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2008年10月

ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 名盤

ブラームスは弦楽器の為にも2曲の協奏曲を残しました。一つは言わずと知れたヴァイオリン協奏曲です。もう一つはヴァイオリンとチェロの為の二重協奏曲です。どちらも私の愛する曲なのです。どちらが好きかと訊かれると答えに迷います。まるで二人の女性を同時に好きになってしまった気分です。(単なる想像ねっ)(^^)

とは言えどちらか一つを選ぶとすればやはりヴァイオリン協奏曲のほうになってしまうでしょう。ちょうどめっきり冷え込んできた秋の夜長に楽しむにはまさにうってつけの曲です。「う~むブラームス!」とつぶやきながらウイスキーのグラスでも傾けたいものです。この曲も昔から色々な演奏を聴いてきましたので振り返ってみようと思います。

240 アドルフ・ブッシュ独奏、スタインバーグ指揮ニューヨークフィル(1943年録音/Music&Arts盤) 一番古い演奏ですが、ブッシュは私の最も好きなヴァイオリニストの一人です。宇野功芳先生も「この人のヴァイオリンは音楽そのものと言うよりも人間の心そのものだ」と書いていましたが、本当にその通りです。ただ私は個人的にはブッシュは1930年代のEMIへのSP録音時代よりもむしろ米国へ亡命した後の1940年代の演奏の方をより好んでいます。前時代的な余りに古過ぎるスタイルから戦後の時代につながるもっと普遍的な表現に変化したからです。この1943年のライブ盤は音も決して悪くないです。

ブッシュには更に後年のライブ録音も残っています。ハンス・ムンク指揮バーゼル管弦楽団(1951年録音/Music&Arts盤)です。しかし1943年盤と比べると録音が余りに悪いのとブッシュの腕もだいぶ衰えているので一応の記録としての価値しか無いと思います。

Cci00030 ジネット・ヌブー独奏、ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1948年録音/STIL盤) そのブッシュ晩年の演奏から遡ること3年前の有名な録音があります。僅か15歳の時にヴィエニャフスキ国際コンクールで優勝。その時の第2位が彼女より10歳以上も年上のオイストラフでした。この録音は29歳の時のライブ演奏であり、イッセルシュテット指揮の立派な伴奏のもとで激しく感情表現豊かに弾き切っています。実に感動的です。しかし彼女はこの翌年僅か30歳で飛行機事故に合い二度と帰らぬ人となったのです。なんということでしょうか。

672ヨゼフ・シゲティ独奏、ヘルベルト・メンゲス指揮ロンドン響(1959年録音/Philips盤) 私の最も好きなヴァイオリニストの一人にヨゼフ・シゲティがいます。この人の晩年はまるで人間の心そのもののヴァイオリンを弾きました。たとえ弓がかすれようが音が少々汚くなろうが、この大ヴァイオリニストの演奏をじっと心の耳で聴きさえすれば比べるものの無い程に感動させられます。例えてみれば人間国宝の歌舞伎役者みたいなものです。

そして私の最も好きなヴァイオリニストの最後の一人はヘンリック・シェリングです。私は幸運にも30年前に東京文化会館でこの人の生演奏を聴いています。その時はリサイタルで、バッハの無伴奏パルティータやブラームスのソナタを弾いてくれました。彼の生の音は随分柔らかくとても肌理の細かい印象でした。全然力づくで楽器を鳴らしていないのに、自然に音がどこまでも広がってゆく感じです。だからあの広い文化会館のホールがまるで楽器全体であるかのような気がして、自分がそのヴァイオリンの箱の中で聴いている錯覚に陥ってしまったのです。ヴァイオリンのコンサートを聴いてあんな風に感じたのは後にも先にもこの時だけです。

シェリングの二度目のステレオ録音にドラティ指揮ロンドン響との演奏(1962年/Philips盤)があります。若々しく切れは良いのですが、後年の円熟した演奏と比べると個人的には余り惹かれません。

268ヘンリック・シェリング独奏、ベルナルト・ハイティンク指揮コンセルトへボウ管(1971年録音/Philips盤) シェリング3度目のスタジオ録音盤です。この時代の彼はボウイングが非常に安定しているので音が美しく、ヴァイオリンのみで言えばとても好きなのですが、恐らくハイティンクの指揮に問題が有るのでしょう、オーケストラが余りに覇気に乏しいのでがっかりなのです。この頃のハイティンクの指揮にはほとんど感心しなかった気がします。

814 ヘンリック・シェリング独奏、ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1967年録音/オルフェオ盤) シェリングはこの曲は得意なので何度もコンサートで演奏していますが、その録音も海賊盤で幾つか出ていました。その中で私が最も気に入っていた演奏の正規録音盤が近年に出ました。絶好調のクーベリックの凄まじい伴奏に乗ってスタジオ録音とは別人の集中し切ったヴァイオリンを聞かせてくれます。3大Bを弾いて、この時代にこれほど心を感じさせるヴァイオリニストは居なかったと思います。精神性とテクニックの両立を見事に成し遂げているのです。ということで私のベスト盤はこのCDなのです。

他にもハイフェッツ/ライナー、ミルステイン/モントゥー、オイストラフ/クレンペラー、オイストラフ/セル、ムター/カラヤン、クレーメル/バーンスタインなども有るけれど普段あまり聴くことはありません。

皆さんの愛聴盤はさて誰の演奏でしょうか?お好きな演奏を教えて頂ければ嬉しい限りです。

補完記事「女神の饗宴 ブラームス ヴァイオリン協奏曲」http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/cat31753005/index.html

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ブラームス ピアノ協奏曲第2番 名盤

ブラームスの残したピアノ協奏曲は2曲とも大曲です。どちらも演奏時間が50分を越える場合も有るほどで、そこらの半端な交響曲を軽くしのぐ雄大なスケールなのです。管弦楽は充実して響きは分厚く、2曲とも「ピアノ独奏を伴う交響曲」と呼べるでしょう。事実当時のウイーンの評論家(ハンス・リック)もそのように言っています。早い話が「交響的協奏曲(シンフォニックコンツェルト)」なのです。

私は高校生の頃、ブラームスの交響曲がとても好きになったのですが、ピアノ協奏曲についてはそれまで一度も聴いたことが無かったので、ある日レコードを買う決意をしたのです。ひとつの理由は当時新盤のギレリス独奏、ヨッフム/ベルリンフィルのLPが絶賛されたからでもありました。ところがいざそのレコードを聴いてみたが良く分かりませんでした。長すぎてつかみどころが無かったのです。でも今思えば、高校生の若造が一度聴いて理解出来るような曲だったら、とっくに世の中から飽きられていることでしょう。何度か聴きかえすうちにだんだん気に入り、いつかブラームスの中でも最愛の2曲になっていったのは言うまでもありません。

第2番は疑いなく古今のあらゆる協奏曲のジャンルの最高峰です。さしもの「皇帝」でさえもひれ伏すまさに「協奏曲の王様」でしょう。曲の構成もユニークな4楽章からなります。通常の3つの楽章に更にスケルツォが加わるのです。

第1楽章アレグロ・ノン・トロッポ ソナタ形式で長大でシンフォニック。ホルンのゆったりとしたソロにピアノの分散和音が寄り添う序奏からしてもうぐっときてしまいます。その後もピアノとオーケストラが丁々発止と渡り合って全く飽きさせることがありません。

第2楽章アレグロ・アパショナート 大海のように勇壮なスケルツォ楽章です。スケールの大きさはマーラーの交響曲のそれにも匹敵するでしょう。けれど曲想はいかにもブラームス風で魅力充分です。

第3楽章アンダンテ ゆったりとした緩徐楽章です。秋も深まった頃に聴くと一層に味わい深いです。チェロのしみじみとした独奏が長々と続くのも大きな聞きものです。

第4楽章アレグレット・グラチオーソ 軽快なロンド楽章です。この曲を創作中の2回のイタリア旅行の影響があるので明るいとよく言われますが、そこはブラームスのこと。メンデルスゾーン先生のような脳天気な明るさには到底なりません。この曲は終楽章が軽やかなので聴き終った後にどっと疲労することがありません。もしもこの楽章が重々しい曲だったら、マーラーやブルックナーを聴いた後のように(良い意味で)どっと疲れ果てることでしょう。

Cci00028 私が一番愛してやまない演奏は宇野功芳先生ではないですが、やはりウィルヘルム・バックハウス独奏、カール・ベーム指揮ウイーンフィル(DECCA盤)です。晩年のバックハウスのピアノは実にしみじみとして美しいです。決して力で押しまくるようなことは無いけれども本当に立派なピアノです。最終楽章も軽快に飛ばすことなくゆったりと一音一音を慈しむかのように進む愉悦は他のピアニストでは決して味わえません。強いて不満を言えば、ベームの指揮は立派なのですが、ウイーンフィルの音がDECCA録音ということも手伝って透明感が有り過ぎる為に(音響的に)分厚さ感がやや不足することでしょうか。                  

Cci00027アルトゥール・ルービンシュタイン独奏、オーマンディ指揮フィラデルフィア管(RCA盤)の演奏も非常に良いです。最近は余り世評に登りませんが、バックハウスに次いで味わい深い名演奏だと思います。1971年という晩年の演奏だということもあるでしょう。オーケストラの音はやや明るめですが違和感を感じる程ではないですし、オーマンディのリズム感もずっしり落ち着いていてとても好ましいです。

Cci00025ルービンシュタインには1960年のライブ録音もあります。ロヴィツキ指揮ワルシャワフィル(Muza盤)です。この2枚組みCDは親切にもステージリハーサル(中断無し)と本番の両方の演奏が収められているのでとても楽しめます。ルービンシュタインの祖国ポーランドでの演奏会ですので、スタジオ録音とはまるで違った気合が入っています。ピアノのミスタッチが幾つも有るのはご愛嬌なのですが、ほとんど気にもなりません。

075 バックハウス、ルービンシュタインと来たら、ここはオールドファンの為にはルドルフ・ゼルキンに登場してもらうしかないでしょう。第1番と同じセル指揮クリーブランド管(SONY盤 CBS録音)とのコンビの演奏ですが、演奏自体はピアノもオケも第2番のほうが更に充実しています。1966年の録音なのでゼルキンのピアノがまだまだ若々しいです。壮年期のこの人の演奏は確かに気迫がもの凄かったです。

035 第1番と同じ演奏家が並んでしまうのは申し訳ないですが、このイヴァン・モラヴェッツ独奏、ビエロフラーヴェック指揮チェコフィル盤も大好きです。ここでも(テクニックだけでない音楽的な)名人芸を披露していてとても惹かれます。録音もデジタルで非常に良いのも嬉しいです。

さて、ところで私が高校生の時代に愛聴したギレリス、ヨッフム盤が出てこないのは、すっかり嫌いになってしまったからです。第1番と同じ理由ですが、ベルリンフィルの咆哮が必要以上に騒々しいし、ギレリスのピアノもデリカシーに物足りなさを感じるからです。どうせこの両者の演奏を聴くなら、このグラモフォン録音の半年後にオケをコンセルトへボウに変えてのライブ録音があります(AUDIOPHILE盤)。ベルリンフィルほど騒々しくないのでよほどましだと思います。

しかし今でもギレリス盤は世評は高いですし、実際一般的に見れば、音楽に滋味を求めるバックハウス派と迫力を求めるギレリス派に二分されている気がします。残りはポリーニ/アバド、ツィマーマン/バーンスタイン、アラウの新旧録音、ブレンデル/アバドなどの少数派閥に分かれるでしょう。

みなさんはどの演奏がお好きですか?好みは人それぞれなので、この曲を愛する人のご意見、感想であればどのようなことでもお訊きしたいと思っています。だってこの曲、本当に大好きなのですから。

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国立劇場で歌舞伎「大老」

3326_1 国立劇場へ歌舞伎を観に行きました。演目は「大老」です。言わずと知れた井伊直弼の半生記です。井伊大老といえば、今年のNHK大河ドラマの「篤姫」でも非常に存在感の有る役どころであったので皆さんも記憶に新しいところだと思います。

歌舞伎といっても作家は昭和の劇作家北條秀司なので、台詞はほとんど時代劇調でとてもわかり易く、私のような歌舞伎初心者にはとても有り難いのです。(^^)

3326_2_2 彦根でのんびり暮らしていた井伊直弼が兄の突然の死により家督を相続し、大老として国政を担うことになり、国家存亡の危機に直面した我が国を米国と通商条約を結ぶことで欧米列強国の植民地になることを防ごうと奮闘するのですが、水戸藩を中心とする攘夷派と争って、最後は結局桜田門外で暗殺されてしまいます。その彼の半生を、心の葛藤や妻お静の方との情愛を交えて見事に描き出していて大いに楽しめました。

井伊直助役は中村吉右衛門で、その迫力ある演技には圧倒されました。特に最後の暗殺される直前のお静と二人きりの場面で「生まれ変わったらお前とのんびり静かに暮らしたい。大老には絶対になりたくない。」という語りにはとても感動させられました。

さすがに国立劇場は劇場として格調が高いので、このような演目にはふさわしいです。一方で歌舞伎座の庶民的な芝居小屋の雰囲気もまた捨てがたい良さが有って好きです。両者の違いを味わうのもまた楽しいものです。

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ブラームス ピアノ協奏曲第1番 名盤

ブラームスはピアノ協奏曲を2曲残しました。どちらも屈指の名曲なのですが、特に第2番は古今のあまたのピアノ協奏曲の中でも最高峰だと思います。とは言えこの第1番も良い演奏を耳にしている時には第2番に負けないぐらいの傑作に思えてきます。

私は以前、この曲の素晴らしい生演奏に接することができました。ラドゥ・ルプー独奏、ホルスト・シュタイン指揮バンベルク響の東京での公演です。ルプーは30年ほど前には「リパッティの再来」と言われたりして随分注目されました。その後は続々出てくる若手の影に隠れてしまい、やや地味な存在となりましたが、実に良いピアニストになっていました。第2楽章などは本当に心に染み入るようなデリケートなピアノで、まるで夜空の月明かりが雲の隙間から刻々と射したり隠れたりと移り行く様のようでした。事実私の心の中では本当に舞台のルプーを月明かりが照らしていたのです。

Cci00024ラドゥ・ルプー独奏、クルト・ザンデルリンク/バイエルン放送響(1990年録音/JOY盤) ルプーには若いときのDECCAへの録音も有りますが、実は米国のJOYレーベルという海賊CD-R盤にザンデルリンク/バイエルンと組んだライブ演奏があります。このCDーRは録音も滅法良いし、ルプーのあの実演の素晴らしいピアノを聴くことができます。しかもザンデルリンクの伴奏が本当に素晴らしいのです。遅いテンポで非常に重厚であり尚且つ情熱を失わず、実に聴き応えが有ります。ブラームスは元々はこの曲は交響曲にするつもりで書き始めたといいますが、なるほどブラームスの交響曲であの最高の演奏を行うザンデルリンクであればこその名演奏です。私の最も愛する第1協奏曲の演奏なのです。

477 エレーヌ・グリモー独奏、クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレベルリン(1997年録音/elatus盤) ザンデルリンクはこの曲を女流ピアニストのエレーヌ・グリモーとも録音を残しています。オーケストラはSKベルリンですが、またもや他の指揮者とは全く次元の違う名演奏を行っています。そしてグリモーのピアノがまた素晴らしいのです。まだまだ若い女流なのにこのように立派で美しく、渋みをも感じさせるブラームスを弾けるとは何とも驚きです。正規録音盤の中では僕の最も好きな演奏です。

この2つの名演奏と比べるとどうしても分が悪くはなりますが、他にもいくつか好きな演奏が有るのでご紹介しておきます。

・イヴァン・モラヴェツ独奏、ビエロフラーべック指揮チェコフィル(スプラフォン) この演奏も素晴らしく味わいが有るので大好きです。モラヴェツはチェコのピアニストの中でもテクニシャンですが、その極めて自由な表現のピアノはまるで落語の名人の語りを聞いているようです。それでいてこの演奏はしっかりとブラームスの味があります。

・ルドルフ・ゼルキン独奏、ジョージ・セル指揮クリーブランド管(SONY) いつも硬派の二人の組み合わせです。いかにもドイツ風の真面目なピアノのゼルキンに、少々堅苦しいけれどいつものスタジオ録音よりはずっと気合の入ったセルのオケ伴奏で、これも非常に好きな演奏です。

・アルトゥール・ルービンシュタイン独奏、メータ指揮イスラエルフィル(DECCA) これは宇野功芳先生の推薦盤です。やはり大家のピアノは味わい深くゆったりとした気分で聴くことができる。欠点はややお気楽で暗さに欠けることと、第3楽章の迫力不足でしょうか。だがこれも好きです。

ついでに世評は非常に高いが私は好きでない演奏にも触れておきます。

・エミール・ギレリス独奏、ヨッフム指揮ベルリンフィル(独グラモフォン) 実は私が高校生の時に最初に聴いたのはこの演奏のLP盤でした。当時音楽雑誌で最高の演奏として紹介されていたからです。私も実際初めはとても気に入っていました。しかし時間の経過と共に、この余りに豪放に鳴りわたるオーケストラがブラームスには聞こえないことに気づいたのです。これではまるでワーグナーではないですか。ギレリスのピアノも音楽を一生懸命感じているかのように弾いているのですが、やっぱり表現力に限界があります。彼はロシアものを弾く時のようにはドイツものを繊細には弾けない。というのが私の正直な感想です。

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ブラームスの交響曲 名盤

ブラームスの交響曲の演奏で、いくら私がザンデルリンク/シュターツカペレ・ドレスデン盤が大好きだとは言っても、他の演奏を聴くことも有ります。今日はそんなCDをご紹介させて頂きたいと思います。

「第1番」 1番には案外と好きな演奏が多いのです。

416 クルト・ザンデルリンク/ドレスデンSK(TDK盤) ふざけているわけではありません。これは1973年の日本公演のライヴ録音でTDKから発売されています。実演のせいかセッション録音に比べて幾分テンポのゆれを感じますが、さすがはザンデルリンクで造形を損なうようなことは全くありません。全体に高揚感も充分で、特に終楽章の盛り上がりが素晴らしいです。楽団の魅力的なことは言うまでもありません。この生演奏を聴き逃したことは悔やまれますが、当時のドレスデンのライブ録音が残っているのは大変有り難いです。

262カール・ベーム/バイエルン放送響(オルフェオ盤)   1969年のライブ録音で、ベームのこの曲の録音の中で最も燃えに燃えている演奏です。ある評論家が「まるで阿修羅のようだ」と記述していましたが、とても上手い表現です。老境に入る前のベームがライブでひとたび燃え上がるとどれだけ凄かったかよく分かる最高の記録でしょう。但しその分、晩年の演奏に比べて音楽の翳りにはやや乏しい面が有ります。バイエルン放送の音色も幾分明るめに感じられますが、違和感は有りません。

Cci00014b_2 カール・ベーム/ウイーンフィル(ドイツグラモフォン盤) 1975年の日本公演ライブです。NHKホールのこの時の演奏はオールドファンの語り草となっています。バイエルン盤よりもゆったりとしたテンポでスケールが非常に大きいのですが、一方で高揚感も充分に有ります。また、ウイーンフィルらしからぬ重圧な響きも大変魅力的です。これは偉大なベームの最上の演奏記録だと思います。NHKの録音も低域まで充実して非常に優秀ですし、個人的にはバイエルン盤以上にこのウイーン盤を好んでいます。

Cci00014_2 ウィルヘルム・フルトヴェングラー/北ドイツ放送響(ターラ盤) 1951年のライブ。フルトヴェングラーのブラームス演奏はテンポを余りに揺らしすぎるので大抵の場合に曲の造詣が崩壊してしまいます。なので余り好みません。ところがこの演奏は例外的に余り違和感を感じません。むしろ凄い緊張感、集中力に惹き付けられてしまうのです。

241 ブルーノ・ワルター/コロムビア響(CBS SONY盤) 時には逆にこういうゆったりとした温かみの有る演奏を聴きたくなることがあります。オケの音の薄さも不思議と余り気になりません。ワルターの晩年のステレオ盤では2番と3番はいただけないのですが、この1番と4番はとても出来が良いと思います。

最後に大嫌いな(!)演奏をひとつだけ。

シャルル・ミュンシュ/パリ管(EMI盤) 宇野功芳先生が昔から推薦している演奏です。オケの派手な音(特に金管)とフィナーレの激しいアッチェレランドを聴くと腹が立つほどです。ブラームスをこんな風に演奏してもらいたくない最高(最悪の??)の見本です。一体この演奏のどこが「ドイツ風」であるのでしょうか。どうかご自分の耳で聞き比べてみて下さい。

「第2番」 2番には大変素晴らしい演奏があります。

773カール・ シューリヒト/シュトゥットガルト放送響(ヘンスラー盤) 1966年録音。大巨匠シューリヒト最晩年の貴重なライブでのステレオ録音です。この人は通常は早いテンポで颯爽としたイメージなのですが、ここではとても遅いテンポで全ての音符を慈しむように音楽を進めています。聴いていてしみじみとした味わいが胸にしみてきてたまらなくなります。第2番のこの演奏だけは、ザンデルリンク以上に好きなのです。ところがこの演奏、評論家はおろかシューリヒトファンからも全く無視されています。良い悪いといった評判すら聞いたことがありません。なぜだ!?私にとってはこれは音楽界の七不思議なのです。彼らが話題にするDECCAのウイーンフィル盤と比べてもブラームスとしてはこのほうが格段に素晴らしい演奏なのに・・・。どこかに誰か援軍は居ないものかなァ。

C0986599フェレンツ・フリッチャイ/ウイーンフィル(ドイツグラモフォン盤) ライブ盤。1963年録音なのにモノラルなのが残念です。第2番だけはウイーンフィルの透明感の有る音も悪くはないです。おそらくこの曲は4曲の中でもっとも叙情的な曲想を持っているからでしょう。フリッチャイは病気治療明けに、とてつもなく良い演奏をすることが有りました。結局は若死にしてしまうのですが、長生きしてベルリンやウイーンフィルを70年代まで振り続けることが出来たらどんな演奏をしたでしょうか。本当に悔やまれてなりません。

175 オイゲン・ヨッフム/ウイーンフィル(Altus盤) もうひとつウイーンフィルの良い演奏があります。1981年のベーム追悼演奏会のライブです。楽友協会大ホールの美しい響きを聞ける名録音だと思います。ウイーンフィルはスタジオ録音のスタンドマイク方式だと音の分離が良すぎてブラームスの厚い響きがどうしてもスカスカになりがちです。だがこの録音は音は美しいですが決して痩せていません。ウイーンフィルの音でこの曲をたっぷりと味わいたい場合には最適なディスクだと思います。ヨッフムの指揮もせかせかせずに堂々として非常に良いです。

「第3番」 残念ですが3番ばかりはザンデルリンク/ドレスデン以外には好きな演奏がありません。ドレスデンとの演奏としてもこの曲と第4番がとりわけ出来が良いので、他に気に入る演奏がどうしてもみつからないのです。近いうちに出るという、ザンデルリンクが晩年にウイーン交響楽団を振ったライブ盤は聴いてみなければならないですが。

「第4番」 この曲もザンデルリンク/ドレスデン以外にはありません、と言いたいところなのですが実は一つだけ有ります。

049_2 ワルター/コロムビア響(SONY盤) CBS録音。いかにもワルターらしい実に滋味に溢れた演奏です。オーケストラの音は薄く、迫力や重厚とさは無縁の、言い方を変えればとても室内楽的な響きです。ですが、何かとても懐かしさを感じる魅力的な演奏なのです。ですのでこれは時々聴きたくなるときがあります。ワルターのブラームスは1番と4番はとても好きなのですが、反面2番、3番は全く好きでは有りません。なかなか難しいところですね。

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