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2008年10月17日 (金)

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ニ短調op.15 名盤

ブラームスはピアノ協奏曲を2曲書きました。2曲とも屈指の大作であり名曲ですが、特に第2番は古今のあまたのピアノ協奏曲の中でも最高峰だと思っています。けれどもこの第1番も、良い演奏を耳にしている時には第2番に負けないぐらいの傑作に思えてきます。

僕は以前、この曲の素晴らしい生演奏に接することができました。ラドゥ・ルプー独奏、ホルスト・シュタイン指揮バンベルク交響楽団の東京での公演です。ルプーは30年ほど前には「リパッティの再来」と呼ばれたりして随分と注目されました。その後は続々と出てくる若手の影に隠れてしまい、やや地味な存在となってしまいましたが、彼は非常に素晴らしいピアニストになっていたのです。第2楽章などは本当に心に染み入るようなデリケートなピアノで、まるで夜空の月明かりが雲の隙間から刻々と射したり隠れたりと移り行く様のようでした。事実、僕の心の中では本当に舞台のルプーを月明かりが照らしていたのです。

Cci00024ラドゥ・ルプー独奏、クルト・ザンデルリンク指揮バイエルン放送響(1990年録音/JOY盤) そのルプーには若い時代のDECCA録音も有りますが、実は米国のJOYレーベルという海賊CD-R盤にザンデルリンク/バイエルン放送響と組んだライブ演奏があります。このCDーRは録音も滅法良いですし、ルプーのあの実演での素晴らしいピアノをそのままに聴くことができます。しかもザンデルリンクの伴奏が実に素晴らしいのです。堂々とした遅めのテンポで極めて重厚であり、尚且つ情熱も兼ね備えていて非常に聴き応えが有ります。元々ブラームスはこの曲を交響曲にするつもりで書き始めたといいますが、なるほどブラームスの交響曲であの最高の演奏を行うザンデルリンクであればこその名演奏です。僕の最も愛聴する演奏ですが、いつか正規盤が発売されて広く聴かれて欲しいものです。

51p3ar0uel__sl500_aa300_ エレーヌ・グリモー独奏、クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ベルリン(1997年録音/エラート盤) ザンデルリンクはこの曲を女流ピアニストのエレーヌ・グリモーとも録音を残しています。オーケストラはSKベルリンですが、またしても他の指揮者とは全く次元の違う名演奏を行っています。重圧な響きが最高で、その点ではバイエルン放送響以上かもしれません。そしてグリモーのピアノがまた本当に素晴らしいです。まだまだ若い女流奏者であるにもかかわらず、このように立派で美しく、渋みをも感じさせるブラームスを弾けるとは何とも驚きです。正規録音盤の中では僕の最も好きな演奏ですし、ルプー盤に限りなく肉薄しています。

この2つの演奏が余りにも素晴らしいので、他の演奏はどうしても分が悪くなりますが、幾つか好きな演奏が有るのでご紹介しておきます。

3201100130 ルドルフ・ゼルキン独奏、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1968年録音/CBS SONY盤) 硬派の二人の組み合わせです。いかにもドイツ風の真面目なピアノのゼルキンに、少々堅苦しさは感じるものの、いつものスタジオ録音よりはずっと気合の入ったセルのオケ伴奏が聞けます。男性的で力強いですが、激しさと抒情性の両方を持ち合わせた素晴らしい演奏だと思います。ですので、これも非常に好んでいます。

Untitl3 アルトゥール・ルービンシュタイン独奏、ズービン・メータ指揮イスラエル・フィル(1976年録音/DECCA盤) これは宇野功芳先生も推薦していました。ルービンシュタイン晩年のピアノはいかにも大家らしく非常に味わいが深く、ゆったりとした気分で聴くことができます。欠点は、技術的に衰えを感じることと、少々お気楽な雰囲気で暗さに欠けること、第3楽章での迫力不足でしょうか。ですがそれらを超えた魅力を感じるので、これも大好きな演奏です。

035 イヴァン・モラヴェツ独奏、イルジー・ビエロフラーべック指揮チェコ・フィル(1989年録音/スプラフォン盤) この演奏も素晴らしく味わいが有るので大好きです。モラヴェツはチェコ出身のピアニストの中でもテクニシャンですが、それ以上に自由自在な表現でニュアンスの豊富なピアノが極めてユニークです。それは、まるで落語か講談の名人の語りを聞いているかのようです。ですが、それでいて少しもわざとらしい嫌味は感じられず、しっかりとしたブラームスの深い味わいがあります。

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ブラームス(協奏曲:ピアノ)」カテゴリの記事

コメント

私自身、正直なところブラームスのピアノ協奏曲はどうも苦手であまりCDは持っていませんが、その中で1番の録音で繰り返して聴いてみようと思うCDが2枚あります。
①ホロヴィッツのピアノ独奏、ワルター指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1936年録音)
②伊藤恵のピアノ独奏、朝比奈隆指揮新日本フィルハーモニー交響楽団(2000年録音)
どうも私は正統的な聴き手でないようです・・・。

投稿: オペラファン | 2008年10月17日 (金) 23時51分

オペラファンさんコメントありがとうございます。

いや、何が正統的かなどとは非常に難しい問題です。私は以前HMVのレヴューでギレリスの演奏が良いか悪いかとある方と半ばけんか腰でやりあった事が有ります。若気のなんとやらです(苦笑)。結局は人の好みではないでしょうか。

投稿: ハルくん | 2008年10月18日 (土) 00時18分

こんにちは。ブラームスのピアノ協奏曲は2曲とも大好きですが、第2番に比べて、第1番の記事にはコメントが少ないですね。やっぱり2番の方が人気があるのでしょうね。
この第1番は若々しくて疾風怒濤のようなところがあって、2番に劣らず(それ以上かも)好きで、20種類くらいは聴いていますが、ベストというのはなかなか決めがたい曲なのです。

最近聴いたなかでは、アラウのライブ録音(クーべリック指揮バイエルンン放送響)、スティーブン・ハフ(A.デイヴィス指揮BBC響)がかなり良いと思った演奏です。音は悪いですがカッチェン&コンヴィチュニー/ゲヴァンドハウス管のライブ録音も好きですが、これは個人的な好みがとても強く影響してます。

ギレリスの第1番は、この曲を初めて録音したそうで、やはりピアノが弾きこなれていない印象を受けました。第2番も明るい陽光が差し込まずに、暗い色調のように感じます。私もギレリスのブラームスは苦手です。

投稿: yoshimi | 2009年5月14日 (木) 23時47分

yoshimiさん、はじめまして。
コメントをありがとうございます。

アラウ/クーベリックは聴いていませんが、組合わせからしてもベストを狙うで演奏であろうことは想像できます。
ハフ/Aデイヴィスはやはり未聴です。
カッチェン/コンヴィチュニーは名演だと思います。カッチェンにはモントゥー/ロンドンとのスタジオ録音もあり、そちらも捨てがたい味わいが有ると思います。

しかし私としては、このシンフォニックな曲を心底味わうには、記事で紹介したザンデルリンクとルプー、グリモーの2種がやはりベストだと思ってはいます。

投稿: ハルくん | 2009年5月15日 (金) 01時10分

こんばんは。

ご紹介いただいたグリモーのCDについての記事を見にきました。
ブラームスのピアノ協奏曲は1番も2番もいまだ気に入った演奏を聴いたことがありません。
最近、ハイティンク+アラウの古い録音を手に入れ、これから聴くところです。アラウに期待しています。ハイティンクはまだ若いころなのでそんなに期待できないかもと思っています。
グリモーのCDはシュターツカペレ・ドレスデンではなく、ベルリンなんですね。ザンデルリンクなら期待できますね。これもこれからCDを探してみます。
ルプーとは意外なCDを評価されていますね。若いころの録音は昔聴いた覚えがあります。重厚な演奏だったように記憶しています。

投稿: sarai | 2011年1月16日 (日) 22時52分

saraiさん、こんばんは。

グリモーのCDが好きな理由の半分以上はザンデルリンク/SKベルリンの演奏に有ります。もちろんグリモーも非常に気に入っていますが。
ルプーのCD-Rももう20年前の演奏になりますが、これもやはりザンデルリンクの指揮が実に素晴らしいです。

アラウは最近クーベリック伴奏のライブ盤を入手しました。とても良い演奏です。他の何人かの演奏をまとめて続編を書こうと思っています。

投稿: ハルくん | 2011年1月16日 (日) 23時38分

こんにちは、saraiです。

ようやく、グリモーのCDを聴きました。ザンデルリンク指揮のオーケストラには圧倒されます。この曲で初めていい演奏を聴きました。グリモーも第1楽章後半あたりから、非常にロマンチックに詩情豊かな演奏、あれっと思ったら、これはライブ盤だったんですね。特に第2楽章の陶酔するようなピアノがよかったです。
ところで、この曲がこんなにいいんならと思って、なかなか聴けなかったアラウ盤(ハイティンク+コンセルトヘボウ)も合わせて聴いてみました。これまでアラウはジュリーニ盤を聴いていましたが、このハイティンク盤はアラウのピアノのタッチの美しいこと、この上なしって感じです。で、第3楽章の切れ味の素晴らしいこと、驚きました。やはり、ブラームスはいいですね。

投稿: sarai | 2011年5月21日 (土) 16時40分

saraiさん、こんにちは。

ザンデルリンクの指揮は、本当に素晴らしいと思います。外面的な迫力で言えば、たとえばヨッフム/ベルリンフィルのような演奏も有りますが、これほど内面から湧き上がるような充実仕切った響きは、ちょっと他に聴けないと思います。グリモーのピアノも大好きです。ライブ録音とは書いてありますが、演奏ミスが無いですし、録音日として二日間の記載があるので編集はされているでしょうね。
アラウはハイティンク盤は聴いていませんが、クーベリックとのライブ盤も中々素晴らしいですよ。

投稿: ハルくん | 2011年5月21日 (土) 17時20分

ハマりました、グリモーに!
この第1番の協奏曲はブラームスそのものです。
なんて素晴らしい演奏なのでしょう。
彼女のモーッアルトの23番がザンデルリンクとあるのですねぇ。聴きたくなりました。

投稿: まつやす | 2011年11月19日 (土) 21時18分

まつやすさん、こんにちは。

グリモーいいですよ。美人ですし。(笑)
この1番は本当に素晴らしい演奏だと思います。好きですね〜。
この他に聴いたCDについては次回記事にする予定です。

投稿: ハルくん | 2011年11月19日 (土) 22時57分

こんばんは。
グリモー盤を。中古屋の価格に納得できず値下げを待った日々^^
冒頭から深奥、余りに深奥で引き込まれます。普段は2番に手が伸びますが、久々に1番ルプー盤も聴かねば。

投稿: source man | 2012年1月16日 (月) 21時55分

source manさん、こんにちは。

グリモー盤お気に入られましたか。それは嬉しいです。毎回言ってはいますが、このザンデルリンクも本当に素晴らしいですからね。

1番も良い演奏で聴くと、2番と同じぐらいに感銘を受けますね。僕も最近は1番が以前にも増して好きなんですよ。

投稿: ハルくん | 2012年1月17日 (火) 08時23分

再びこんにちは。
我慢できなくなり、寝る前にルプー盤を。
丁寧に音を置きにいくかの如く弾く叙情性、特にソロが大半を占める2楽章はホールの残響も在って幻想的で強く印象に残りました。

投稿: source man | 2012年1月17日 (火) 09時33分

source manさん、こんにちは。

このルプー盤は、発売当時はメジャーショップで普通に買えましたが、最近は中古店でも滅多に見かけません。ホントに貴重盤ですね。

仰られるように2楽章が一番印象的です。1、3楽章ももちろん素晴らしいのですけれど。

投稿: ハルくん | 2012年1月17日 (火) 10時18分

ハルくんさん、こんばんは。 ブラームスの ピアノ協奏曲は 第1番も第2番も大好きで 良く聴いています。世間一般的には第2番の方が人気が高いですが、それは あの美しい 第3楽章があるためだと思っています。フィナーレ楽章は むしろ、第1番の方が私は好きです。CDは やはり グリモー/ザンデルリンク盤と アラウ/クーベリック盤が最高なのですが、もう1枚、 ケンプ/コンヴィチュニー/SKD という純正ドイツの演奏が忘れられません。このCDは モノラル録音ですが いつもより気合いの入ったケンプのピアノ。まだ東ドイツ時代の SKDの渋く、深い響き。コンヴィチュニーの "これぞ ブラームス"という音楽表現は 「素晴らしい!」の一言です。

投稿: ヨシツグカ | 2012年10月26日 (金) 21時59分

ヨシツグカさん、こんばんは。

2番も1番も甲乙つけるのは難しいですが、しいて言えば1楽章は2番が上かな。緩徐楽章の1番の2楽章と2番の3楽章では互角。終楽章は確かに1番かもしれません。となると2番の2楽章が余りますが、僕はこれがまた大好きなんです。となると総得点では2番が有利ということになりますが、全体の印象では良い勝負です。この2曲は本当に凄い!

ケンプ/コンヴィチュニー盤は聴いていませんが、コンヴィチュニーの演奏は確かカッチェンとのライブ盤を聴いた記憶があります。もちろん良かった印象です。

投稿: ハルくん | 2012年10月26日 (金) 23時09分

ハルさん
コメント返し早いですね。ありがとうございます。又、参加させて頂きたいと思います。

ブラームスの重厚感は本当素晴らしいですね。
ブラPコン1番も大好きな曲です。

グリモーは昔、聞いたのですがどうゆう訳か
手放してしまいました。エラートの音が気に入らなかったと思います。
又、聴き直して見ます。

私の好きな盤は、レオンフライシャーとセルの競演です。セルの出だしが圧巻です。
大音響で聴いています。 それでは又。。。

投稿: DICK | 2013年4月23日 (火) 18時35分

DICKさん、こんにちは。

ブラームスのP協はしいて言えば2番の方が好きですが、1番も実に素晴らしいです。

グリモー盤はザンデルリンクの伴奏がキーです。テンポが遅いので好みは出るかもしれませんが、僕は最高だと思っています。

セルはゼルキンの伴奏盤しか有りませんが非常に良いですね。

それではまた。

投稿: ハルくん | 2013年4月23日 (火) 22時17分

私はこの作品はアラウとクーベリックも非常に好きですが偶然手に入れたバレンボイムとクーベリックの非正規盤がもっとも好みです。壮年期で技巧の絶頂期のバレンボイムがとにかく元気でクーベリックにいささかも負けていません。ライブだけに微妙なテンポの揺らしもあり最初から最後まで一瞬も飽きません。二枚組で第二番もあります。おっとはじめましての挨拶を忘れました。

投稿: 薄暮の旅人 | 2013年4月30日 (火) 02時04分

薄暮の旅人さん、こちらへもコメントありがとうございます。

バレンボイム/クーベリックの非正規盤というのは聴いたことが有りません。お話を伺う限りとても良さそうですね。是非聴いてみたいものです。2番のほうも興味津々です。
貴重な情報をありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2013年4月30日 (火) 22時48分

ブラコン1番で、名盤といわれる10枚ほどのCD、LPを遍歴したきた私のイチ押しは、ミッシャ・ディヒターです。マズアのオケも素晴らしい。第1楽章終結直前の美しいメロディの伴奏が特にイイ。

投稿: ととろ | 2015年8月 7日 (金) 07時08分

ととろさん

ご紹介ありがとうございます。
ミッシャ・ディヒターの演奏は聴いたことが有りませんが、オケがゲヴァントハウス管というのは魅力ですね。ブラームスの演奏には最適の響きを持つ団体ですからね!
CDが通常のCDで廉価で出ていればもっと有り難いのですが。

投稿: ハルくん | 2015年8月 9日 (日) 00時51分

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