ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」ホ短調op.95 愛聴盤あれこれ

Dvorak2 スメタナがチェコ国民楽派の開祖なら、ドヴォルザークはそれを集大成した偉大な音楽家です。昔から僕はこの人の作品が大好きなのですが、特に「新世界より」は自分が一番最初にハマったクラシック音楽でした。第1楽章の序奏が静かに始まり、徐々に高揚して主部に移るまでの展開は実に見事ですし、中間部の落ち着きから終結部に再び追い込む緊張感は素晴らしいですね。第2楽章は歌詞まで付けられて「家路」として有名ですが、望郷の念に溢れる曲想には胸を打たれます。特に中間部の孤独感溢れる部分は言葉にならないほどです。「こりゃ失恋した後にはね、涙無しにゃ聞けないよ。あんたわかるかい?」(フーテンの寅さん?ハルくん?談) 第3楽章のスラブ舞曲風のスケルツォも楽しいですし、第4楽章の勇壮な主題はもう最高です。これぞクラシック。オーケストラを聞く醍醐味と言えるでしょう。後半はやや展開が単調になりますが、これはご愛嬌ということころでしょう。

何度もお話していますが、僕はこの手の国民楽派は自国の演奏家以外にはどうも興味が湧かないのです。かつてはバーンスタイン、カラヤンやケルテスといった指揮者でも聴きましたし、一般的にははケルテス盤などは非常に良い演奏だと思います。ですが最近は本当にボヘミア人がボヘミアの楽団を指揮した演奏以外はまず聴きません。それによって失うものよりも、逆に新たに見えてくるものがあると思っています。ということで僕の「新世界より」の愛聴盤をご紹介してゆきます。

Cci00050 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1949年録音/スプラフォン盤) チェコ・フィルを世界的な名楽団に育て上げたターリッヒの代表盤と言える名盤です。この時代にしては極上の音質なのも価値を失わない理由でしょう。現代の多くの演奏がいわば機械造りの陶器だとすれば、これは名人の手による逸品といった趣きです。造形の崩れは無いですが手造りならではの味わいに満ちています。多くのチェコの後輩指揮者が影響を受けた原点となる演奏と言えます。

Cci00050b ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1954年録音/スプラフォン盤) 何故か前述の49年盤が何度も再発売されてきた影に隠れてしまった新録音盤なのです。音質は更に優れていますが、管楽器や打楽器が前に出て聞こえるのはむしろ49年盤。なので一聴すると49年盤のほうが迫力が有るように感じられます。けれども音楽の深さと言う点では54年盤のほうが更に数段優れています。現在はターリッヒ・エディションという海外盤のみしか出ていませんが、これは24Bitのマスタリングが高音強調で音質的に感心できません。中古店で根気よく旧盤を探されることをお薦めします。

Cci00051 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1961年録音/スプラフォン盤) これはステレオ時代の古典的名盤です。アンチェルは名指揮者であるにもかかわらず、歴史の荒波に押し流された人生を過ごしました。しかしこの「新世界より」の録音は正にこの曲のリファレンスといえる名盤です。この演奏を聴かずしてこの曲は絶対に語れません。全盛期のチェコ・フィルの音が聴けるという点で非常に価値が高いですが、実はCDによって随分音質が異なります。正直一番良いと感じるのはやはりアナログ盤です。以前記事にしたことが有りました。CDで選ぶとすればやはり最新リマスターのXrcd盤ということになるのでしょうが、分解能が良いだけやや高音の強調感が有ります。価格が高いのもちょっと難です。むしろアナログの柔らかい音に近いのは旧盤で、日本コロムビアの国内盤、スプラフォンの海外盤のどちらもお薦めできます。最も気に入らないのは現在のDENONの24Bit盤です。高音が非常に強調されていてチェコフィルでは無くまるでアメリカのオケのように聞こえるからです。

アンチェル/チェコ・フィルのコンビのライブ録音は自分の知る限り2種類有ります。ひとつは1963年ザルツブルクのライブ(オルフェオ盤)です。演奏そのものはスタジオ盤以上に素晴らしいのですが、モノラル録音で音がパリッとしないのでどうもチェコフィルの音に聞こえません。ですので一般的にはお薦めしません。もうひとつは1958年アスコーナでのライブ(aura盤)です。これは非常に激しい演奏ですが演奏と録音の楽器バランスが崩れていて抵抗感が有ります。面白い演奏とは思いますが繰り返し聴くには向かないと思います。

Cci00051b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンは70年代と80年代にドヴォルザークの交響曲全集を二度録音しました。これは最初の全集からの演奏です。当時はノイマンは前任のターリッヒ、アンチェルと比べると個性に乏しく演奏も生ぬるいように感じましたが、イメージを一新させたのは東京で聴いた実演です。その時は8番を聴いたのですが、非常に瑞々しく美しい音の名演奏でした。この9番もアナログ録音らしく柔らかく良い音を味わえます。欠点はティンパニーの音がこもっていることですが、全体としては非常に素晴らしい出来です。

Cci00052 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1981年録音/スプラフォン盤) ノイマン二度目のデジタル録音盤です。72年盤と比べた場合、バランスの良さと造形感では優れますが、演奏の覇気はやや劣る印象です。どちらもオーソドックスな名演なのでなかなか優劣は付け難く、結局は聴き手の好み次第だと思います。実際に僕も以前は新盤が良いと思っていましたが、今回聴き直すとオケの音色の点で旧盤のほうにより惹かれました。

Cci00052b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1995年録音/CANYON盤) ノイマンはこの2年前の93年にもやはりライブ録音を残していますが、個人的には最後の95年録音を好んでいます。最晩年のかなり枯れた演奏なのですが、力みの一切無いところが逆に何とも言えない風情を醸し出しています。まさか「新世界より」でこんな”白鳥の歌”のような演奏が実現可能だとは思いもしませんでした。但し一般的に、特に若い世代のファンに受け入れられるかはちょっと分かりません。

Cci00054 ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル(1973年録音/オーパス盤) コシュラーは日本で都響に度々客演しましたので馴染み深いですが、この人は実に素晴らしい名指揮者でした。この演奏を初めて耳にした当時はアンチェル、ノイマン以上に気に入っていましたが、LP盤を手放してからは長い間聴いていませんでした。ところが最近CDを手に入れてみて余りの素晴らしさにかつての感動が甦りました。第2楽章のどこまでも沈み込んでいくような深さも底知れません。それにスロヴァキア・フィルはチェコ・フィルとは違って完全にローカルカラーの音色なのが何とも魅力的です。唯一の欠点は海外盤だけあって3楽章の冒頭の音が欠落していることです。

Cci00054b ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1979年録音/Panton盤) コシュラーが最も魅力的な演奏をするのはどうもスロヴァキア・フィルとのコンビのように思います。チェコ・フィルとのライブともあれば大いに期待したいところでしたが、どうも今ひとつ自分の表現をし尽していないのです。名門オケへの遠慮があったのかどうかは判りませんが、ともかくスロヴァキア・フィル盤のような個性と深みが出ていません。むろん悪い演奏とは思いませんが別の指揮者が振ったのと余り変わらない気がします。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーが初代音楽監督になった新生オーケストラとの演奏です。コシュラーは若い時から天才的な演奏をしたかと思うと、個性の無い演奏をしたりと出来不出来の多い指揮者だというのが僕のイメージです。この円熟期の演奏も決して悪くは無いのですが、オケがまだ熟成したわけでもなく、かといってローカル色が強いわけでもなく、少々魅力の乏しさを感じてしまいます。やはり僕としてはスロヴァキア・フィルと再録音を行って欲しかったというのが正直なところです。

Cci00053 イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル(1989年録音/スプラフォン盤) ビエロフラーヴェクは僕がまだ大学生の頃に日フィルに客演した実演を聴いた記憶があります。でも演奏は全然憶えていません。なので全く興味の有る指揮者では無かったのですが、この演奏はなかなか良いのです。実にオーソドックスで安定感が有ります。天才の閃きは感じませんが、常にゆとりが有るので安心して曲を味わうことが出来ます。有る意味ノイマン以上にリファレンス的かもしれません。

Cci00053b オンドレイ・レナルト指揮ブラティスラヴァ放送響(1987年録音/Amadis盤) レナルトもかつての新生日響に客演していたので日本では馴染みが有るかと思います。でも大変地味な存在ですね。このCDは海外盤ですが日本で何枚販売されたのでしょう。相当少ないでしょうね。ところがこの演奏は実に素晴らしいのです。派手さとは無縁の地味な指揮者の滋味溢れる演奏ですが、終楽章は充分な迫力も見せます。録音も良いですし、オケの響きがスロヴァキアフィル以上に田舎臭いのがとても魅力です。

ここまでは全てチェコ&スロヴァキアの指揮者とオーケストラの演奏です。他にもまだまだ有りますがとても全部は聴いていません。最後に番外編として一つだけ純血でない演奏もご紹介します。

Cci00055b ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1980年録音/オルフェオ盤) クーベリックはもちろんチェコ出身ですしチェコ・フィルとの演奏も有りますが意外に期待外れです。またベルリン・フィルとの演奏にいたってはカラヤン全盛時代のオケが派手な音で鳴り響き過ぎて全然良くありません。その点、手兵のバイエルン放送盤は充実した演奏となっていますが決して過剰なところが有りません。純血の組み合わせ以外では僕が一番好きな演奏です。

以上、「新世界より」の愛聴盤でした。この中から現在特に気に入っているのは、ターリッヒの1954年盤、アンチェルの1961年盤、コシュラー/スロヴァキア1973年盤がベスト3。次点としてレナルト盤です。

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スメタナ 連作交響詩「我が祖国」 名盤

7月になりました。梅雨時というのは毎日が蒸し暑くて嫌なものですね。四季の変化を味わえる日本に生れて良かったとは思いますが、この時期だけは梅雨の無い国に移動したくなります。でも日本でも北海道のように梅雨の無い土地も有るのですよね。とっても羨ましい限りです。

Aug06czech08 実は僕が毎年この嫌な季節に無性に聴きたくなるのが「モルダウ」なのです。だってこの曲は本当に爽やかじゃありませんか。森の泉から湧き出た水の流れが徐々に川幅を増していって、いつしか大河の流れになる情景が実に見事です。それになんといってもあの主題は稀代の名旋律ですしね。「モルダウ」はチェコ国民楽派の開祖スメタナが書いた6曲の連作交響詩「我が祖国」の第2曲目です。6曲というのは順に1.「高い城」 2.「モルダウ」 3.「シャールカ」 4.「ボヘミアの森と草原より」 5.「ターボル」 6.「ブラニーク」です。

僕は第1曲の伝説上のチェコ建国の象徴であるヴィシェフラト城の栄光と没落を描いた「高い城」と、この「モルダウ」の2曲をよく聴きます。気が向いて「シャールカ」まで聴いてしまうと、大抵はそのまま全曲鑑賞になります。5、6曲目の「ターボル」「ブラニーク」は演奏によっては曲が単調に感じられることも有りますが、自国チェコの演奏家であればいずれも民族の共感に溢れていますので退屈することはまず有りません。僕はこういう曲はどうしてもチェコの演奏家で聴きたくなります。他の国の演奏家のものではどうも気分が落ち着かないのです。ですのでご紹介するCDはほとんどが本場物ということになりますが、どうかご容赦ください。

Cci00048 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1954年録音/スプラフォン盤) ターリッヒはチェコ・フィルを世界的な名楽団に育てた大指揮者ですし、実際に「新世界より」のようなベストの座を争うような名盤も存在します。この「我が祖国」の演奏も味わい深さという点では非常に優れているのですが、録音が古いのがマイナスになっています。個人的にはどうしてももっと録音の良い演奏を聴くことが多いです。

511ess67kxl__ss500_ カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1963年録音/スプラフォン盤) 全盛期のチェコ・フィルの音を聴くことができる名盤だと思います。アンチェルとしても「新世界より」とこの「我が祖国」は代表盤と言って良いでしょう。ですので僕も昔からずっと愛聴してきました。但し比較的最近リリースされた後述の1968年の歴史的ライブ盤を聴いてしまってからは少々影が薄く感じてしまいます。後半の3曲などはもっと熱く演奏できたはずだと思うのです。まあ、スタジオ録音では仕方が無いのかもしれません。

Cci00049 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1968年録音/Radio Servis盤) アンチェルは1968年にアメリカへ演奏旅行中に祖国でプラハの春事件が起きた為に帰国を断念。亡命の道を選びました。その直前の「プラハの春音楽祭」でのライブ録音が残されています。これはスタジオ録音盤とは次元の全く異なる演奏です。アンチェルがライブでどんなに熱く凄い演奏をしていたかの証明でしょう。果たしてこの時に彼が祖国に起きる事件を予感していたかどうかは分かりませんが、第1曲からエネルギー全開で特に「シャールカ」以降は驚異的にテンションの高い熱演を果たしています。この演奏だけは色々な意味で何を置いても必聴です。

51lj40glfml__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1975年録音/スプラフォン盤) ノイマンには東京でのライブ録音盤も有りますが、演奏はこのスタジオ盤のほうが優れていると思います。録音も含めてオーソドックスな名盤を選ぶとすればアンチェルのスタジオ盤に次いではこのノイマン盤が上げられるのではないでしょうか。ノイマン/チェコ・フィルはこの録音の頃に東京で生演奏を聴いていますが、それは本当に瑞々しく美しい音でした。

51rksbz3scl__ss500_ ヴァーツラフ・スメターチェク指揮チェコ・フィル(1980年録音/スプラフォン盤) スメターチェクもチェコが生んだ名指揮者です。派手な人気は有りませんが、この人にチェコのお国ものを演奏させたら、他の巨匠指揮者達に充分匹敵する演奏を成し遂げます。この「我が祖国」もとてもスケールが大きく血の共感を感じる名演です。チェコにはかつてシェイナとかグレゴルとかやはり同じような意味で非常に優れた指揮者が多く存在しました。

41tggf92p6l__ss500_ ラファエル・クーべリック指揮チェコ・フィル(1990年録音/スプラフォン盤) クーベリックの「我が祖国」の録音は5~6種類有ったかと思いますが、これは「プラハの春音楽祭」でチェコ・フィルと42年ぶりに共演した演奏です。同じコンビの日本でのライブ演奏もCD化されていますが、歴史的な録音という点で個人的にはこの演奏を感慨に浸りながら楽しむことが多いです。実際にこの演奏には演奏家達の感動が滲み出ていると思います。

Cci00048k ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1984年録音/オルフェオ盤) クーベリックのこの曲の録音は多く、中ではボストン交響楽団を指揮したグラモフォン盤も評価が高いですが、チェコ・フィル盤以外に上げるとすればやはり手兵のバイエルン放送響盤ではないでしょうか。オーケストラの持つ音色ではチェコの楽団の魅力には及びませんが、演奏そのものはやはり優れていると思います。

この他にはCDでは無くアナログLP盤ですが、日本にも度々訪れた名指揮者ズデニェック・コシュラーとスロヴァキア・フィルの素晴らしい演奏が外せません。これは以前に一度記事にしたことが有ります。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_f106.html

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~ハンガリーへの旅~ リスト 「ハンガリー狂詩曲」第2番

Parliament さてオーストリアをぶらり旅していたフーテンのハルくんはお隣の国ハンガリーへと足を延ばしました。ハンガリーはマジャール民族の国。元々は遠くモンゴルの遊牧民族がトルコあたりを流れて最終的に行き着いたのが現在のハンガリーなのです。要するにさすらうジプシー民族の国。フーテンのハルくんも情熱的なジプシー風女性には大いに惹かれます。えっ、女性には皆惹かれるんだろうって?実はそうなのです。特に情熱的な女性には滅法弱いんですよ。(笑)

ところでハンガリー民族はヨーロッパの中に有ってアジア民族に似た特徴を多く持つのだそうです。マジャール語は言語学的にはアジアに近いのだそうですし、氏名の呼び方についても、名字が前で、名前が後ろなんです。それにアジア民族の赤ん坊のお尻にできる蒙古斑。これも欧米民族で出来るのはハンガリー人だけだとか。音楽の特徴も独特です。激しいリズムと哀愁漂うメロディ。特にあのジプシー風の音楽にはとても共感を覚えます。ブラームスの書いた「ハンガリア舞曲集」も好きですが、ハンガリー人の書いた音楽にも好きな曲が有ります。フランツ・リストの「ハンガリアン・ラプソディー(ハンガリー狂詩曲)」とかね。この第2番は大変有名ですし、昔から大好きなのですよ。とは言え、ポピュラー管弦楽曲集なんかに入っていますが、余り真剣に聴くようなことも有りませんでした。ところが思わず耳を傾けてしまう本場物の素晴らしい演奏が有りますので是非ご紹介します。

Cci00047 マーティアス・アンタル指揮ハンガリー国立交響楽団(1988年録音/ナクソス盤) 世界的廉価レーベルのナクソスは、正直言ってマイナーな演奏家のものがほとんどです。コストを切り詰めるためです。ところが中には結構良い演奏も存在するので侮れません。例えばこの「ハンガリアン・フェスティバル」というタイトルのCDです。ハンガリーのこの楽団は以前小林研一郎と結びつきの強い名オーケストラでしたが、私も10年前に大変に素晴らしい演奏を東京で聴いています。この「ハンガリアン・フェスティバル」のCDで指揮をしているのはやはりハンガリー人ですが、全て自国の演奏家で固めたこのCDは曲目も実に良いのです。コダーイ「ハーリヤーノシュ」組曲、リスト「ハンガリー狂詩曲1番、2番、6番」、フバーイ「ヘイレ・カティ」からチャルダーシュ、ベルリオーズ「ハンガリー行進曲」です。まさにハンガリアン・フェスティバル!

ハンガリー狂詩曲第2番ですが、前半の哀愁漂う旋律を歌う木管や弦の味わいはちょっと他の国の楽団では聞けません。さほど大げさではないのに実に心に染み入ってくるのですよ。そして中間部のヴァイオリン独奏はいかにもジプシー風で最高です。こうでなくてはね。他のいずれの曲も楽しめます。フバーイもやはりジプシーヴァイオリンが素晴らしいですし、ベルリオーズの「ハンガリー行進曲」は同じハンガリー出身のジョージ・セルのお得意のアンコール曲目でしたが、このCDの演奏もフランスの楽団のきらびやかな音色とは違ってまた魅力的です。こういうCDが1000円程度で買えるのは実に素晴らしいことだと思います。

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ストラヴィンスキー バレエ「春の祭典」 ライプチッヒバレエ団

このところ仕事が忙しかったのと、その他にもあれやらこれやらで記事のアップがなかなか出来ませんでした。そこで今日は、今年の春に出た「春の祭典」のバレエDVDについてお話しようかと思います。

Cci00043_3 振り付けは5年前に45歳で亡くなったウヴェ・シュルツ、バレエ団はライプチッヒバレエ団、オケはゲヴァントハウス管弦楽団です(2003年収録)。ストラヴィンスキーのこのバレエ音楽は言わずと知れた20世紀の大傑作です。コンサートピースとしてあらゆる国で日常的に演奏され、CDの数に至ってはどれくらい有る事か分らない位です。ですがこの曲は元々はバレエ音楽なのです。皆さん「あたしそれぐらい知ってるわよん。」とおっしゃられることでしょう。(女性の場合。オカマではありません。) では、このバレエを実際にご覧になった経験が有りますか?公演を観たことのある方は相当少ないはずです。なにせ滅多にやらないのですから。昨年、東京バレエ団がモーリス・ベジャールの追悼公演としてこの演目をやりましたが、私も観たのはそれが初めて。でも残念ですが生オーケストラ演奏ではなくて録音テープでした。舞踏は素晴らしかったのですが。

このバレエはDVDで観た方もほとんどいらっしゃらないでしょう。何しろ今までこれといったものが無かったのですから。ということで今回のDVDは正に待望のものでした。このDVDにはオーケストラ伴奏版と2台のピアノ伴奏版と二種類が収録されているのも楽しいです。ピアノ伴奏版は男性ダンサーがたった一人で現代ダンスを踊るのですが、ステージのバックにはスクリーンが有って様々な映像が踊りとシンクロして映しだされます。この映像がパロディもありでなかなか面白いのです。白鳥の湖のジークフリート王子とオデットの湖畔のシーンかな、と思っていると、王子がオデットを襲おうと木々の間を執拗に追い掛け回して彼女が必死に逃げ回ったりとか、あるいはお城の寝室のシーンでは、可憐なお姫様が大胆にも王子のモッコリ股間にぐっと手を伸ばしたりとか、なかなかドキッとさせられます。オケ版のほうはそれに比べると衝撃性は少ないけれど、それでも生贄を捧げるシーンでは女性ダンサーがおっぱいをポロリとしたりで結構楽しめます。(ってどうもビデオの種類を勘違いしているような・・・) 主役の日本人、木村規予香さんもハルくん好みの日本人らしい端正な体型の美人なので、彼女を見ているだけでも楽しめます。ただ全体としてはベジャール振り付けのほうが好きかなぁ。いずれにしてもこの貴重なDVDを是非一度ご覧になってみて下さい。

それにしても、この演目を20世紀の初めにパリで初演して大きな衝撃を与えたディアギレフ率いるロシアバレエ団の凄さといったら無いですね。当時は社交界の娯楽に成り下がっていたパリのバレエ界に、最高の舞踏と最高の音楽でセンセーションを巻き起こしたのですから。天才男性ダンサーのニジンスキーは「ジャンプしたまま空中にそのまま止まる」と評されました。書き下ろしの音楽はストラヴィンスキーの「火の鳥」や「春の祭典」です。なんという芸術の質の高さなのでしょう。それに比べて果たして現代のバレエ界は当時のロシアバレ団の志を越えていると言えるのでしょうか。などと、素人の私が偉そうに言うのもどうかと思うのでこのあたりで止めておきます。

ところで「春の祭典」はもちろん音楽だけをCDで聴いても楽しめますので、私の気に入った演奏をいくつかご紹介します。

Cci00042 ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(1999年録音/Philips盤) もう10年近く前ですがこのコンビの「春の祭典」は東京で生演奏を聴いています。その時はどちらかいうとスマートな印象(席が遠かったせいかも)だったのですが、その頃に録音されたCDでは随分と荒々しさを加えて素晴らしい出来栄えです。精緻さとバーバリズムの共存というこの曲の正に理想的な名盤となりました。いたるところでロシアの大地の雰囲気を感じさせるのもやはり自国の楽団ならではです。たったひとつベストCDを選ぶとすれば迷うことなくこのゲルギエフ盤です。100点満点。

5111kaaeapl__ss500_ コリン・ディヴィス指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1976年録音/Philips盤) このCDはアナログ録音でありながら非常に音が良いです。というか逆に優秀なアナログ録音だからこそコンセルトへボウの分厚い音の響きを充分に捉えられたのかもしれません。まさに圧倒されるようなパワーなのですが少しもうるささを感じません。これはデイヴィスの指揮と楽団の優秀さのせいでしょう。弦楽や管楽の各パートの上手なことはまさに特筆ものです。ただし前半はややおとなしめ。「春のロンド」あたりから音の厚味を増して本領発揮は後半です。90点。

41spkgnk6sl__ss500_ ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管(1969年録音/Sony盤) 一世を風靡した歴史的名盤ですね。よく言われることですが各楽器の音が全て聞こえる分離の良い演奏は録音技術によるものであって、生のステージでは有り得ないでしょう。しかしこの切れ味鋭い演奏はやはり素晴らしいです。ブーレーズはずっと後にベルリンフィルと再録音をしていますが、聴いていて面白いのは断然このクリーヴランド盤のほうです。85点。

Cci00042b レナード・バーンスタイン指揮ニューヨークフィル(1958年録音/Sony盤) ヤング・レニーのかつてのベストセラーなのですが、何故かCDは後年のロンドン響との再録音のほうばかりが販売されていてニューヨーク盤は廃盤状態が続いています(僕のもレニーのエッセンシャル盤です)。なんでやろね?デビュー直後のレニー/NYPの演奏は随分と荒削りではあっても若々しい情熱に溢れていて実に魅力的なのです。彼こそは本物の「青春の巨匠」ですよ。この演奏も出だしはなんだかつたなくてヨロヨロしていますが、「春のロンド」あたりから突然アクセルがかかってノッてきます。そういえば曲が「ウエストサイドストーリー」みたいだものね。いや影響を受けたのは作曲家レニーのほうなのでした。これはやっぱり時々聴いてみたくなる演奏です。75点。

というわけで、推薦CD「ハルの採点」でした。おあとがよろしいようで。

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~ハルくんのザルツブルクへの旅~ モーツァルト ミサ・プレヴィス集

さてフーテンのハルくんのオーストリアの旅、このままリンツでブルックナーを聴き続けようかどうしようか迷いましたが、結局は西への車窓の旅を選択しました。到着したのはザルツブルクです。実はハルくん、この街には3年前に一度訪れていますのでこれは実話に基づきます。

P1000718モーツァルトの生れた街として有名なザルツブルクですが、夏に開催される音楽祭もまた余りに有名ですね。街中を挙げて、というよりは国を挙げて盛り上がりますので、それこそ世界中から大勢の音楽ファンが集まって来ます。ですがハルくんの訪れたのは晩秋でしたのでそんな盛り上がりは見られませんでした。ザルツブルク駅から地図を見ながら歩いて30分ぐらいでしょうか、街の真ん中を流れるザルツァッハ川の向こう側に旧市街が見えてきます。モーツァルトが生れたのはこの旧市街です。そしてこの旧市街は街ごとユネスコの世界遺産に登録されています。

P1000689_3 街の中に入ってみるとあらゆる建物が昔の姿のまま保存されているのですが、まあ何というかまるで「おとぎの国」なのです。有名な観光地だけあって、この時は音楽祭でもクリスマス市でも無いのに通りは相当な数の観光客が歩いていました。市場には多くの屋台が並んでいましたので、ハルくんは地元の食べ物とビールをたらふく味わってすっかりご機嫌となりました。

P1000692_2 街のほぼ中心部にモーツァルトの生家が有ります。黄色の建物で壁に「Mozarts Geburtshaus」と書いて有りますが、もちろん住んでいたときには書かれてなかったのでしょうね。建物の中はそのまま博物館になっていて彼が使ったピアノや楽器、一家の家具なんかを見ることが出来ます。おまけにカフェまであるので、甘いものにも目が無いハルくんはここでザッハトルテとウインナカフェを頂きました。なかなか美味しかったです。

P1000684それから訪れたのはザルツブルク大聖堂「Dom zu SALZBURG」です。ロココ調の美しい建物で、中に入りじっくりと回りの装飾を眺めていると時の経つのも忘れます。そして生れて間もないモーツァルトがここで洗礼を受けたのかと思うと正に感無量です。モーツァルトファンがこの街を訪れたらここだけは絶対に外せないですよ。

大聖堂の他には聖ペーター寺院もありますし、モーツァルトはこの街での少年時代に多くの宗教曲を書きました。それはバッハと同じように教会の式典やミサの為に書いたものです。決してコンサート用に書かれたものでは無いのですよ。この時代の作品でハルくんが特に好きなのは8曲のミサ・プレヴィスです。ミサ・プレヴィスというのは「小さなミサ曲」という意味で、教会の少年合唱団がごく小さな編成の伴奏で歌っていたのです。ですのでこのような曲は純真素朴な少年合唱が歌わないと雰囲気が出ません。たとえばアーノンクールがモーツァルトの宗教曲全集でプロの合唱団を指揮して録音していますが、どんなに合唱が上手くても素朴さに欠けるので僕は余り好きでは有りません。

全8曲は作品順に、ト長調K49/ニ短調K65/ヘ長調K192/二長調K194/ハ長調「雀のミサ」k220/ハ長調「シュパウル・ミサ」K258/ハ長調「オルガンソロのミサ」K259/変ロ長調K275です。

Cci00041 ラインハルト・カムラー指揮アウグスブルク大聖堂少年合唱団聖歌隊(1990年録音/ハルモニアムンディ盤) モーツァルトの父、レオポルドの生れた街アウグスブルクはミュンヘンのすぐ隣りの町ですが、その少年合唱団が素晴らしい歌声を聞かせてくれます。本当に教会で聴いているような素朴な合唱に感動します。やっぱりこうでなくてはね。ミサ・プレヴィス集のCDは意外に少ないので、このような全8曲の素晴らしい録音が残されたことを心から歓びたいと思います。特に最後の変ロ長調K.275は作品もハルくん自身最も好きですし、清らかなボーイソプラノが何という素晴らしさなのでしょうか!

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~アルプスへの旅~ ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」

Alpsa002 さて、ライン地方の風景を満喫し毎日ビールを飲んだくれていたフーテンのハルくんでしたが、ようやく旅を続けてやってきたのはオーストリアはアルプス山脈の麓にあるリンツです。たいそう美しいこの街には有名な聖フローリアン教会が有るのですが、かつてこの教会のオルガニストを勤めたのがアントン・ブルックナーです。この人は一般的には決してポピュラーということは無いのですが、日本では本場ドイツオーストリア以上に人気が有ります。それほどファンの間には熱烈に支持されているのです。それは何故か?この人の音楽の本質をごく簡単に説明すると「悠久の大自然や宇宙を前にしたはかなさ」ということです。これは他の作曲家の音楽が感じさせるものとはだいぶ異なります。しいて言うと晩年のシベリウスが同じような特徴を持つぐらいです。要するに音楽に「人間臭さ」が全く感じられないのです。其処にあるのは、大アルプスの山々とのどかな森林やお花畑。晩年の作品に至っては、大自然の風景すら超越して、まるで大宇宙そのものと自然の摂理みたいな音楽です。いや音楽すら越えてしまっているかもしれません。

数年前にベストセラーになった藤原正彦さんの「国家の品格」の中に、日本人の持つ特徴として「自然に対する繊細な感受性が他の国民よりも格段に豊かであり、悠久の自然の儚い人生に美を感じる」とあります。僕はこの文章を読んだときにまるでブルックナーの音楽を言い表しているなぁ、と思いました。それゆえに多くの日本人がブルックナーの音楽の本質を理解し愛好するのでしょう。

ですが音楽を聴いて大宇宙や人間の存在の小ささをを感じるなんてつまらない、そんなのまっぴら御免だという方も居るでしょう。そんな方にはこの交響曲第4番は彼の作品の中では一番アルプスの山々や自然どまりの雰囲気なので聴きやすいと思います。終楽章の終結部は流石に宇宙を感じさせますがそれまでは馴染みやすいと言えます。その分、後期の一連の作品のような深みには欠けますけれど。でも曲の副題が「ロマンティック」というのはちょっといただけないですがね。いっそ「アルプスシンフォニー」にでもすればいいのにね。それは他にあるって?そうでしたね。さあ涼しい風を体いっぱいに感じながらアルプスの山々を眺めましょう。

343 カール・ベーム指揮ウイーンフィル(1973年録音/DECCA) アルプスの空気と言えばやはりウイーンフィルの澄み切った清純な音で聞きたいですね。しかもベームはオーストリアの山岳地帯グラーツの出身です。このコンビ位にイメージがピッタリの組み合わせはなかなか無いでしょう。弦も木管も実に美しいですが、音を割ったウインナホルンの威力がアルプスの威容をとことん感じさせてくれます。録音もアナログ全盛期のDECCAだけあって優秀です。

Ph06046 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘンフィル(2001年録音/Profil盤)リンツからドイツ側に下るとミュンヘンが有ります。だからか昔からミュンヘンのオーケストラはブルックナーを得意にしています。ヴァントもブルックナーを最も得意としていてこの曲を何度も録音していますが、特に優れたものの一つがこの演奏です。最晩年のヴァントは職人技を極めて人間国宝みたいな域に達していたと思います。

108 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2001年録音/RCA盤) ミュンヘン盤が2001年の9月録音、こちらは10月の録音です。そしてこのコンサートがヴァントの最後の演奏会になりました。ですのでこのコンビが直前の2000年に日本で9番を聴かせてくれたのは実に幸運でした。あの時の生の音は決して忘れることができません。そしてこの4番の演奏にはヴァントも団員もまるで最後を予感していたかのような特別な雰囲気が漂っています。枯れているといえばそうなのですが、そこが独特の魅力を湛えていて実に感慨深いものが有ります。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘンフィル(1972年録音/IMG盤) これはライブ録音であり、昔出ていたスタジオ録音とは違います。ケンペもブルックナーを得意としていて、同じミュンヘンフィルとは5番の超名演を残していますが、このライブの4番もそれに匹敵する素晴らしい出来栄えです。この名匠の腕による彫りの深い演奏はどちらかいうとアルプスの自然よりはミュンヘンの街のあのゴシック様式の巨大な聖母教会を想わせる様な立派さです。僕が生で聴くことができたその聖母教会のパイプオルガンの地響きを立てるような音はミュンヘンフィルの響きに通じていると感じます。

Cci00039b ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーンフィル(1955年録音/DECCA盤) クナ抜きにブルックナー演奏は語れません。但しこの演奏はスタジオ録音なので非常に柔らかい演奏であのクナの地響きを立てるような実演とはかけ離れています。ところがそれでも魅力が失われないのがクナの面目躍如です。何と美しい響き、表現の演奏なのでしょう。クナには最晩年1964年に同じウイーンフィルとのライブ録音が有り、それは正に空前絶後、恐らく最も素晴らしい4番の演奏なのですが、残念なことに音質の悪い非正規盤しか有りません。是非正規盤で聴きたいと思うのですが。

Cci00040 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/Archiphon盤) 最後にもう一人ブルックナーを得意としたシューリヒトのご紹介も。ウイーンフィルとの3、5、8、9番ほどの名演とは言い難いので、まあこんなのも有りますということで。軽い足取りはアルプスの野原をさっさと早足で散策しているかのようです。ドイツでビールを飲んだくれてお腹がポッコンのフーテンのハルくんにはこの速さに付いて行くのはちょっと辛いなぁ。

ブルックナーの他の曲、特に好きな5、7、8、9番などについてはそのうちにじっくり触れたいと思っています。

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~人生のカノン~ ヨハン・パッヘルベル 「カノン」二長調 

この曲はとっても親しまれている有名な曲ですね。皆さんもよくご存知のことと思います。実はハルくん、この曲が大好きなのですよ。

それにしてもなんと優雅で心優しいメロディなのでしょう。僅か5分程の短い曲なのですが、通奏低音が流れ始めたとたんに何か心が癒される気分になってしまいます。そして3本のヴァイオリンが静かに曲に入ってくるともうたまりません。心はうるうる状態です。曲はあっという間に進んで、通奏低音が歌い、その上をヴァイオリンが十六分音符で駆け回れば、優雅な落ち着きだけでなく非常に心を駆り立てられます。

この曲は街中の喧騒の中なんかでもBGMとしてよく流れていたりもしますが、僕はそんな時ですらハッと耳を奪われて思わず涙腺が緩んだりしてしまいます。この曲を聴いていると何だか、過去の人生や現在の人生、あるいは多くの友人との出会い、そして愛する人との出会いと別れ・・・。そういった様々な思いが次から次へと走馬灯のように心に懐かしく浮かんでは消えてゆくのです。それはまさに「人生のカノン」のように思えます。でもこの曲は決して感傷的では無く、ずっと肯定的な気分にさせてくれます。僕はそんな風に感じるのですが、皆さんはどうでしょう?

Cci00038 僕の好きなCDは、少し古いのですがフランスのジャン・フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団の演奏です。昔、NHKFMの朝の名曲の時間のテーマ音楽として使われていた演奏なのです。ですのでカノンというとこの演奏がすっかり身体に刷り込まれてしまったみたいです。現在のバロック演奏のスタイルとはかけ離れて、ゆったりと過剰なほどにロマンティックに演奏しています。時代遅れと言えばそれまででなのですけれど、だからこそ逆に良いのですよ。懐かしい気分たっぷりで疲れた心をとことん癒してくれるのです。このCDは名曲集なので他にも沢山曲が入っていますが、やはりカノンが白眉です。RCAの再録音盤も有りますが、僕の好きなのはこの懐かしいエラート録音の旧盤です。

Cci00038b 現在のバロック演奏ならば、古楽器派の名アンサンブル、ラインハルト・ゲーベルとムジカ・アンティカ・ケルンのCDが有ります。いつものように実にスピーディな演奏なのですが、3本のヴァイオリンの絡み合いはニュアンスとセンスに溢れた名人芸で最高です。さすがにMAK、独特の味わいが有ります。僕はこれも大好きなのです。でもカノンの後にジーグを付けても5分かからないというのは驚異。カノンだけで比較しても、パイヤールが7分10秒かかっているのにMAKは僅か3分5秒と倍以上の早さです。ちょっと早く終わりすぎるよね。人生をこんなに早く駆け抜けたくは無いなぁ。

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~ハルくんのラインへの旅~ シューマン 交響曲第3番「ライン」変ホ長調op.97

今回の旅行記は創作でなくて実話なのです。(写真はクリックしてもらうと大きくなります)

今から3年前のことですが、ハルくんはデュッセルドルフに長期赴任している日本人の旧友に会いに行きました。しかもその友人とはおよそ20年ぶりの再会だったのです。彼はそれは大歓迎してくれて、その晩は街のビアレストランで2人で祝杯を挙げました。

P1020050 翌日は友人の車で観光案内をしてもらうことになり、一路ケルンへ向かいました。約一時間程度で着いたケルンには名高い大聖堂が有ります。中世の巨大な建築物です。ロベルト・シューマンはデュッセルドルフに移ってまもなくケルン地方を中心に旅をしましたが、この大聖堂の威容には大変感銘を受けたそうです。旅から帰ってすぐに作曲したのが交響曲第3番「ライン」です。それにしてもこの大聖堂は実に巨大なのです。何でも一年中修復を続けているそうですよ。有る部分の修理が終わると、また別の部分が傷んでくるのでそれを永遠に繰り返すのだそうです。大きな修理工房が裏手に有りました。

P1000436 大聖堂は上の方まで延々と階段で歩いて登ることができるので、その日も結構な人数の観光客が一生懸命登っていました。ふうふういいながらやっとこさ展望階まで登ってみると眼下には街の真ん中を堂々と流れるライン川が見下ろせました。これは素晴らしい景色です。

P1000498 翌日はライン川を上流方面に走りました。川沿いの小高い丘の上に次々と中世のお城が見えてきます。大きな城も小さな城もみなその土地のかつての領主の居城だったのです。そしてライン川が悠然と流れる様を眺めていると頭に浮かんでくるのは「ライン」の第2楽章です。そして回りののどかな町並みと人々の静かな生活風景は第3楽章です。特に夕べの時間帯はイメージがぴったりだと思います。

P1000507 更に上流に上ると、だんだん川幅が狭くなり流れの勢いがどんどん増してきます。この辺は「ライン」の第1楽章のイメージですね。そして、ついにあの有名なローレライの岩に到着しました。土曜の昼間にもかかわらず他にはほとんど観光客が居ないので、私と友人は岩の上に登ってゆっくりとライン川を眼下に眺められました。「岩」といってもそれは実は大きな丘なのです。なんとも雄大な景色を堪能できました。ローレライ伝説というのは「波の間から聞こえてくる美しい歌声に船の舵取りが気を取られてしまい座礁して沈没してしまう」という内容ですが、確かにこの岩の近くは急流で一番の難所のようです。昔から「美女の誘いには気をつけろ」というのが男性への教訓だったようですね。私も一度で良いので美女に誘われて沈没してみたいものです。

デュッセルドルフに引き返す途中も頭の中ではずっとシューマンの「ライン」が流れっぱなし。それはそうですよね、シューマンはこの景色を見て曲を作ったのですからね。ハルくんはラインの旅を体験しながら感慨にひたるのでした。「うーん、ドイツ!」「ライン!」「シューマン!」「ビール!」「美人!」(は余り見かけなかったなぁ。残念。)

さて思い出深い交響曲「ライン」なのですが、私はこの曲はどうしてもドイツの楽団の音で味わいたくなってしまうのです。愛聴盤をご紹介しますので、どうぞご一緒にラインの旅を味わいましょう。

P2_g3245420w ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮ドレスデン国立歌劇場管(1972年録音/EMI盤) 学生時代に最初に買ったのがこの全集。但し当時はLP盤でした。SKドレスデンの全盛期の音を聴ける素晴らしい演奏です。金属的な音が全くしない柔らかさと厚みの有る腰の強さを併せ持つ稀有な音だと思います。ザンデルリンクのブラームス全集とサヴァリッシュのこの演奏でSKドレスデンのとりこになったファンは非常に多いと思います。CDでも充分に素晴らしいのですが、初期のLP盤で聴く音は更に格別です。また4曲の中でもとりわけ3番の演奏が優れていると思います。

Cci00034 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年録音/BerlinClassics) ゲヴァントハウスの音もまた格別です。よくシューマンのオーケストレーションは鳴りが悪いと言われますが、カラヤンのようにピッチを上げて鳴りを良くしてしまっては全く違った音に変わってしまいます。管と弦が混じりあったくすんだ響きこそがシューマンの音なのですよ。この古色然としたオケの音を味わいましょう。コンヴィチュニーの指揮もゆったりしたテンポで貫禄充分です。 

Cci00034b ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1979年録音/SONY盤) クーベリックは60年代にもベルリンフィルと全集を録音しましたが、それは余り印象には残っていません。このバイエルンとの全集の方が格段に優れていると思います。響きは南ドイツ風にやや明るめですが、やはりふくよかで柔らかい音が魅力的です。スケールも大きくてとても良い演奏だと思います。

Cci00035 オットマール・スイトナー指揮ベルリン国立歌劇場管(1986年録音/DENON盤) スイトナーはモーツァルトのような古典派は早いテンポで颯爽とした演奏をするのですが、ロマン派の曲になると案外遅いテンポでスケール大きく演奏します。このシューマンもそのスタイルです。第1楽章は金管のバランスが強いので、柔らかさよりも力強さを感じます。好みで言えばもう少し弦とまろやかに一体化した方が好きですね。ですが逆にこの方が好きと言う人も多いのではないかと思います。終楽章は音がまろやかに溶け合って美しいです。

Cci00035b セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1988年録音/EMI盤) いつもながらの遅いテンポによるチェリビダッケらしい演奏です。響きの美しさは有りますが、素朴さに欠けるのでこの曲に向いているとは思えません。それに情熱の高まりが無いのが気に入りません。私の好きな第3楽章も遅すぎるので、すっかりもたれてしまいます。4楽章、終楽章も同様です。終楽章の最後になって突然壮大に鳴り出すのですが、これは何なのでしょう。チェリビダッケは私の感性からは大分遠い指揮者であると思います。  

Cci00036 クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響(1999年録音/RCA盤) 北ドイツ放送響は2000年にヴァントの指揮でブルックナーの9番の名演を聴きましたが、実に北ドイツ的な響きでした。厚みの有るほの暗い響きはシューマンの音楽に一層似合うと思います。エッシェンバッハは今どきの指揮者にしては珍しいくらいに暗い情念を持っている人なのでやはりシューマンに相応しいと思います。私はこの演奏も好きです。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1962年録音/Scribendum) 音楽評論家の中にはこの演奏を推薦している方もいらっしゃるし、私自身も人後に落ちぬシューリヒトファンなのですが、この演奏は正直余り好きはありません。軽快なテンポで颯爽と進む演奏からは、どうもシューマンの音楽の持つほの暗さが聞こえてこないからです。元々がコンサートホールという廉価レーベル録音なので音質が良くないせいも有るかもしれませんが、もう少し厚みの有るドイツ的な響きを聞かせて欲しいものです。

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~女神の饗宴~ ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77

ブラームスの作品には、明らかにハンガリーのジプシー音楽の影響を受けた哀愁がいっぱいに漂う曲想が数多く見られます。そのなかでも代表的な作品としてはまっ先にヴァイオリン協奏曲二長調が挙げられるでしょうね。

この曲については以前にも一度記事にしています。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-2fed.html

その中で巨匠ヴァイオリニスト達に混じっても一段と精彩を放っていたのが情熱的な点でまさに比類の無いジネット・ヌヴーのライブ演奏録音でした。この曲は不思議と昔から女性ヴァイオリニストの名演奏が多いのですね。それはたぶんこの曲は多くの男性奏者が得意とするような古典的な造形性では無く、ジプシー音楽の持つ情熱や感情が主体となっているからだと思います。女性奏者がそういう命がけともいえる情熱的な演奏をすると、男性奏者はとてもかなわないからです。そこで今回は特にジネット・ヌヴー以外の女性奏者による名演奏の幾つかをご紹介したいと思います。名づけまして「女神の饗宴」です。ほらほら美人に滅法弱いフーテンのハルくんがステージにかじりついていますよ。ハルくん何か別のステージ??と勘違いしていないでしょうね。(笑)

Cci00030 ジョコンダ・デ・ヴィトー(Vn)、フルトヴェングラー指揮トリノRAI響(1952年録音/IDイタリア盤) イタリア生れの彼女のスタジオ録音によるヴァイオリンソナタ集などは随分と端正な印象でしたが、このライブ演奏はフルトヴェングラーの伴奏指揮に触発されたからでしょうか、ひとつひとつの音に込めた情念の深さが際立っています。それは少々しつこく感じるほどなのですが、こういう女性の艶かしさも悪くは有りません。でも毎日付き合ったら疲れてしまうかも、っていったい何の話だ?(笑) イタリアの放送録音なので音質はあまり良くありません。

そのヴィトーには、ヨッフム指揮バイエルン放送響(1956年録音/En Larmes盤)という海賊CD-R盤も有ります。イタリアでの演奏会から2年後の録音ですが、伴奏指揮がヨッフムでしっかりしているせいか独奏ヴァイオリンもずっと安定感を増しています。そのうえ艶かしい表情は相変わらずです。録音もずっと良いので、正規録音盤が発売されればこちらを代表盤にしてもおかしくありません。

Cci00031 ヨハンナ・マルツィ(Vn)、クレツキ指揮フィルハーモニア管(1954年録音/EMI盤) ヨハンナ・マルツィはハンガリー生れ。ヌヴーやヴィトーに比べると知名度で劣りますが、実に素晴らしいヴァイオリニストです。非常に情熱的でありながら高い技術と男性的な造形性や堅実性を併せ持っています。第2楽章の深い情感も第3楽章の堂々とした立派さなど見事です。恋人にするならヌヴーやヴィトーがエキサイティングで楽しいのでしょうが、女房にするなら堅実賢母タイプのマルツィが理想的だと思いますね。 

Cci00031b ヨハンナ・マルツィ(Vn)、ヴァント指揮シュトゥットガルト放送響(1964年録音/GreenHILL盤) マルツィは録音が非常に少ないのですが、彼女の全盛期に伴奏者にも恵まれて録音状態の良いライブ演奏が残されているのは大変貴重です。ハンガリー人らしい情熱と情感が溢れるばかりなのですが、音楽が崩れることなく素晴らしいバランスを保っています。それを支えているのが幼少の時から師事したフーバイに鍛えられた演奏技術です。後年の名匠ヴァント指揮のオケ伴奏も充実していて個人的に大好きな演奏です。

Cci00030b イダ・ヘンデル(Vn)、ミュラー=クレイ指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/ヘンスラー盤) これは彼女がまだ若い頃の演奏です。しかし彼女のヴァイオリンにはどうも余り面白みを感じません。堅実といえば確かにそうなのですが、技術的にも特別上手いわけでも下手なわけでもありませんし、余りに感情をあらわにしないのが気に入らないのです。それは謂わば「三歩下がって夫の影を踏まず」とでもいう感じでしょうか。こういう女性は奥さんにすると良いかもしれません。まあ私の場合は影どころか生身まで踏みつけられましたけど。(笑) 

Cci00032 ミシェル・オークレール(Vn)、オッテルロー指揮ウイーン響(1958年録音/PHILIPS盤) フランス生まれで生粋のパリジャンヌのオークレールも個性的な美人ヴァイオリニストです。フランス以外の欧米男性から見るとフランスの男は嫌われていますが、フランス女性はとても人気があるようです。まあフーテンのハルくんにはとても縁の無い話なのでしょうが。えっ、わからないって?それじゃ次はフランスに行くか!(笑) オークレールのヴァイオンは軽く鼻にかかったフランス語の発音のような演奏です。重厚さとか情念の濃さというものは全然有りません。そこがとてもユニーク。パリジャンヌとデートでもしている気分になって聴いていると結構楽しいです。 

Cci00033 チョン・キョンファ(Vn)、プレヴィン指揮ケルン放送響(1996年録音/En Larmes盤) 韓国に生れた素晴らしいヴァイオリニストのキョンファはブラームスの正規CDをラトルの伴奏で録音しています。でもずっと世評の高いのはこの海賊CD-R盤の演奏のほうです。私は最近ようやく友人から借りてこの演奏を聴くことができました。私は韓国の女性もイイなぁと思うのですよ。何を隠そう女優のチョン・ジヒョンのファンなのです。可愛いじゃありませんか。でもやっぱり彼女は恋人タイプでしょうね、ってまた話が脱線しているな。(笑) ジヒョンじゃなくてキョンファはこの録音と同じ頃に東京でリサイタルを聴きに行きましたが、虚飾の無い素晴らしい演奏でした。このブラームスも同様です。深い情念と気迫を持ちながらも外面的に陥ることなく音楽の心そのものを音にします。タイプとしてはマルツィに似ています。

Cci00032b アンネ‐ゾフィー・ムター(Vn)、マズア指揮ニューヨークフィル(1997年録音/グラモフォン盤) さて最後に登場するのはグラマラス美人の代表ムターです。彼女は10代の若い頃はぽっちゃりふくよかでも演奏はストレートな表現でしたが、年齢を重ねるにつれてボディも音楽も段々グラマラスになりました。フーテンのハルくんはグラマラスは元々余り好みではなくて、どちらかいうとスリムで端正なタイプが好みなのです。でもここまで艶かしく弾かれると、やはりおじさん的にはたまらないのです。ヴァイオリンの上手さも半端でありません。これがジプシー的かどうかはもうどうでもよく、脂の乗り切った濃厚なテクニックにメロメロです。ここは身も心も任せて昇天してしまいましょう!ただしマズアの指揮はいまひとつ元気が無いので、若い美女を囲う金持ちの爺さんパトロンというイメージです。

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ぶらりドイツの旅 ブラームス「ハンガリア舞曲集」

20060921_225639 フーテンのハルくんはノルウェーに別れを告げてからスカンジナビア半島の南端からドイツへと海を渡り、ひとり旅を続けました。船で行き着いた港はハンブルグです。この北ドイツの港町はブラームスが生れた町として有名ですね。父親がコントラバス奏者という余り裕福でない家庭に育ったブラームスは、家計を助ける為にレストランや居酒屋で小さい頃から得意のピアノを弾いて稼いでいました。そういう店には港からアメリカへ移住するハンガリーからの避難民が多く来て居たので、小さい頃から異国的なハンガリー音楽に親しんでいたそうです。さらにはハンガリー出身のヴァイオリニストのレメーニやヨアヒムと交友を持ったことが、益々彼をハンガリー音楽に近づけさせました。ブラームスの音楽の特徴の一つの哀愁漂う歌謡調のメロディは明らかにハンガリー音楽の影響です。

そんなハンガリー風音楽の代表作品といえばご存知「ハンガリア舞曲集」です。元々はピアノ連弾用に作られましたが、余りの人気の高さにブラームス自身や他の作曲家の手で管弦楽用に編曲されたので現在も観賞用として大変親しまれています。私も大好きなので珈琲などを飲みながらよく聴いています。

Cci00029 ブラームスの故郷ハンブルクには北ドイツ放送交響楽団という素晴らしい楽団が有ります。このオーケストラは戦後直ぐに創設されたのですが、ハンス・シュミット=イッセルシュテットやカール・シューリヒトという大指揮者の手によって育てられた為に急速に優秀な楽団に成りました。ブラームス作品はこの楽団の主要レパートリーの一つです。その初代常任指揮者であるイッセルシュテットが指揮をした「ハンガリア舞曲集」の素晴らしい演奏が有ります(1962年録音/ユニヴァーサルミュージック・フランス盤) やや古めかしい録音ですが、リマスタリングが良いので聴きにくいことは有りません。それよりもイッセルシュテットの指揮が大変に素晴らしいのです。リズムの良さと哀愁漂う歌い回しが最高です。全21曲が収められているのも嬉しい限りです。

さて、ハンブルグの港町でフーテンのハルくんは果たして憧れのマドンナとの出会いを果たすことが出来るのでしょうか。案外色っぽいジプシーの娘といい仲になってしまうのかも知れませんね。

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