奏は非常に素晴らしいです。よく若手の演奏家が集まったときに感じるような、現代的過ぎて味気無いような演奏とは全く異なります。ベテラン勢とファウストのヴァイオリンとのバランスが絶妙なのです。このCDはブリリアントの「ブラームス室内楽全集」にも入っています、単売でも出ています。この名演奏が廉価盤で買えるなんて何と幸せなことでしょうか。

さて、せっかくの機会だし「第1番」のみだと世評の高い演奏が有るので、触れてみたいと思う。

474 まず昔から人気の高いギレリス/アマデウスSQ盤。評論家もよく推薦していたが、私は好まない。アマデウスQのいつもながらのオーバーな表現には特に驚かないが、ギレリスがどうもいただけないのだ。力み過ぎてしまって音に余裕が無いばかりか、終楽章の16分音符などでは走って前のめりに転んでいて、とても聴いていられない。この時ギレリスは人気カルテットとグラモフォン録音のチャンスを得たことで、余りに張り切り過ぎてしまったのではないだろうか?

903 そして天下の爆演、アルゲリッチ/クレーメル/バシュメット/マイスキー盤。凄いメンバーの凄い演奏だ。面白いことは間違いない。だが果たしてこれが良い演奏かというと?だ。彼らは曲の良さを表現しようというよりも、いかに自分達の腕前を披露してやろうかという態度にしか思えない。曲の節々のいじらしいメロディに少しも共感が無いし、終楽章の快速弾き飛ばしぶりは何!?昔、ワルターバリリが「16分音符は一つ一つの音がはっきりと聞こえるように正確に弾かなければならない」とどこかで話していたが、これは全然逆の演奏だ。バリリ教授は怒るだろうな(^^)。私はこの演奏を全然好まないが、逆にブラームスが苦手な人には間違いなく受けることだろう。

さて皆さんのご意見はいかがなものでしょうか?(反対意見は大歓迎ですよ)(^^)

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ブラームス ピアノ五重奏曲ヘ短調 Op.34 名盤

ブラームスは少年時代、北ドイツの港町ハンブルクで生まれ育ちました。幼少から父親に音楽を習いますが、ピアノ演奏にかけては天才的でした。けれども余り裕福でない家の家計を助ける為に、子供ながらにレストランや酒場でピアノを弾いて稼いだのです。その心境の程は計り知れるところではありませんが、彼は生まれながらのピアニストだったことは確かです。しかるにブラームスの室内楽作品のうちでピアノを伴う曲目は最も重要ですし、実際に作品数も多いのです。

その中でまず1曲を挙げるとしたら、私は迷わず「ピアノ五重奏曲ヘ短調 Op.34」を挙げます。この曲は正に「クラリネット五重奏曲」と双璧の傑作だからです。青年期の作品なので情熱と生命力に溢れていて、ピアノと弦楽は始終寄り添うというよりも、まるで協奏曲のようにお互いがぶつかり合いますが、その迫力に思わず手に汗を握ってしまいます。それでいて、いかにもブラームスらしい哀愁と寂寥感が至るところに漂っているのがファンにとってはたまらない魅力です。

Cci00029 ルドルフ・ゼルキン/ブッシュSQ(1938年/EMI盤) この曲の名盤といえば古いところではゼルキンとブッシュSQのSP録音が有ります。アドルフ・ブッシュは戦前のドイツ・ロマン派のヴァイオリンの伝統を継承する最後の生き残りです。この演奏は力強さは有りますが、非常に情緒的でほの暗い浪漫の香りが一杯に漂っています。ですので第2楽章などは最高です。ブラームスファンは一度は聴いておくべき演奏だと思います。但し、この曲は非常に立体的な作品なので、できればステレオ録音で聴きたいところです。そこで以下はステレオ録音の愛聴盤をご紹介します。

Cci00035 パウル・バドゥラ=スコダ/ウイーンコンツェルトハウスSQ(1960年/オーマガトキ盤) ウイーンコンツェルトハウスというとウエストミンスターのモノラル録音が有名ですが、これはそれとは別のステレオ盤で、彼らが来日した時にNHKのスタジオで録音されたものです。彼らは日本でこの他にも日本コロンビアに数曲のステレオ録音を残しているのですが、今では話題に上がることすら有りません。いずれもすこぶる名演なのに実に残念です。さて、この演奏の難点はバドゥラ=スコダのピアノが柔らかすぎて迫力に欠けることです。ウエストミンスター盤ではデームスでした。ピアノだけならデームスが上なのですが、この60年盤はコンツェルトハウスSQが非常に良く、立体的に歌いきっていて実に素晴らしいです。これは恐らく第2Vnに若き名手ワルター・ウェラーが入ったことが大きいと思います。第1Vnのアントン・カンパーとの強力2トップでウイーンの弦の魅力をこれ以上無いほどとことん味合わせてくれるのです。

Cci00033 ルドルフ・ゼルキン/ブダペストSQ(1963年/CBS SONY盤) この演奏は若いときからブッシュSQとの競演でさんざん鍛えられた豪腕ピアニストのゼルキンと、世紀の豪傑カルテット、ブダペストとの正に真剣勝負です。その精神性の厳しさと音楽の深さは比類が無く、最初から最後まで惹きつけられっぱなしになります。第3楽章の緊迫感も唖然とするほどです。初めてこれを聴く人はきっと腰が抜けるでしょうから注意して頂きたいです(^^)。この歴史的名盤は全ての人に聴いて頂きたいですし、個人的にも最も好んでいる演奏です。

393 マウリツィオ・ポリーニ/イタリアSQ(1980年/グラモフォン盤) この演奏は一般的には一番人気が高いのではないでしょうか。オール・イタリアンの実に流麗で爽やかな演奏なので聴いていてとても楽しいです。ですがそれは脳天気な明るさとは無縁です。ブラームスにしてはやはり渋みが少々足りないかもしれませんが、そこはこの曲の持つポテンシャルの広さということで素直にこの名演奏を楽しみたいものです。 

31409651 クリストフ・エッシェンバッハ/アマデウスSQ(1968年/グラモフォン盤) この録音はアマデウスSQの録音の中ではそれほど目立たない気がします。しかし第1Vnブレイニンの表情たっぷりの演奏は健在ですし、他のメンバーも同様です。「おいおいもう少し肩の力抜けよ~」と言ってやりたいくらいです(苦笑)。若き日のエッシェンバッハも悪くはないですが、ゼルキン、ポリーニと比べるとどうしても格の違いを感じてしまいます。

それにしても、この曲は何回聴いても飽きないです。つくづくブラームジアーナーで良かったと思っています。どうですか、あなたも私と同じ穴のムジナになりませんか?(^^)

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ブラームス ホルン三重奏曲 変ホ長調 Op.40 

ブラームスの室内楽には管楽器を伴う作品は多くはありません。けれども大傑作であるクラリネット五重奏曲の他にもとても魅力的な作品が有ります。それは「ホルン三重奏曲 変ホ長調Op.40」です。この曲はまず外すことは出来ません。

曲全体は4楽章構成で、第1、第3楽章がゆったりとした緩徐楽章で、第2、第4楽章は闊達な生き生きとした楽章と変化とバランスに富んでいます。ブラームスファンには昔から人気の高い曲だと思いますが、私もLP時代から大好きでよく聴いていました。そこで愛聴盤のいくつかをご紹介させて頂きたいと思う。

Cci00034 アドルフ・ブッシュ(Vn)、オーブレイ・ブレイン(Hr)、ルドルフ・ゼルキン(Pf)(1933年/EMI盤) だいぶ古い録音です。ブッシュは大好きだが、この録音はさすがに古めかしさを感じます。いくらレトロな感じが良いとはいってもこれを普段しばしば聴いて楽しむことはありません。けれどもゼルキンのピアノは素晴らしいです。彼は若い頃からとても優れたピアニストであり、大ブッシュからどれほどまでに信頼されていたかが良く分かろうかというものです。言い遅れましたがホルンを吹いているのは、有名なデニス・ブレインのお父さんです。

406 ワルター・バリリ(Vn)、フランツ・コッホ(Hr)、フランツ・ホレチェック(Pf)(1952年/Westminster盤) これも懐かしいウエストミンスターの室内楽録音の中の一つです。とてもゆったりとしたウイーンの古きよき時代の雰囲気に満ち溢れていて素適です。それにブッシュほどには古めかしさを感じません。ただ難点はピアノが演奏、録音ともにだいぶ鈍いことです。これがイエルク・デームスならもっと良かったのにとどうしても思ってしまいます。

672 ヨゼフ・シゲティ(Vn)、ジョン・バローズ(Hr)、ミエツィスラフ・ホルショフスキー(Pf)(1961年/Philips盤) これは私が最初にLPを買って良く聴いた演奏です。CD化されて音が明瞭になったので益々好きになりました。晩年のシゲティは本当に素晴らしいです。音のひとつひとつに込められた意味深さが他のヴァイオリニストとは次元が違うからです。但しまるで禅の修業をしているかのような厳しい音は、普段流麗な演奏に慣れた耳であればあるほど受け入れ難いでしょう。しかし音楽愛好家がこの演奏を表面的な技術や音色の点でもしも敬遠したとしたら、大変な損失だと思います。ホルンのバローズはイギリス人ですがとても味が有り上手いです。ホルショフスキーもよく知られた名ピアニストです。このCDのカップリングは既記事のあの素晴らしいヴァイオリン協奏曲です。

901981_g イザベル・ファウスト(Vn)、トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(Hn)、アレクサンドル・メルニコフ(Pf)(2007年/ハルモニアムンディ盤) 最新録音盤ですが、過去の名盤を忘れさせるくらい気に入っています。実はこの演奏はピリオド楽器使用なのです。ヴァイオリンはガット弦。ホルンは19世紀製のナチュラルホルン。ピアノも19世紀製のベーゼンドルファーだそうです。ブラームスは元々この曲をナチュラルホルンで演奏することを指定していますが、この演奏を聴くと実に納得させられます。第2、第4楽章などを聴いていると、まるで狩の風景を目の当たりにしているようです。

イザベル・ファウストは最近知った若手の女流ヴァイオリニストですが、パガニーニコンクールで優勝する位に腕は確かです。活動は大曲だけでなく室内楽を多く行っていて、その辺りにもとても好感が持てます。ピアノのメルニコフも非常にこだわりのある人で、自分で19世紀製のピアノをさんざん捜し歩いたのだそうです。フォルテピアノに近い柔らかい音が何ともいえません。ホルンのズヴァールトはフライブルク・バロックオケの首席奏者なので抜群に上手です。このCDは3人のこだわりと曲への愛情で一杯ですが、肝心の演奏も学究的な退屈さとはかけ離れて、楽しさに満ち溢れた実に魅力的な演奏なのです。特に第3楽章の虚無感と寂寥感、第4楽章の胸が高鳴る躍動感など、かつて聴いたことの無いほどの感動を覚えてしまいます。ということで私はすっかりこの演奏にはまってしまっています。

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ブラームス クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115

ブラームジアーナー(ブラームスの音楽を理屈抜きで愛してしまう人)にとっては、おそらく彼の室内楽が一番大切なのではないでしょうか。一人で悶々と(男性ならしかめつらをしながら)その音楽を聴く姿はいかにも「我はクラシックファンでござい」という雰囲気丸出しで実に良いではないですか。(^^)

さて冗談はさておき、ブラームスの室内楽作品の本丸はピアノを伴う作品群です。管楽器+ピアノ入りも加えれば大半の曲になります。ところが、彼の室内楽の最高傑作を選ぶとすれば、私なら迷うこと無く「クラリネット五重奏曲」ロ短調 op.115を挙げます。多分に民族(ジプシー)音楽の影響を受けたこの作品は、明るい部分がおよそ無くてブラームス愛好家を喜ばすには最高の曲ですが、さりとて聴いていて陰鬱になるかというとそんなこともありません。懐かしく哀愁ただよう音楽でも決してマーラーやショスタコーヴィチの音楽のように悲劇的な悲しみとは違うのです。だからゆったりと落ち着いた気分で聴いていられます。

この曲は四楽章とも全て傑作なのですが、私が個人的に好きなのは第三楽章です。最もジプシー的なメロディは何度聴いてもしびれてしまいます。

404 レオポルド・ウラッハ/ウイーンコンツェルトハウスSQ(1952年/ウエストミンスター盤) この曲の名盤というと昔ならウイーンスタイルのウラッハかドイツスタイルのケル/ブッシュSQと言われました。ケルがすっかり忘れられた存在なのに対して、ウラッハは今でも決定盤として必ず上がります。それは演奏スタイルが古いと言っても逆にこの曲の懐古的な雰囲気がより感じられる結果になって、抗しがたい魅力に溢れるからでしょう。私はウラッハのクラリネットももちろんですが、第一ヴァイオリンのアントン・カンパーの弾き方が大好きなのです。第三楽章のメロディのゆっくりとした歌わせ方、繰り返しの際に加わる装飾音の生かし方が最高です。こんな弾き方をしてくれる人は他にはちょっと居ません。第一~第二楽章も同じように素晴らしいのですが、欠点は終楽章がちょっと柔らかすぎて立体的な迫力に不足することです。それが味なのかもしれませんが、第一楽章にはそれを感じさせませんからここはやはり残念。なにはともあれ、この演奏を抜きにこの曲は絶対に語れません。

P1000258 レジナルド・ケル/ブッシュSQ(1938年/EMI盤) その昔の対抗馬です。今聴くとさすがに古臭く感じてしまいます。ケルは今ではとても考えられないような自由自在さでデフォルメして吹いています。ですが昔のヴィルトオーゾ風の名人芸には違いなく、この曲なら許せると思わないでもありません。アドルフ・ブッシュは私の大好きなヴァイオリニストなのですが、この曲に関してはカンパーのほうがずっと好きです。

240 レジナルド・ケル/ブッシュSQ(1948年/Music&Arts盤) これはニューヨークでのライブ録音。ブッシュは戦中に米国に渡ってからは、昔のドイツの伝統を守りながらも新時代の感覚を少しづつ取り入れて行ったので個人的には古めかしいポルタメントを多用するSP録音時代よりも好んでいます。なのでこの演奏には大いに期待したのですが、1938年盤とほとんど変わりがありませんでした。このCDのカップリングであるVnコンチェルトについては既記事の通り名演です。

Cci00034 デヴィット・オッペンハイム/ブダペストSQ(1961年/CBS SONY盤) 私の最も好きなカルテットであるブダペストも録音を残しています。このカルテットは我が尊敬する中野雄さんにすら「すでに忘れられた存在」と公言されているほどですが、断じて異論を唱えたいと思います。「20世紀の歴史上最も偉大なカルテットである」とです。ただし彼らの余りに求道的な厳しい音が現代人の耳にはなかなか受け入れられ難いのも判ります。それについてはまたいつかゆっくりと書き記したいと思いますが、この演奏は実に素晴らしいです。第三楽章だけはウラッハ盤の綿々たる情緒に及びませんが、残る楽章、とくに終楽章の立体的な充実感は最高です。オッペンハイムはCBSのプロデューサーとしても有名だった人らしいですがプレイヤーとしてはほとんど知られていません。だがこのクラリネットは決して悪くありません。この演奏はウラッハ盤以外であれば私の一番の愛聴盤なのです。

130 アルフレート・プリンツ/ウイーン室内合奏団(1980年/DENON盤) 前述のウラッハ/ウイーンコンツェルトハウスは昔のウイーンフィルの団員達ですが、その後輩達にも当然新しい録音が有ります。これはG.へッツェル時代に名手プリンツが吹いた録音です。個人的にはへッツェルはモーツァルトの場合にはもう少し柔らかい情緒が欲しくなりますが、ブラームスにはほぼ満足できます。初めてこの曲を聴こうという方にもしもCDをお薦めするとしたらこれでしょうか。

ペーター・シュミードル/ウイーンムジークフェラインSQ(1993年/Plazz盤) もうひとつウイーンスタイルの演奏を。これはウイーンフィルのもっと新しい世代のプレヤーですから御馴染みでしょう。プリンツ盤とは演奏については互角だと思います。ですがどうせウイーンスタイルを聴くならやはり私はウラッハ盤を聴きたいということになってしまいます。 

他にはこの曲を何度も録音しているカール・ライスターも居ます。私はアマデウスSQとの演奏(グラモフォン盤)しか聴いていませんが、どうもアマデウスは苦手です。第一ヴァイオリンのブレイニンの大げさで演技的な弾き方に抵抗を感じてしまうからです。ファンはそれが良いと感じるようですが、私には大抵の演奏が駄目なのです。しかしライスターのクラリネットはさすがに素晴らしいです。

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ブラームスの室内楽(彼と作品について思うこと)

250pxjohannesbrahms 毎日確実に寒くなっています。東京の街路樹もすっかり色づいて正に晩秋の趣です。こんな頃に一人静かに楽しむ音楽はブラームス、それも彼の室内楽に勝るものは無いと思っています。何故か?季節のうら寂しさに負けて人恋しくなるというのに自分ひとり。生涯独身のブラームスもきっと一人で作曲をしながらも同じ心境だったに違いない(と勝手に決めつけている)(^^)。ブラームスの室内楽を聴いていると、そんな心の寂しさ、弱さ、優しさが痛いほど感じられてしまうのです。だから彼の音楽が好きなのです。私はやっぱりワグネリアンでは無くてブラームジアーナーです。(苦笑)

ブラームスは良く「完全主義者」と言われますが、まったくその通りだと思います。それも相当なものです。何故なら彼の作品にはおよそ駄作というものがありません。モーツアルトだってベートーヴェンだってそれほど面白くない作品は有ると思いますが(異論も有るでしょうが)、ブラームスに限っては面白くない作品はまず無いと言って良いです。どれほど自信作だけを正式作品として残したかが伺えます。

また彼の主要な作品の残し方はジャンル毎にちょっと異常なほどに整理統合されています。

グループA) 交響曲(4曲)、協奏曲(4曲)

グループB) ピアノソナタ(3曲)、バイオリンソナタ(3曲)、チェロソナタ(2曲)、ピアノ三重奏曲(3曲)、ピアノ四重奏曲(3曲)、ピアノ五重奏曲(1曲)

グループC) クラリネットソナタ(2曲)、ホルン三重奏曲(1曲)、クラリネット三重奏曲(1曲)、クラリネット五重奏曲(1曲)

グループD) 弦楽四重奏曲(3曲)、弦楽五重奏曲(2曲)、弦楽六重奏曲(2曲)

上記のグループは私のイメージで勝手に分けたのですが、それには理由が有ります。Aは管弦楽を伴う作品(管弦楽曲はここでは除いた) Bはピアノを伴う室内楽曲(ピアノ単独ソナタを含む) Cは管楽器を伴う室内楽曲 Dは純粋に弦楽だけの室内楽曲です。

これを見て感じるのは、ブラームスがいかに編成ごとに偏り無く、平均的に作品を残したかです。本人が「このジャンルは既に3曲書いた。だがこちらのジャンルはまだ2曲だ。ではこちらの作品を書こう。」などとウジウジと几帳面に考えながら書かないと決してこうはいかないと思います。ただそのような書き方もブラームスが古典的な作曲技法に長けていたからこそ可能だったのだと思います。当時のロマン派の革新的技法の音楽家では到底不可能なことです(というかそんなことは思いもしないでしょう)。でも良く見ると彼の最も得意なピアノを使う作品が微妙に他より多い事に気がつきます。やっぱり彼の心は生涯ピアニストだったのでしょう。

次回からはグループ毎に私の特に好きな室内楽曲と愛聴盤を順にご紹介させて頂きたいと思います。お暇とご興味の有る方は是非お付き合い下さい。

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サンクトぺテルブルク・フィル来日コンサート チャイコフスキー「悲愴」他

Cci00032_2 サンクトぺテルブルク・フィルが来日して「チャイコフスキーフェスティヴァル」と称してコンサートツアーを行っています。今日は、その初台オペラシティでのコンサートを聴きに行きました。プログラムは幻想序曲「ロミオとジュリエット」「ロココ風の主題による変奏曲」「悲愴交響曲」の3曲です。

指揮はユーリ・テミルカーノフ。彼は1988年にムラヴィンスキーの後を継いでこの楽団の常任になりました。ちょうど20年前です。その時にはこの楽団の名前はかの「レニングラード・フィルハーモニー」でした。

ムラヴィンスキー/レニングラードといえばもはや神格化された存在ですが、私の音楽人生最大の後悔といえばそのムラヴィンスキーを実演で聴いていないことです。しかし今ごろそう言っても始まらないので、いにしえの名楽団の現在を楽しむしかありません。

さて、そのコンサートですが、最初の「ロミオとジュリエット」からなかなかテンションの高い演奏を聞かてくれました。ムラヴィンスキー時代の研ぎ澄まされて怖ろしいほどの切れ味というのとは多少違いますが、弦も管も非常に凄みのある音は未だ健在と感じました。今年70歳になるテルミカーノフの棒(いやこの人はタクトは使わないが)(^^) は旋律の歌わせ方も堂に入っていてとても上手です。甘いメロディをたっぷりと味合わせてくれました。

次の「ロココ風の主題による変奏曲」は、独奏チェロがロシアの若手女流のタチアナ・ヴァシリエヴァ。とても上手いソリストでなかなか楽しめました。

そしてメインの「悲愴」ですが、演奏のテンションが益々上がり大変なものでした。そもそも第1Vnが9プルト18名、チェロが10名でコントラバスが同じ10名という編成自体もえらく分厚い弦楽の音を響かせましたが、それでいてアンサンブルの精度は非常に高く凄みがあります。この曲でも歌わせるべきところはたっぷり歌わせてくれるのが嬉しいです。そして第一楽章後半と終楽章のあの真のカタルシス!この曲はやはりこうでなければ。

やはりチャイコフスキーを聴くにはロシアの優秀な楽団に限ると改めて感じ入ったコンサートでありました。

さて、せっかくなのでここで私の愛聴盤をご紹介させて頂くことにします。

幻想序曲「ロミオとジュリエット」

877 ゲルギエフ指揮キーロフ管弦楽団(フィリップス盤) 私は現役指揮者の中ではゲルギエフが最も好きです。(というのもとっくに死んだ指揮者ばかりを聴いているから?)(^^) しかしこの演奏は実に素晴らしいです。切れの良さとロマンティックな歌わせ方がどちらも最高だからです。これは彼の「悲愴」の旧盤に組み合わされていますが、そちらの演奏もとても良いです。

交響曲第6番「悲愴」ロ短調 op.74

458 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送響(グラモフォン盤) 既にファンには良く知られた最高の「悲愴」。私は普段は偏執的?(^^)なほどに本場物の演奏を好みますが、これだけはハンガリー人とドイツオケとの有無を言わせぬ圧倒的な名演奏なのです。第一楽章や終楽章の有名な旋律がかつてこれほどまでに悲しく響いたことがあったでしょうか。断じて有りません。しかも極めてドラマティックな展開も正に最高です。「悲愴」が好きでもしもこの演奏を聴いていない方が居たらそれは一生の不覚ですぞ。

172 フェレンツ・フリッチャイ指揮バイエルン放送響(オルフェオ盤) 実はフリッチャイには上記のグラモフォン録音とは別に1960年のライブ録音が有ります。これは知る人ぞ知る、演奏だけをとればベルリン放送盤をも更に(!)しのぐ凄演なのです。録音も極上のモノラルですので聴いていると音の違いは気にならなくなってしまいます。演奏解釈はベルリン盤とほぼ同じで、ライブでの感興の高さが更に増すだけです。ベルリン盤のファンにはこちらも是非聴いて頂きたいところです。それにしてもフリッチャイは病気リタイア後に復帰してからは何という演奏を行っていたことでしょうか。しかし結局は早死にしてしまうのですが、世界の楽壇のなんとも大きな損失でした。

125 ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(ドイツグラモフォン盤) ここでこの演奏を外すわけにはいかないでしょう。これを初めて聴いた時、それまでカラヤンのゴージャスな響きに馴染んでいた学生(30年前の私です)の耳には非常にショッキングでした。脳天につきささるような鋭利な金管の響き、異常なほどに切れの良いリズム、徹底的に鍛え上げた凄みの有るアンサンブル。それでいていかにも自国の楽団でしか味わえないようなロシア風の歌いまわし。すっかりとりこになってしまいました。ムラヴィンスキーにはライブ盤も有りむろん素晴らしいのですけれど、このグラモフォン盤は原点と言えます。

他にも好きな演奏は幾つかありますが、この3枚はちょっと別格であるのです。

それにしても今日は帰り道が寒かったです。真冬になったら部屋の暖房をガンガンにしてチャイコフスキー三昧なんて生活が訪れるのももうすぐだなぁ(^^)

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モーツァルト クラリネット協奏曲&ピアノ協奏曲第27番

とうとう11月です。秋がいよいよ深まってきました。

私は秋の夜長にはブラームスを聴くのが大好きです。特に夜も更けてきたら彼の室内楽が一番。では昼間に聴くとしたら?私はモーツァルト。ただし晩年の曲を。特に「クラリネット協奏曲」K622と最後の「ピアノ協奏曲第27番」K595が良いのです。

晴れた日の秋の空。どこまでも抜けるように澄み切った青い空。果てしなく宇宙のかなたへまで繋がっている青い空。

そんな青空を眺めているとなんだか寂しくなってきます。ちっぽけな我々の命のはかなさとか自然界の永遠性だとか、なんだか良く分からないけれどそうことを嫌でも感じさせられてしまうからでしょうか。

このモーツァルトの晩年の2曲はそんな気分に実にふさわしいです。そして素晴らしい演奏があります。どちらもカール・ベームの指揮です。ベームにモーツァルトのこういう曲を振らせるとちょっと他の指揮者では真似のできないほどの深みが現れます。

「クラリネット協奏曲」イ長調K622

709_2  アルフレート・プリンツ独奏、ベーム指揮ウイーンフィル(ドイツグラモフォン盤)は、プリンツの素晴らしさももちろんですが、ベーム/ウイーンの演奏の素晴らしさに尽きます。文春新書「クラシックCDの名盤」の新版では中野雄先生が旧版の推薦盤ウラッハからこちらに変更されました。生意気のようだが私は昔からこの曲に限ってはウラッハよりもプリンツ(というかベームの)この演奏のほうが格段に好きでした。第1楽章の頭の弦のきざみを聴いただけで他の演奏とはまるで違います。柔らかくゆったりとしているが実に立派。人に依っては遅過ぎと感じるかもしれないですが、この曲の持つ永遠性の雰囲気を感じるためにはこの演奏が一番だと思います。そして第2楽章の天国的なまでの美しさ!もうとても言葉にはできません。

「ピアノ協奏曲第27番」変ロ長調K595

Cci00028ウイルヘルム・バックハウス独奏、ベーム指揮ウイーンフィル(DECCA盤)

ベームはこの曲をグラモフォンに再録音しています。それは独奏はエミール・ギレリスです。ベーム/ウイーンフィルの演奏だけで言えば録音も良いし互角の素晴らしさだと思います。しかしこの旧DECCA盤は1955年当時のウイーンフィルのおそらく録音で聴くことのできる最も魅惑的な響きを味わえる時代のかけがえの無い演奏なのです。DECCAには他にも親父クライバーの「フィガロの結婚」とか最高の録音が多く残されています。

ここでのバックハウスのピアノは正に彼岸の曲の彼岸の演奏です。宇野功芳先生が昔から「演奏を超越して直接曲自体と結ばれる、厳しいまでに純潔、純白な演奏だ」という風に推薦し続けている演奏ですが、全く異論が無いところです。(生意気だが師に異論を感じることは度々あります)(^^)

思えば私がモーツァルトに開眼したのはこの演奏でした。名曲喫茶で曲名も演奏者も分らずに耳にした瞬間に脳天に電気が走ったのです。慌ててカウンターに行ってみたらこのレコードでした。人間の直感というものはある時は全てを越えてしまうようです。

この録音は現在は先のブラームスのピアノ協奏曲第2番とカップリングになっています。2大名演が1枚のCDで聴けるとは何とも有りがたいことです。

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