ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 名盤
ブラームスは弦楽器の為にも2曲の協奏曲を残しました。一つは言わずと知れたヴァイオリン協奏曲です。もう一つはヴァイオリンとチェロの為の二重協奏曲です。どちらも私の愛する曲なのです。どちらが好きかと訊かれると答えに迷います。まるで二人の女性を同時に好きになってしまった気分です。(単なる想像ねっ)(^^)
とは言えどちらか一つを選ぶとすればやはりヴァイオリン協奏曲のほうになってしまうでしょう。ちょうどめっきり冷え込んできた秋の夜長に楽しむにはまさにうってつけの曲です。「う~むブラームス!」とつぶやきながらウイスキーのグラスでも傾けたいものです。この曲も昔から色々な演奏を聴いてきましたので振り返ってみようと思います。
アドルフ・ブッシュ独奏、スタインバーグ指揮ニューヨークフィル(1943年録音/Music&Arts盤) 一番古い演奏ですが、ブッシュは私の最も好きなヴァイオリニストの一人です。宇野功芳先生も「この人のヴァイオリンは音楽そのものと言うよりも人間の心そのものだ」と書いていましたが、本当にその通りです。ただ私は個人的にはブッシュは1930年代のEMIへのSP録音時代よりもむしろ米国へ亡命した後の1940年代の演奏の方をより好んでいます。前時代的な余りに古過ぎるスタイルから戦後の時代につながるもっと普遍的な表現に変化したからです。この1943年のライブ盤は音も決して悪くないです。
ブッシュには更に後年のライブ録音も残っています。ハンス・ムンク指揮バーゼル管弦楽団(1951年録音/Music&Arts盤)です。しかし1943年盤と比べると録音が余りに悪いのとブッシュの腕もだいぶ衰えているので一応の記録としての価値しか無いと思います。
ジネット・ヌブー独奏、ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1948年録音/STIL盤) そのブッシュ晩年の演奏から遡ること3年前の有名な録音があります。僅か15歳の時にヴィエニャフスキ国際コンクールで優勝。その時の第2位が彼女より10歳以上も年上のオイストラフでした。この録音は29歳の時のライブ演奏であり、イッセルシュテット指揮の立派な伴奏のもとで激しく感情表現豊かに弾き切っています。実に感動的です。しかし彼女はこの翌年僅か30歳で飛行機事故に合い二度と帰らぬ人となったのです。なんということでしょうか。
ヨゼフ・シゲティ独奏、ヘルベルト・メンゲス指揮ロンドン響(1959年録音/Philips盤) 私の最も好きなヴァイオリニストの一人にヨゼフ・シゲティがいます。この人の晩年はまるで人間の心そのもののヴァイオリンを弾きました。たとえ弓がかすれようが音が少々汚くなろうが、この大ヴァイオリニストの演奏をじっと心の耳で聴きさえすれば比べるものの無い程に感動させられます。例えてみれば人間国宝の歌舞伎役者みたいなものです。
そして私の最も好きなヴァイオリニストの最後の一人はヘンリック・シェリングです。私は幸運にも30年前に東京文化会館でこの人の生演奏を聴いています。その時はリサイタルで、バッハの無伴奏パルティータやブラームスのソナタを弾いてくれました。彼の生の音は随分柔らかくとても肌理の細かい印象でした。全然力づくで楽器を鳴らしていないのに、自然に音がどこまでも広がってゆく感じです。だからあの広い文化会館のホールがまるで楽器全体であるかのような気がして、自分がそのヴァイオリンの箱の中で聴いている錯覚に陥ってしまったのです。ヴァイオリンのコンサートを聴いてあんな風に感じたのは後にも先にもこの時だけです。
シェリングの二度目のステレオ録音にドラティ指揮ロンドン響との演奏(1962年/Philips盤)があります。若々しく切れは良いのですが、後年の円熟した演奏と比べると個人的には余り惹かれません。
ヘンリック・シェリング独奏、ベルナルト・ハイティンク指揮コンセルトへボウ管(1971年録音/Philips盤) シェリング3度目のスタジオ録音盤です。この時代の彼はボウイングが非常に安定しているので音が美しく、ヴァイオリンのみで言えばとても好きなのですが、恐らくハイティンクの指揮に問題が有るのでしょう、オーケストラが余りに覇気に乏しいのでがっかりなのです。この頃のハイティンクの指揮にはほとんど感心しなかった気がします。
ヘンリック・シェリング独奏、ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1967年録音/オルフェオ盤) シェリングはこの曲は得意なので何度もコンサートで演奏していますが、その録音も海賊盤で幾つか出ていました。その中で私が最も気に入っていた演奏の正規録音盤が近年に出ました。絶好調のクーベリックの凄まじい伴奏に乗ってスタジオ録音とは別人の集中し切ったヴァイオリンを聞かせてくれます。3大Bを弾いて、この時代にこれほど心を感じさせるヴァイオリニストは居なかったと思います。精神性とテクニックの両立を見事に成し遂げているのです。ということで私のベスト盤はこのCDなのです。
他にもハイフェッツ/ライナー、ミルステイン/モントゥー、オイストラフ/クレンペラー、オイストラフ/セル、ムター/カラヤン、クレーメル/バーンスタインなども有るけれど普段あまり聴くことはありません。
皆さんの愛聴盤はさて誰の演奏でしょうか?お好きな演奏を教えて頂ければ嬉しい限りです。
補完記事「女神の饗宴 ブラームス ヴァイオリン協奏曲」http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/cat31753005/index.html
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