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2008年9月

2008年9月29日 (月)

ブラームス 交響曲全集 ザンデルリンク/ドレスデン国立歌劇場管 ~最高の名盤~

100ここ数日すっかり涼しくなってきました。いよいよブラームスを聴くのに良い季節です。しかし室内楽にはまだ早過ぎます。もう少し秋が深まるまでは大切にとっておきたいところです。今はまだ交響曲か協奏曲あたりを楽しんでおきましょう。

ブラームスの交響曲のCDは世の中に数え切れないくらい有ります。演奏も様々です。僕もブラームスを好きになった高校生時代から30年以上の間に随分色々と聴いてきました。最初は何も判らないからカラヤン。それにフルトヴェングラー、ワルター、ベイヌムと聴きました。そしてクナッパーツブッシュが凄いと聞くと当時は高価だった海賊盤LPも買ってみたものでしだ。

そんなある時、たまたま友達になったブラームス好きの家で、ひとつのレコードを聴かされました。それがクルト・ザンデルリンク指揮ドレスデン国立歌劇場管弦樂団(シュターツカペレ・ドレスデン)のブラームス交響曲全集だったのです。初版は確か日本盤も東独エテルナと同じ真白いジャケットにブラームスの顔が薄く描かれたデザインでした。

演奏を聴いて一発で参りました。これこそがブラームスかと思いました。それまで聴いたカラヤンやフルヴェンは何だったのだろうと。クナッパーツブッシュの巨大な演奏すら異型に思えました。それ以来このザンデルリンクのレコードを越える演奏にはお目にかかれません。この先ももう無理だろうと思います。この演奏は円熟期に入ったザンデルリンクが、絶頂期にあるシュターツカペレ・ドレスデンと組んだまさに一期一会の記録だからです。

それにしても当時のドレスデンは凄いオーケストラでした。弦楽は柔らかさとドイツ伝統丸出しのマルカートとを弾き分けて実に見事ですし、管楽の主席奏者達の上手さも比類が無かったです。フルートのヨハネス・ワルター、ホルンのペーター・ダムなどは当時のウイーン・フィル、ベルリン・フィルの名手達をもってしても音楽的な魅力で到底かなわないし、ゾンダーマンの叩くティンパニーはあの革張りの音と絶妙な合わせの上手さが最高でした。そして何より凄いのはそれらが全て溶け合ってあの正真正銘ドイツのいぶし銀の音になっていたことです。ウイーン・フィルの音が澄み切った絹ごし豆腐か更科蕎麦の味だとすれば、ドレスデンは最高に美味い木綿豆腐かやぶ蕎麦です。ブラームスにはウイーン・フィルよりもドレスデンの方がずっと合うと思っています。

しかしザンデルリンクの指揮があればこそ、この名演が可能になったのです。普通よりもずっと遅く微動だにしjないイン・テンポを守って、ずっしりと重厚なのにもかかわらず、音楽が推進力を失うことが無いのです。ブラームスの音楽の重厚さと心に秘めたる情熱、この両立が難しいのです。しかしこの演奏ではそのバランスがまさに黄金比なのです。

ザンデルリンクは後年にベルリン交響楽団と再録音を行っていますが、すっかり枯れてしまい、そこにはもうこの情熱と推進力は失われています。重すぎてもたれるのです。これを「真のドイツの音」だと世の評判は良いようですが、オケの質はドレスデンの敵では無いですし、残響の深い録音にずいぶん助けられているように感じます。果たして自分が70歳くらいになった時にはこの枯れた演奏のほうが良く聞こえることも有るのでしょうか?但し誤解が有るといけませんが、もしも旧盤の存在が無ければこの新盤は間違いなくブラームス交響曲全集としてはベストだと思います。それぐらい旧盤が素晴らしいだけなのです。

ということでブラームスの交響曲は4曲ともドレスデン盤以外は普段ほとんど聴きません。いぶし銀の音をどうしても聴きたくなるのです。その音を味わうには本当はアナログ盤がベストです。しかし現在のDENONクレスト1000のCDは20ビットのリマスタリングが非常に良く、アナログに充分肉迫しています。旧規格よりもかなり良いです。最近DENONはアンチェル/チェコ・フィルなんかを24ビットで新リマスタリングしていますが高音強調になってしまい必ずしも良くありませんので、今後の再発は余り期待はしていません。それよりもキングがハイパーリマスタリング盤で出してくれないでしょうか。あのシリーズは音がアナログ的で最高だからです。

(補足)
ブログ仲間のsource manさんの調査により、第2番のみはクレスト1000でも旧マスタリングのままだということが分かりました。

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2008年9月23日 (火)

プラハ室内歌劇場 2008日本公演 モーツァルト「魔笛」 

Pic169v_835e83c83g838b89e6919c8fe38日曜日に上野文化会館までプラハ室内歌劇場の来日公演を観に行きました。演目はモーツァルトの歌劇「魔笛」です。「魔笛」の実演を観に行くのはたぶん二十年以上ぶりです。昔は家でレコードを(CDでは無く)良く聴きましたし、ビデオ(DVDでは無く)でも良く観て楽しみました。最近は滅多に聴くことが無くなりましたが、生の公演に接するのはやはりとても楽しみでした。

指揮はマルティン・マージク。チェコ出身のまだ若い世代の指揮者ですが、歌劇場を主体に活躍しているようです。日本にも過去来日したことが有るようですが自分は知りませんでした。舞台演出はマルティン・オタヴァで、やはりチェコの演出家です。バイロイトでも演出を手掛けた(但しモーツァルト)経歴が有るそうですががやはり知りませんでした。

さて、いよいよあの胸躍る序曲が始まりました。古楽器使用のオケでは無いのですが、ビブラートを極力抑えた所謂「古楽器的な弾き方」です。その意味ではこの室内オケは中々に良いです。ただ最初のうちは音がまだまとまりに欠けていました。

Pic169v_835e83c83g838b89e6919c89e82舞台に次々に出てくる歌い手はチェコ出身の歌手がほとんどでしたが、これはまずまずでした。演出が奇をてらったものでないので自然に楽しめるところが嬉しいです。僕は最近はやりの前衛的な演出はどうも苦手だからです。夜の女王は第一幕の最高音がかすれたりはしましたが、全般的にまあまあというところ。他の歌手もまあまあ楽しめはしました。

ところが、休憩をはさんで第二幕に入ってからは、にわかにオケの音が美しく溶け合うようになり、歌手の出来も随分と良くなったので、すっかり舞台に惹きこまれました。歌手の誰かが突出して優れていることも無い代わりにデコボコが無く、自分としてはみな合格点と言って良いです。最後はすっかり「魔笛」を楽しめました。やっぱり「魔笛」は良いなぁ~!

943_3そして一日置いて家で「魔笛」のCDを久々に聴いてみたくなり、取り出したのは一番好きなスイトナー/ドレスデン歌劇場盤(オイロディスク/DENNON)です。最近主流の早いテンポの演奏を聴いた後だと意外にゆっくりに感じます。昔はこれでも随分早く感じたものなのですが。しかしこの演奏は好きです。きりりとしているのに楽器が溶け合って音が実に柔らかいのです。さすがはドレスデン。特にヨハネス・ワルターの吹くフルートは絶品です。このオペラではフルートは非常に重要な役割ですが、ワルターのフルートときたらまさに魔法の笛です。この人はいつも驚くほど大きくビブラートを効かせますが、音が実に柔らかく、まるでフラウトトラヴェルソみたいです。当時のドレスデンのトップ奏者の音の魅力はウイーンフィル以上だったと思いますが、中でもワルターは本当にほれぼれするほど上手です。この録音は歌手陣が決してベストとは言えないですし、皆歌い方が真面目すぎるとも感じます。けれどもオケも歌手も合唱も皆ひとつに溶け合って、実に伝統的で魅力的な演奏を聞かせてくれます。ですのでやっぱり一番好きな演奏です。

でも他にも好きな演奏はいくつか有りますので揚げておきます。

・ベーム/ベルリンフィル盤(DG)。ドイツオペラを得意とするベームの指揮は造形が立派で素晴らしいのですが、なんと言ってもドイツの名テナー、フリッツ・ブンダーリッヒの歌うタミーノが聞けるだけでかけがえが無い演奏です。ブンダーリッヒの歌はドラマティックで凛々しくて、本当にほれぼれします。

・サヴァリッシュ/バイエルン歌劇場盤(EMI)。オケの音がかっちりし過ぎて時々無機的に聞えるときもありますが、歌手全体はこれが一番好きです。パパゲーノのワルター・ベリーが最高だと思います。シュライヤーもタミーノを何度も歌っていますが、この頃が一番だと思います。夜の女王のエッダ・モーザーも抜群に良いです。

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2008年9月20日 (土)

ショパン ピアノ協奏曲第1番&第2番 ルービンシュタインのワルシャワ・ライブ ~隠れ名盤~

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今年の夏も終わりました。まだ秋というのには少々早い気もしますが毎日確実に涼しくなっています。今年もまたむし暑くなった6月頃からはボヘミア音楽ばかりをよく聴いたものです。でもさすがにそろそろ飽きてきました。(^^)  これから秋も深まってくるとブラームスがとにかく良い季節なのですが、今ごろはまだ中途半端な時期です。そこで今ごろ聴くのに丁度良いのがショパンです。僕はショパンを一年通して聴くことは無いのですが、時々聴きたくなる時期があります。

ショパンはソナタ2番、3番も好きですし、プレリュードもワルツもマズルカも良いです。そしてコンチェルトもとても好きです。実はこのコンチェルトには宝物のような演奏が有ります。アルトゥール・ルービンシュタインが祖国ポーランドで1966年に弾いたライブの第1番と第2番です。両方とも実に良い演奏ですが1番が特に素晴らしいのです。この人はRCAに相当な量の録音を残していますが、スタジオ録音だとどうもサロン的とでも言うかお気軽に弾く傾向にあります。上手いのですが、何となく(気分的に)余裕があり過ぎるのです。その点ライブ、とくに祖国の聴衆を前にした時の演奏では遥かに真剣勝負で弾くので本当に素晴らしいです。

この演奏は伴奏がヤン・クレンツ指揮ポーランド国立放送交響楽団です。まず第1番の導入部のオケ演奏から心がこもっていて実に良いのです。この曲のオケ伴奏のなかでも一番好きなほどです。そしていよいよルービンシュタインの登場なのですが、これがまだまだ決して枯れてなどいなくて若々しく男性的で少しも女々しくありません。それでいて心がこもり切っています。この演奏を聴くと、アルゲリッチやツィマーマンはもちろん、ルイサダ(の6重奏版は大好きなのですが・・・)ですらわざとらしく聞えてしまいます。表情づけが少々多すぎるのです。ルービンシュタインは過度に崩さず、本当にここぞというところでルバートさせます。それが演出ではなく心からのものなので聴き手の胸に響くのでしょう。但しスタジオ録音の場合だと、なかなかこういう感動は沸いて来ません。

2番には1960年に同じワルシャワで弾いた録音も有ります。そちらはロヴィツキ指揮ワルシャワ・フィルの伴奏でした。演奏はどちらも素晴らしく互角というところです。

このCDはスイスのPrelude & Fugueというレーベルがポーランド放送のライセンスで出した物で、現在も出ているかどうかは判りません。だから余計に僕のお宝盤なのです。スイスのレーベルだけあってCDジャケットに自国の画家パウル・クレーの絵を使っていますが、この演奏にふさわしいとても素適な絵です。

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2008年9月13日 (土)

ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 ~スメタナ四重奏団の忘れられない思い出~ 

Dvorak ドヴォルザークには、もう1曲どうしても外せない我が心の名曲が有ります。それは弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」です。

この曲は、ドヴォルザークが祖国チェコからアメリカに渡って作曲しました。ですので曲名が「アメリカ」です。曲には黒人霊歌やインディアンのメロディの影響が有り、ボヘミア民謡の影響とが上手く融合されています。この曲は、とてもノスタルジックで心を和ませてくれますので、仕事に疲れて家に辿り着き、ようやく落ち着いた時に一人で心静かに聴くには一番の、宝物のような曲なのです。

ところで、僕には忘れられない思い出が有ります。チェコの名カルテット、スメタナ弦楽四重奏団は、かつて何度も日本に来ましたが、僕は幸いにも二度聴くことが出来ました。その二度目のコンサートが一橋大学講堂での学園コンサートだったのですが、この時に彼らの「アメリカ」の生演奏を聴くことが出来たのです。それは本当に素晴らしい体験でした。

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ところが、それから数日後に、たまたま日生劇場でヤナーチェックのオペラ「利口な子狐の物語」公演が有って観に行ったのですが、何とそこに彼ら4人が一緒に観客として来ていたのです。僕はすかさず駆け寄って、彼らの学園でのコンサートを聴いたことを(下手な英語で)伝えると、とても喜んでいました。僕は当時、大学のオーケストラでヴィオラを弾いていたので、ヴィオラ奏者のミラン・シュカンパさんにそれを話すと、嬉しそうに大きな手で握手してくれました。このことは本当に忘れられません。

Cci00029彼らは「アメリカ」を全部で5回録音しています。時代と共にスタイルは少しだけ変りますが、全て名演です。中でも特に素晴らしいのは4回目の1980年の日本ツアーの際の神戸文化会館でのライブ盤です。技術の衰えは感じませんし、時に大きなルバートや音のタメが見られる、彼らとしては最もドラマティックに歌わせた演奏なのです。とは言っても、いつもの彼ららしく基本的に端正で、決して過剰に弾き崩したりをしません。彼らの演奏を聴いていると、他のアンサンブルがもっと歌って弾き崩した演奏(たとえばアマデウスSQのように)を聴いても、どうもしっくり来ません。このDENON録音のCDはこともあろうに廃盤扱いですが(メーカーは何を考えているのでしょう!)、中古店で時々見かけますので、「アメリカ」やスメタナ弦楽四重奏団がお好きな方には是非ともお聴き頂きたいと思います。

41zm8h2t6al__sl500_aa300_ それ以外の彼らの演奏としては、僕は1966年のEMI録音も愛聴しています。非常にスタイリッシュな演奏で、80年の神戸ライブのようなルバートや音のタメは有りません。従ってドラマティックさは余り感じません。けれども音が非常にしなやかですし、切れの良さや流れの良さが格別です。メンバーの技術的にも最も完璧です。ですので80年のライブと合わせて僕の大好きな演奏です。

307 彼らは、晩年の1987年にプラハの芸術家の家でスタジオ録音を行いました。80年の神戸ライブに比べると、技術的にだいぶ衰えを感じます。特に第1ヴァイオリンのノヴァークにそれを感じます。アンサンブルとしても明らかに結晶度が落ちています。けれども、つまらない演奏かと言えば決してそんなことは無く、80年ライブが無ければ充分に素晴らしい演奏ですし、他の多くの団体の演奏に比べても遥かに好みます。彼らのドヴォルザークの演奏は、本当にどれもが素晴らしいと思っています。

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2008年9月 6日 (土)

ドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調 名盤

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ドヴォルザークの曲には交響曲以外にも大変な傑作が有ります。それはチェロ協奏曲ロ短調です。個人的には古今のあらゆるジャンルの「協奏曲」の中でもブラームスのピアノ協奏曲第2番と並んで最も好んでいます(ただしモーツァルトの幾つかの協奏曲はまた別として)。

この曲はチェロ独奏、管弦楽パート共に壮大なスケールでありながら、叙情的でメランコリックなメロディが次から次へと現れては聴き手をいっぱいに魅了します。まさに美しいメロディの宝庫です。そして、曲全体がボヘミアの自然を想わせる雰囲気に満ち溢れています。ですのでこの曲を愛する人はとても多いのではないでしょうか。

それほどに溺愛をしている曲ですが、自分の愛聴盤はアナログLP盤時代も含めて、時と共に随分と移り変わってきました。それをご紹介してみます。

51saiqs3ijl__sl500_ ピエール・フルニエ独奏、ジョージ・セル指揮ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) フルニエのチェロはもともと大好きです。素晴らしいテクニックを持ちますが、それを少しもひけらかそうというハッタリを感じさせません。もちろん、それは聴き手によって好みの分かれるところだとは思います。この演奏はフルニエにしては非常にスケール大きく大胆に歌いきった名演奏です。そのうえ歌い回しのきめ細かさは後述のロストロポーヴィチやデュ・プレ以上ですので、ドヴォルザークの音楽にしっくりきます。セルの指揮するベルリン・フィルの音も、カラヤンの指揮のような違和感を感じさせません。

41x6lpk4qel__ss500_ ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ独奏、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1968年録音/グラモフォン盤) 僕がこの曲を最初に聴いたのは、このロストロポーヴィチ/カラヤン盤でした。最初はチェロのテクニックの上手さに仰天し、オケも凄いなぁーと思っていました。しかし後から天才デュ・プレのチェロを聴いてからは、ロストロ先生はどうもテクニックは凄いもののデュ・プレのようなひたむきな切実感が感じられない気がしてしまい、余り好まなくなりました。立派過ぎるのが曲想に合わないのかもしれません。カラヤンの指揮が粘り気味なのも音楽と違和感を感じさせます。ロストロポーヴィチには若い頃のターリッヒ/チェコ・フィルとの録音も有りますが、それもやはり期待外れです。

P_0227ジャクリーヌ・デュ・プレ独奏、ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ響(1970年録音/EMI盤) 天才女流チェリスト、デュ・プレの演奏との最初の出会いは、この録音でした。そして非常に感銘を受けました。歌い回しの雄弁さが圧倒的で、音の一つ一つへの精神的な思い入れが本当に凄かったからです。但しバレンボイムの指揮は、デュ・プレの凄さに比べると、特別に優れたものではありませんでした。現在改めてこの演奏を聴き直してみると、常に全力投球のデュ・プレの演奏には少々聴き疲れてしまいますし、ドヴォルザークの音楽にはもう少し癒しが欲しい気がします。

4120kqm4kjl__ss500_ ジャクリーヌ・デュ・プレ独奏、セルジュ・チェリビダッケ指揮スウェーデン放送響(1967年録音/TELDEC盤) デュ・プレのEMI録音盤には非常に感銘を受けました。けれども、更にそれを上回る感動を覚えたのは、EMI録音の三年前にチェリビダッケと残したライブ録音です。独奏、オケともこちらの方が更に優れていると思います。聴いているうちに手に汗握り、音楽に思わず引きずり込まれずにいられません。デュ・プレにはドヴォルザークの音楽の癒しというものは余り味わえませんので、ならばいっそ徹底仕切った演奏のこちらが良いと思います。

Cci00001 ピエール・フルニエ独奏、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1970年代録音/METEOR盤) 昔から有名なフルニエとセル/ベルリン・フィル盤はもちろん素晴らしい名盤なのですが、フルニエには海賊盤でクーベリックと共演したライブ録音が有ります。ライブ演奏の興感の高さと、円熟味が増していて、更に魅力的に思います。録音もなかなか良いのが嬉しいです。カップリングは交響曲第8番ですし、この海賊盤は中古店で見つければ¥600程度で買えます。この隠れた名盤はお薦めです。(注:第8番のほうはその後オルフェオから正規音源盤がリリースされました。)

51q93trcpel__sl500_aa300_ヨゼフ・フッフロ独奏、ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1975-76年録音/スプラフォン盤) フッフロ、ノイマン、チェコ・フィルと全てチェコの演奏家による録音ですので、本場ものの味わいをこよなく愛する自分にとっては決定盤になりそうな期待が有りました。ところが、フッフロはこのスケールの大きな曲には力量不足を感じます。ノイマンも幾らかぬるま湯的な演奏に終っているのが物足りません。それでも2楽章のとてもしみじみした味わいとチェコ・フィルの美しい音色には魅了されます。

Tsutsumi_dvorak堤剛独奏、ズデニェク・コシュラー指揮チェコ・フィル(1981年録音/CBS SONY盤) 僕は最近は独奏よりもむしろオーケストラの演奏に自国ボヘミアの味を求めるようになってしまいました。その点で非常に良い演奏が有ります。ズデニェック・コシュラーがチェコ・フィルを指揮して、独奏は我が国の名チェリスト堤剛の演奏です。プラハでのこの録音、SONYにはヨーヨーマという人気タレント盤が有りますから、こちらは完全に廉価盤となっています。廃盤も近いかもしれません。けれども、この曲の管弦楽パートに最もボヘミアの味わいや心に染み入るノスタルジーを求めたいと思ったら是非このCDを聴いてみてください。名指揮者コシュラーの実力の程を嫌というほど思い知らされます。堤さんの独奏チェロも充分に立派ですが、どちらかいうと自分を強く主張するよりも、チェコ・フィルの美しいオーケストラの音に溶け込んでいます。僕はこれはこれでとても好きです。(注:現在出ている廉価盤よりも旧規格CDのほうが間違いなく音が良いです。出来れば中古店でお探しください。)

ということで、現在はボヘミアの深い味わいとノスタルジーを最も強く感じることが出来る堤さん/コシュラー盤を他のどの演奏よりも愛聴しています。

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2008年9月 4日 (木)

ドヴォルザーク「新世界より」の愛聴盤 カレル・アンチェル他

569 先日の記事で「スプラフォンのアナログの音が懐かしい」と書きましたが、誤解が有るといけませんので書き加えますと、「懐かしい」というのはあくまで昔LPで親しんだ音に懐かしさを感じると言うことです。決してそれが当時の実際の音かと言われると余り自信は有りません。なぜなら自分は60年代のチェコ・フィルの生の音は耳にしていないからです。70年代の音はノイマン指揮で東京文化会館で実際に聴いていますが、管も弦も水のように澄み切った、それは本当に震えるほどに美しい音でした。80年代のデジタル録音はそれに近いような気がします。いくら指揮者が交代しても急にオケのサウンドが変るとも思えません。すると60年代のスプラフォン盤はあくまで録音上の音の個性なのかもしれません。

前置きが長くなりましたが、実は僕はドヴォルザークが大好きです。幾ら聴いても飽きません。作曲技法云々をしたらそれほど大したことは無いでしょうし、田舎音楽家と言えない事も無いかもしれません。でも、本当に好きなのですね。深刻過ぎず明る過ぎず、素朴で哀愁漂うメロディは、いつ聴いても心にひたひたと染み入ってきます。ですので、もしや自分の前世はボヘミアンだったのではないかと思う位です。(笑)

「新世界より」も一体どれほど聴いたことでしょうか。でもいつごろからか本国の演奏家以外はほとんど聴かなくなりました。昔はそれこそカラヤン、バーンスタイン、セル、ケルテス等々何でも聴きました。しかし結局、チェコの指揮者がチェコのオケを振った演奏とは味わいが異なって聴く気にならなくなったのです。それは他の曲についても言えます。

というわけで、「新世界より」の好きな演奏ベスト3は①アンチェル/チェコ・フィル(1961年録音)②ノイマン/チェコ・フィル(4種有りますが二度目の1981年録音がベスト)③ターリッヒ/チェコ・フィル(3種有りますが最後の1954年録音がベスト。現在は海外盤のターリッヒ・ゴールドエディションしかなくて、デジタルマスタリングが高音強調なのが玉に瑕です。同じ海外盤でもAADマスタリングの旧規格盤を中古店で捜すべきです。)

番外がコシュラー/スロヴァキア・フィルかな。おっともうひとつ番外にクーベリック/バイエルン放送響の1980年ライブ(オルフェオ盤)が有りました。DGのベルリン・フィル盤はとてもじゃないがオケの音が派手過ぎて聴いていられませんがこのバイエルン盤なら大好きです。

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