ブラームス(管弦楽曲)

2013年11月21日 (木)

ブラームス 「ハンガリア舞曲集」 イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管盤

ブラームスの「ハンガリア舞曲集」は、音楽にジプシー的な要素を強く求めるのであれば、ヨゼフ・ヨアヒムの編曲したヴァイオリンとピアノ版がベストではないかと前回書きましたが、ピアノ版もオーケストラ版もやはり魅力的なことには変わりがありません。

オーケストラ版については、ブログお友達のヨシツグカさんに教えて頂いた、アンタル/ハンガリー国立響盤も素晴らしそうなのですが、実は以前から聴きたいと思っていたイヴァン・フィッシャーのCDを入手しましたので、今回はこの演奏をご紹介します。

P1010070イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団(1985年録音/フンガロトン盤)

実は、このコンビはハンガリア舞曲集を2度録音していて、最初はハンガリーのフンガロトン・レーベルへの1985年の録音、2度目はフィリップスへの1998年の録音です。どちらにも共通する特徴としては、フィッシャーが編曲に手を加えていて、ジプシー・ヴァイオリンやツィンバロンといった民族楽器を多く取り入れていることです。当然ですが、演奏も通常よりずっと民族色が豊かであり、情緒的な旋律が哀愁を一杯に漂わせて歌われています。

それにしても、管弦楽版でもここまでジプシー風な演奏が可能なのかと感心させられます。元々この曲集はブラームス自身の管弦楽編曲は第1番、第3番、第10番の3曲のみであり、それ以外の曲は他の人の編曲ですので、それほど違和感は感じません。逆に新鮮味が増していて大いに楽しめます。

そこで次に、フンガロトン盤とフィリップス盤のどちらを取るかなのですが、フィリップス盤は試聴でしか聴いていないので確かではありませんが、フンガロトン盤に比べると、良く言えば「表情づけがより大胆」、悪く言えば「厚化粧に過ぎる」と言えそうです。音の造りもフンガロトン盤の方が軽みが有り、フィリップス盤には音の重さを感じます。このあたりは、初回録音と再録音の違いも有るのでしょうが、むしろ余り肩に力の入らないローカル・レーベル録音と、ワールドワイドにセールス展開されるメジャー・レーベルへの録音という違いから生まれているような気がします。ブダペスト祝祭管はフィッシャーの徹底したトレーニングぶりが想像される大変優秀なものです。弦楽器の切れ味や管楽器の上手さなどは申し分ありません。

不思議なことに、新しいフィリップス盤は既に廃盤扱いで、古いフンガロトン盤はいまだに現役盤です。派手に売ってさっさと廃盤にするメジャー・レーベルと、地道にコツコツと販売してゆくローカル・レーベルの対応の違いだとすれば、やはり後者の方が好感が持てます。もちろん、それだけではなく、音と演奏の傾向の違いから、あえて僕は旧盤を選んだだけのことです。録音は一般的には新盤の方が良いという評価になるのでしょうが、旧盤の素朴な雰囲気は好きです。といって音が悪い訳ではありません。れっきとしたデジタル録音ですし、単に音のダイナミズムがオーバーに付けられていないだけです。
このあたりは好みの問題でしょうから、どちらを選ばれても構わないと思います。

<関連記事>
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2011年11月16日 (水)

ブラームス 「悲劇的序曲」op.81 ~泣く序曲~

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ブラームスの管弦楽曲の中では、「ハンガリア舞曲集」を別とすれば、「ハイドンの主題による変奏曲」が最も頻繁に演奏されています。変奏曲の”鉄人”ブラームスの非常な傑作なのは間違いありませんが、もう一曲僕がとても好んでいるのが、「悲劇的序曲」です。この曲は作品番号80の「大学祝典序曲」と双子の作品81です。というのも、ブラームス自身の記述に、「陽気な”笑う序曲”(大学祝典序曲のこと)と対になる”泣く序曲”(悲劇的序曲のこと)を書こうと思う。」と有るからです。

「大学祝典序曲」は、ブラームスが大学から名誉博士号をもらった時に、大学への謝礼に仕方なく書いた明るい曲ですが、「悲劇的序曲」にはブラームスのアイロニーが感じられます。自分が書きたいのは本当はこういう音楽なんだよと、言わんばかりの様です。果たして、この「泣く序曲」は、素晴らしくブラームス的な傑作です。傑作揃いのブラームスの交響曲のどの楽章と比べても、聴き劣りしません。しかも僅か十数分の曲の中で音楽は完結しています。嵐のように緊迫した部分と、胸いっぱいに広がる懐かしい歌、淡々とした孤独な歩み、切羽詰まった追い込み、とこの曲はあたかも「小交響曲」にも例えられると思います。

もうひとつ、この曲の特徴的な点は「アウフ・タクト」です。元々、アウフ・タクトはブラームスの音楽の重要な要素ですが、この曲ほどそれが頻繁に、これでもかこれでもかと現れる曲は他に有りません。人によっては、それが「しつこい音楽」に感じられるのかもしれませんが、ブラームジアーナーにとっては、たまらない魅力となります。

2曲の序曲は、初めはピアノ連弾によってペアで披露されました。もちろん奏者の一人はブラームス自身ですが、もう一人はクララ・シューマンでした。その後、ベルリンで正式にオーケストラによる初演が行われた時にも両曲はやはりペアで演奏されました。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ベルリン・フィル(1960年録音/IMG盤) オリジナルはEMI録音です。僕は「20世紀のグレート・コンダクター」シリーズで持っていますが、現在はテスタメントの交響曲全集盤に収録されているはずです。これは実に素晴らしい演奏です。冒頭から緊迫感が凄まじい上に、リズムを刻むアウフ・タクトの処理がずっしりとドイツ的な重量感を感じさせるのに圧倒されます。中間部のロマンティックな歌いまわしも魅力的で惹きつけられます。ベルリン・フィルがまだカラヤンのカラーに染まる前なので音色も伝統的なドイツ風で素晴らしいです。同時期のベルリン・フィルとのブラームスでは交響曲1番も素晴らしいですが、それを更に上回る出来栄えです。

Walter3200081099 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1960年録音/CBS SONY盤) ワルター最晩年の録音にもかかわらず、かなりの熱気に包まれた演奏をしています。いわゆるドイツ的な剛直さでは有りませんが、リズムに迫力を感じます。にもかかわらず、どうも聴きごたえを感じないのは、オーケストラの厚みに不足するからだと思います。この曲は、シンフォニー以上に音の厚みを要求する為なのでしょう。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮バイエルン放送響(1961年録音/Scribendum盤) 以前はDENONから発売されていました。シューリヒトのブラームスは晩年のシュトゥットガルト放送響との交響曲2番を例外として、軽く颯爽と進む演奏で、重厚さとは無縁です。この演奏も快速で突き進み、リズムが完全に前に倒れています。張りつめた緊張感は凄いですが、普通の意味ではブラームスには聞こえません。ところが聴き終えたあとに凄いものを聴いたなぁと感心させてしまうのが流石シューリヒトです。

Brahms_monteux ピエール・モントゥー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1962年録音/TAHRA盤) ライブ演奏のモノラル録音ですが音質は良好です。演奏には気合が入っていて迫力充分です。中間部の歌いまわしにも心惹かれます。ただ、この人のブラームスはテンポに伸縮性が有るために、どうしてもドイツ的な剛直さを失うことになってしまいます。そこが、個人的にいま一つ好きになれない理由です。

416gjxaqwml__sl500_aa300_ クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/DENON盤) このコンビによるシンフォニーの演奏ほど絶対的な存在ではありません。もちろん徹底したマルカート奏法やイン・テンポで押し通す安定感は素晴らしいのですが、ザンデルリンクにしては速めのテンポで、ややスタイリッシュな印象です。白熱度にも物足りなさを感じます。この演奏には、SKドレスデンのいぶし銀の響きをゆったりと楽しめる点で、満足したいと思います。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1989年録音/グラモフォン盤) 遅いテンポでイン・テンポを守り、スケールの大きさを感じさせます。たたみ掛けるような切迫感は有りませんが、決して緊張感に欠ける訳ではありません。むしろ、アウフ・タクトの一音一音に念押しをする重量感がたまりません。中間部のじっくりとした足取りにも、ブラームスの情念が深く込められているかのようです。音楽の持つ底知れなさを余計に感じる演奏です。

学生時代に良く聴いたのはカラヤン/ベルリン・フィルでしたが、迫力と緊張感が凄かったと記憶しています。しかし、現在のマイ・フェイヴァリット盤は、ケンぺ/ベルリン・フィル盤です。次点としては、ザンデルリンク盤、ジュリーニ盤を上げたいです。

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2011年4月15日 (金)

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番ト短調 op.25(シェーンベルク編曲管弦楽版)

ブラームスの交響曲特集でのご紹介はもちろん4曲でしたが、実はブラームス・テイストのシンフォニック作品がもうひとつ有ります。「テイスト」と言ったのは、曲の素材はブラームスですが、料理人が別の人だからです。

ブラームスは多くの室内楽作品を書いていますが、とりわけ自身が演奏を得意としていたピアノを伴う作品には名曲が目白押しです。そのうちのピアノ四重奏曲第1番ト短調 op.25は、ブラームスがまだ二十代の時の作品ですが、非常に人気があります。以前、このブログでもブラームスの室内楽曲特集をした時に「ピアノ四重奏曲集」として記事にしたことが有ります。

Schenberg_2 この曲を大オーケストラ編成の管弦楽版に編曲したのは他ならぬアルノルト・シェーンベルクです。この編曲版は、今では日本のオーケストラの定期演奏会でも結構取り上げられて良く知られていますが、昔は滅多に演奏されてることが有りませんでした。僕は学生時代にFM放送された海外コンサートを録音して何度も繰り返して聴きました。

シェーンベルクの編曲は旋律線や曲構造、テンポが原曲にとても忠実です。ですので一聴してブラームスの曲と分かります。けれどもブラームスのシンフォニーでは余り目立たないトランペットや打楽器が多用されるので、響きはだいぶ近代曲風にアレンジされています。特に打楽器群は大太鼓、スネアドラム、シンバル、グロッケン・シュピールまで登場しますので、ブラームス風の渋い音とは全く異なっています。それでも原曲が名曲なので、別の楽しみを味わえるという点で僕はこの編曲版は大好きです。「一度食べて二度おいしい!」という感じですね。特に第3楽章の中間部で行進曲風に演奏される部分のド迫力といったら楽しくてスカッとすることこの上ありません。もしもブラームスの生まれたのが、もう50年あとだったら、こんな響きの曲を自分で書いていたかもしれませんね。

昔、僕が聴いたのは、グスタフ・クーンがシュトゥットガルト放送響を指揮したライブ演奏でした。オーケストラだけでなく、オペラや合唱曲なども幅広く指揮するクーンの演奏はとても良かったです。最近になっては余りこの曲を聴いてはいませんでしたが、タワーレコードが昨年、DECCA録音を廉価盤でライセンスCD化してくれました。それを交響曲特集のおまけとしてご紹介しておきます。

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TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION Vol.9

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クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮ウイーン・フィルハーモニー(1995年録音DECCA盤/ライセンス発売タワーレコード) 元々ブラームスの原曲も渋すぎない流麗さと若々しさを持つ音楽でしたが、シェーンベルクの編曲がそれに更に近代的な響きを加えていますので、ウイーン・フィルの音が実にうってつけです。ブラ―ムスの曲の良さと、シェーンベルクの編曲の良さを余すところなく再現しています。あらゆる部分でこれまで聴いていた音とは異なる新しい発見が有ります。特に終楽章の響きの面白さには「目からうろこ」の驚きです。ドホナーニという指揮者はこれまで特に魅力を感じることは有りませんでしたが、この演奏では見事にツボにハマっています。

ちなみにこのCDにはベートーヴェンの名作、弦楽四重奏曲第11番ヘ長調OP.95「セリオーソ」をグスタフ・マーラーが弦楽合奏に編曲したものの演奏が組み合わされています。こちらも良いのですが、面白さという点では何と言ってもブラームスのほうです。眼立たない貴重な録音をたびたびライセンス販売してくれるタワーレコードにはブラーボーを贈りたいと思います。

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2009年5月 3日 (日)

ブラームス 「ハンガリア舞曲集」 ハンス・シュミット=イッセルシュテット/北ドイツ放送響 ~ぶらりドイツの旅~ 

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フーテンのハルくんはノルウェーに別れを告げてから、スカンジナビア半島の南端からドイツへと海を渡り、ひとり旅を続けました。船で行き着いた港はハンブルグです。この北ドイツの港町はブラームスが生れた町として有名ですね。父親がコントラバス奏者という余り裕福ではない家庭に育ったブラームスは、家計を助ける為にレストランや居酒屋で小さい頃から得意のピアノを弾いてお金を稼いでいました。そういう店には、ハンブルグの港からアメリカへ移住するハンガリーからの避難民が多く来ていたので、小さい頃から異国的なハンガリー音楽に親しんでいたそうです。さらにはハンガリー出身のヴァイオリニストのレメーニと交友を持ったことが、益々彼をハンガリー音楽に近づけさせました。ブラームスの音楽の特徴の一つの哀愁漂う歌謡調のメロディは明らかにハンガリー音楽の影響です。

そんなハンガリー風音楽の代表作品といえばご存知「ハンガリア舞曲集」です。ブラームスは多くのジプシー音楽を楽譜に書きとめて、それをピアノ連弾用に編曲しました。それが、余りに人気が高かったことからブラームス自身や他の作曲家の手で管弦楽用に編曲されました。現在も観賞用や演奏会のアンコール曲として大変親しまれています。僕も大好きですので、珈琲などを飲みながらよく聴いています。

Cci00029 ハンス・シュミット=イッセルシュテット/北ドイツ放送響(1962年録音/ユニヴァーサルミュージック・フランス盤)

ブラームスの故郷ハンブルクには北ドイツ放送交響楽団という素晴らしい楽団が有ります。このオーケストラは戦後直ぐに創設されたのですが、ハンス・シュミット=イッセルシュテットやカール・シューリヒトという大指揮者の手によって鍛えられた為に、急速に非常に優秀な楽団に成りました。ブラームス作品はこの楽団の主要レパートリーの一つです。その初代常任指揮者であるSイッセルシュテットが指揮をした「ハンガリア舞曲集」の素晴らしい演奏が有ります やや古めかしい録音ですが、リマスタリングが良いので聴きにくいことは有りません。それよりもSイッセルシュテットの指揮が大変に素晴らしいのです。リズム感の良さと哀愁が漂う歌い回しが抜群です。全21曲が収められているのも嬉しい限りです。

さて、ハンブルグの港町でフーテンのハルくんは果たして憧れのマドンナとの出会いを果たすことが出来るのでしょうか。案外色っぽいジプシーの娘といい仲になってしまうのかも知れませんね。

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