ブラームス 「ハンガリア舞曲集」 イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管盤
ブラームスの「ハンガリア舞曲集」は、音楽にジプシー的な要素を強く求めるのであれば、ヨゼフ・ヨアヒムの編曲したヴァイオリンとピアノ版がベストではないかと前回書きましたが、ピアノ版もオーケストラ版もやはり魅力的なことには変わりがありません。
オーケストラ版については、ブログお友達のヨシツグカさんに教えて頂いた、アンタル/ハンガリー国立響盤も素晴らしそうなのですが、実は以前から聴きたいと思っていたイヴァン・フィッシャーのCDを入手しましたので、今回はこの演奏をご紹介します。
イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団(1985年録音/フンガロトン盤)
実は、このコンビはハンガリア舞曲集を2度録音していて、最初はハンガリーのフンガロトン・レーベルへの1985年の録音、2度目はフィリップスへの1998年の録音です。どちらにも共通する特徴としては、フィッシャーが編曲に手を加えていて、ジプシー・ヴァイオリンやツィンバロンといった民族楽器を多く取り入れていることです。当然ですが、演奏も通常よりずっと民族色が豊かであり、情緒的な旋律が哀愁を一杯に漂わせて歌われています。
それにしても、管弦楽版でもここまでジプシー風な演奏が可能なのかと感心させられます。元々この曲集はブラームス自身の管弦楽編曲は第1番、第3番、第10番の3曲のみであり、それ以外の曲は他の人の編曲ですので、それほど違和感は感じません。逆に新鮮味が増していて大いに楽しめます。
そこで次に、フンガロトン盤とフィリップス盤のどちらを取るかなのですが、フィリップス盤は試聴でしか聴いていないので確かではありませんが、フンガロトン盤に比べると、良く言えば「表情づけがより大胆」、悪く言えば「厚化粧に過ぎる」と言えそうです。音の造りもフンガロトン盤の方が軽みが有り、フィリップス盤には音の重さを感じます。このあたりは、初回録音と再録音の違いも有るのでしょうが、むしろ余り肩に力の入らないローカル・レーベル録音と、ワールドワイドにセールス展開されるメジャー・レーベルへの録音という違いから生まれているような気がします。ブダペスト祝祭管はフィッシャーの徹底したトレーニングぶりが想像される大変優秀なものです。弦楽器の切れ味や管楽器の上手さなどは申し分ありません。
不思議なことに、新しいフィリップス盤は既に廃盤扱いで、古いフンガロトン盤はいまだに現役盤です。派手に売ってさっさと廃盤にするメジャー・レーベルと、地道にコツコツと販売してゆくローカル・レーベルの対応の違いだとすれば、やはり後者の方が好感が持てます。もちろん、それだけではなく、音と演奏の傾向の違いから、あえて僕は旧盤を選んだだけのことです。録音は一般的には新盤の方が良いという評価になるのでしょうが、旧盤の素朴な雰囲気は好きです。といって音が悪い訳ではありません。れっきとしたデジタル録音ですし、単に音のダイナミズムがオーバーに付けられていないだけです。
このあたりは好みの問題でしょうから、どちらを選ばれても構わないと思います。
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