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2008年8月23日 (土)

ヴェルディ 歌劇「アイーダ」全曲 ムーティとアバドの名盤

先日、歌舞伎座で観劇した「アイーダ」のパロディ「野田版 愛蛇姫」の評判をネットで見てみると、感想は様々のようです。オペラを観たことの無い人も多く、「違和感を感じた」と言う人と「楽しめた」と言う人が半々かもしれません。またオペラの「アイーダ」を知っている人の中にも「壮大な凱旋の場面の再現には無理がある」と言う人も居ました。けれども自分はとても楽しめました。そもそもこれはパロディです。ここで壮大な舞台を求めるのは野田さんの意に沿わないと思います。ともかく観客の受止め方が様々なのが舞台芸術の面白いところですね。

それはさておき、僕はこの「アイーダ」というオペラが大好きです。ヴェルディの作品の中でも「オテロ」と並んでよく聴いています。伝統的なイタリアのオペラというと、歌い手達の妙技を順番に披露するスタイルですので、通常は1曲ごとに番号を付けた紋切り型の構成なのですが、ヴェルディ最円熟期のこの作品は、実に”器楽的に”ゆったりと曲と場面を移し変えながら進行してゆきます。それはまるでワーグナーの中期以降の作品のようです。このオペラはどうしても派手な凱旋行進の場面ばかりがクローズアップされてしまいますが、実際には管弦楽、合唱とも繊細で絶美なメロディとハーモニーの宝庫なのです。そして最後のアイーダとラダメスの二人がこの世へ別れを告げるシーンは非常に感動的です。愛し合う二人はもはや死をも恐れない。永遠にお互いの心が結びつくことを喜び、抱き合いながら最後の時を迎えるのです。

それでは、「アイーダ」のCD愛聴盤をご紹介しますが、僕が特に惹かれるのはムーティとアバドの数種類のディスクです。

Cci00031 リッカルド・ムーティ指揮ニュー・フィルハーモニア管(1974年録音/EMI盤)  この作品はオーケストラの演奏がとても重要です。オケが燃えないことには、どうしても退屈してしまいます。その点、リッカルド・ムーティが若い頃にEMIに録音した演奏は全体がはち切れるような生命感に満ち溢れています。それに加えて、歌手陣もカバリエやドミンゴ、コッソットなどの最高のメンバーたちで固められています。管弦楽がイタリアではなくイギリスのオーケストラであるのが幾らかマイナスですが、ムーティの熱い指揮がそれを補って余り有ります。

072 リッカルド・ムーティ指揮バイエルン歌劇場(1979年録音/オルフェオ盤) ムーティにはもう一つ1979年に彼がミュンヘンのバイエルン歌劇場に客演指揮した時のライブ録音盤がオルフェオから出ています。それは正に体から火の出るごとくに燃えに燃えた演奏で、その点ではEMIの演奏をも凌駕しています。トモワ=シントウ、ファスベンダー、ドミンゴらの歌手も水準以上ですが、最大の魅力はやはり全体の熱演ぶりです。正規録音のために音質も優れています。ですので僕はムーティではEMI盤とこのミュンヘン・ライヴ盤の両方を愛聴しています。

467クラウディオ・アバド指揮ミラノ・スカラ座(1972年録音/OPERA D'ORO盤)  ムーティも素晴らしいのですが、僕が全てのアイーダの演奏の中で最高だと思うのは、クラウディオ・アバドが1972年9月にミラノ・スカラ座を引き連れて、奇しくもムーティ盤と同じバイエルン歌劇場へ引越し公演をした時の演奏です。当時NHKもFM放送したらしいのでオールド・ファンには聴かれた方も多いと思います。残念ながら自分はその時には聴きませんでしたが、幸いなことに、現在マイナーレーベルのOPERA D'OROからライブCDが出ているので聴くことができます。録音は全体的に音ゆれやザラつきが有りますが、一応はステレオ録音ですし、この手のものとしては随分とマシな方です。管弦楽が生々しくうねり、スカラ座の圧巻の合唱と歌手が絶唱する、正に入魂の演奏です。イタリア・オペラの総本山が、いわばアウェーであるドイツの歴史有るオペラハウスで演奏するという状況が、このような尋常でない精神の高揚を生んだのでしょう。アバドはグラモフォンにスタジオ録音も行っていますが、演奏はずっとおとなしいので余り面白くは有りません。このライブがいつか正規録音盤で出ることを願ってやみません。
また、アバドとスカラ座は同年にミラノ、モナコでもほぼ同じキャストで公演を行い、別のマイナーレーベルからCDが出ています。

Verdi_515xo8kyiwl__sx425_sクラウディオ・アバド指揮ミラノ・スカラ座(1972録音/MYTO盤)  アバドがミラノ・スカラ座を引き連れて、1972年にミュンヘンへ引越し公演を行った同じ年の4月の本拠地ミラノにおけるライブ録音です。キャストがほぼ同じですしアバドとしても半年前の公演ということから演奏自体にはほとんど差が有りませんが、こと白熱度においてはやはりミュンヘン公演が一段上回る印象です。それよりもディスクとして大きく異なるのはこちらはモノラル録音の点です。ですので臨場感はミュンヘン盤に分が有ります。しかしミュンヘン盤が特に冒頭に音揺れが大きいのに対して、こちらは冒頭から音はかなり安定しています。そういう意味ではこちらのほうが聴き易いかもしれません。どちらを取るかは聴き手の好みになると思います。 但しMYTO盤の入手性は悪く、中古でもかなりの高額になるのを覚悟してください(私は運よくリーゾナブルな価格で入手できました)。

Verdio0354030711871012683 クラウディオ・アバド指揮ミラノ・スカラ座(1981年録音/グラモフォン盤) 前述のミュンヘンライブ盤のところでこのスタジオ録音は面白くないと書きました。それは事実です。72年のライブとは歌手のキャストが大きく入れ替りましたが、それが理由ではなく、やはりセッション録音でアバドが慎重になってしまいライブのようには熱くなれないということだと思います。オーケストラ演奏も静かな部分の美しさは良いとしても、凱旋の場面に代表される迫力を要求される部分での気の抜けたかのような生ぬるい演奏には不満が残ります。ただ「存在価値すら疑問を持たれる」とまで言っては少々言い過ぎでしょうか。

もちろん、ムーティとアバドの他にも大好きな演奏は幾つも有ります。トスカニーニ、セラフィン、カラヤン、メータなどですが、それらを名盤の続編として記事にしました。下記のリンクからご覧ください。
ヴェルディ 歌劇「アイーダ」 続・名盤

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コメント

初めてお邪魔します。
さて歌劇「アイーダ」は、おっしゃる通り第2幕第2場の凱旋の場面ばかりが有名で何か大変にぎやかなオペラのように思われているのは、大変遺憾です。このオペラの本当の真価は第3幕、第4幕だと思っています。私は特に第3幕が好きでアイーダの歌う「わが故郷よ」そしてアイーダとアムナズロそしてラダメスとの2重唱など、まさにドラマです。

ムーティのEMIは私が初めて手にした「アイーダ」の全曲盤で大変懐かしい。このレコードで初めてバリトンとカップッチルリを知り彼の声に聞き惚れた思い出があります。後年、彼はカラヤンと再録音しましたがムーティ盤のような迫力が無く、がっかりした記憶があります。
オルフェオのミュンヘンでのライブ盤、私も持っています。ライブのムーティの素晴らしさは言うまでもありませんが、特に私はアムネリス役のファスベンダーが印象に残っています。一度、彼女の歌う「ドン・カルロ」のエボリも聴いてみたいものです。

アバドの指揮したミュンヘンでのライブ録音は私は残念ながら持っていません。ぜひ捜し出したいと思います。たしか1973年のミュンヘンオリンピックを記念しての公演だったはずです。顔ぶれはアーロヨ、コッソット、ドミンゴだったかな?

たいへん長くなりました。今回はここまで。

投稿: オペラファン | 2008年8月25日 (月) 10時19分

オペラファンさん、ようこそです!
アバドのミュンヘンライブはご記憶の通り、アーロヨ、コッソット、ドミンゴです。それにギャウロウ、カップッチルリですよ。
輸入盤ショップでの入手はさほど難しくないと思いますので是非にです!

投稿: ハルくん | 2008年8月25日 (月) 22時54分

こんばんは。

アイーダ=劇団四季のCM、位の知識しかなく、一度聴いてみたいと思っていました。

ムーティ/NPO盤、といってもAngel/EMIハイライト版を入手。格安だったし、貴殿紹介ジャケットに似て素敵だし気軽に買ってみました。
エネルギーが在るし、あっという間に終わりました。

サッカー好きな私には...な曲も在るし、買って大正解。

投稿: source man | 2010年4月 4日 (日) 21時29分

source manさん、こんばんは。
いつも古い記事へのコメントをありがとうございます。

「アイーダ」のオペラは有名ですが、ヴェルディ晩年の大傑作だと思います。イタリアオペラの芸術性を非常に高めた作品であるとも思います。次回は是非全曲盤で聴かれてみることをお薦めします。他にもアバド、トスカニーニ、メータなど良い演奏が有りますので。世評に高いカラヤン盤は好みが分かれると思います。僕は余り好んでいませんけど。

投稿: ハルくん | 2010年4月 4日 (日) 23時45分

こんばんは。

先日ついに、ムーティ/MPO盤の全曲版を入手。
ジャケットが同じなので、貴殿所有盤です。素敵なジャケット

>なんといっても演奏全体が生命感に満ち溢れています

ハイライト版で解ってはいたのですが、最後まで、なんですね。CD2枚分あっという間に感じさせる位のパワーでした。

投稿: source man | 2010年5月 2日 (日) 23時05分

再び失礼します。

先程の、ムーティ/MPO→NPOの間違いです。
御免なさい。m(_ _)m

投稿: source man | 2010年5月 2日 (日) 23時08分

source manさん、こんばんは。

ムーティの全曲盤を購入されたのですね。このディスクは歌手陣が本当に充実していると思いますし、とにかく演奏が熱いですね。イタリアオペラはやはりこうでなくてはと思います。

投稿: ハルくん | 2010年5月 4日 (火) 00時04分

こんばんは。
ムーティ/Orfeo盤を入手し最近よく聴いてます。

>EMI盤とこのミュンヘンライヴと両方を愛聴しています。  

納得です。スタジオ録音EMI盤も良いけれど、ライヴならではの雰囲気が堪らないです。

投稿: source man | 2012年12月 1日 (土) 19時48分

source manさん、こんにちは。

ムーティのミュンヘン・ライブは良いですよね。アバドのミュンヘン・ライブがまた素晴らしい演奏なのですが、音質が劣るのが難点です。総合的にはやはりムーティ盤でしょうか。

投稿: ハルくん | 2012年12月 2日 (日) 14時03分

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