2017年11月20日 (月)

マーラー 歌曲集「亡き子をしのぶ歌」 名盤

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マーラーの歌曲集「亡き子をしのぶ歌」は、ドイツ語の原題が「Kindertotenlieder」ですので直訳すれば「子供の死の歌」となります。正否を論じるほどのことでは有りませんが、印象として前者は”母親”の歌、後者はどちらかいうと”父親”の歌という気がするのは私だけでしょうか。

この曲集はドイツの詩人フリードリヒ・リュッケルトの詩が使われていますが、リュッケルトは二人の息子を失った悲しみを実に428篇もの詩に詠いあげました。その息子の一人の名前はエルンストで、それは13歳で病死したマーラーのすぐ下の弟と同じ名前でした。ですのでマーラーは亡き弟を偲んでこの歌曲集を書いたという説が有ります。

この歌曲集を書き上げた1904年という年は、第5交響曲の初演、第6交響曲の完成、第7交響曲の作曲開始と極めて充実した時期に当たります。このような輝かしい時期に詩人の実体験に基づく曲に夫が取り組むことに妻のアルマは不安を抱き、途中で創作を思い止まらせようとしたそうです。けれどもマーラーはそれを聞き容れずに作品を完成させます。そして翌年の1905年に初演されますが、その僅か2年後に長女のマリア・アンナをジフテリアと猩紅熱で失くしてしまいます。これもマーラーの生涯の悲劇としてよく知られた話です。

そんな背景から生まれたこの歌曲集は本当に素晴らしいです。実際に我が子を失った親にとっては余りにも哀し過ぎて、聴くのが躊躇われるほど辛過ぎるとは思いますが、マーラー特有の旋律の魅力と美しさは繰り返して聴けば聴くほどに心に深く感じられてゆきます。

曲は5篇の詩から成ります。(各曲の要旨)

第1曲 いまや太陽は明るく昇る
いまや太陽は明るく昇る、夜中に何の不幸も無かったかのように。
不幸が起こったのは私だけだ、太陽は皆を明るく照らしている。 

第2曲 いまや私にはよく判る
いまや私にはよく判る、なぜあんなに暗い炎をその目に輝かせていたのかが。
だが私には判らなかったのだ。あの光で私に告げようとしていたのだね。 『私たちをよく見ててね。だってすぐに遠くに行っちゃうんだから』と。

第3曲 おまえの母さんが部屋に入ってくるとき
おまえのお母さんが部屋に入ってくるとき、私にはいつものようにお前がその後にくっついてちょこちょこと入ってくるように思われるのだ。昔のように!

第4曲 よく私は考える、子供たちは外へ出かけただけなのだ
よく私は考える、子供たちは外へ出かけただけなのだ!
すぐにまた家に帰ってくるだろう!天気は良いし心配は無い。あの子たちはちょっと寄り道しているだけなのだ。

第5曲 こんな天気、こんな嵐の日には
こんな天気、こんな嵐の日には決して子供たちを外へ出したりはしなかった。
それなのにあの子たちは運び出されてしまった。それに対して私は何も言えないのだ。

さて、この曲は音域から通常アルト(もしくはメゾ・ソプラノ)かバリトンで歌われますが、指定はされていません。
詩の内容については第3曲目が完全に父親の詩で、残りの4曲はどちらとも言えません。
しかしこの曲が一般的に女性歌手により歌われることが多いのは、子供を失う悲しみ=母親、女性という印象を与えるからかもしれません。曲想からしてもどう聞いても女声がふさわしく感じられます。

音楽的にはどの曲も魅力的で甲乙つけ難いですが、個人的には第1曲と第4曲のマーラーならではの個性的な旋律に強く惹かれます。第5曲の嵐のように迫りくる緊迫感もとても魅力です。

それでは愛聴盤のご紹介です。

Mahlerimg091キャスリーン・フェリア―(A)、ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1949年録音/EMI盤) フェリア―がまだ20代で国際的には無名の頃にワルターがその才能を見出してマーラーの音楽をレッスンしただけあり、本当に素晴らしい歌唱です。一つ一つの言葉やフレーズに込められた情感とニュアンスの深さは比類が在りません。また、今では失われてしまった当時のウイーン・フィルのほの暗く情緒的な音色は比類ない魅力が有ります。録音も優れていて古い割には鑑賞上全く気になりません。このような演奏こそが正に「不滅の名盤」の名に値するのでしょう。

Mahler965D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1963年録音/グラモフォン盤) ベームのマーラーの印象はかなり薄く、事実シンフォニーは聴いたことが有りません。ただ歌曲は「さすらう若人の歌」やこの「亡き子を偲ぶ歌」を演奏しています。決して情緒に溺れはしませんが、彫が深く行き応えが有ります。
特に第5曲の音の迫力と雄弁な金管楽器の扱いは圧巻です。当時のベルリン・フィルの暗めの音色にも惹かれます。問題はむしろFディースカウで、非常に上手い歌唱なのですが、例によって演出臭さが拭えず、どうも知性が感情に勝ってしまうのが玉に瑕です。

064クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)、カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/オルフェオ盤) 数少ないベームのマーラーでザルツブルク音楽祭のライブです。独唱をマーラーを得意とするルートヴィヒが歌います。オケはSKドレスデンですしベームなのでやはり情緒面々と歌いあげるようなスタイルではありません。しかし非常に表情豊かに歌い上げるルートヴィヒに引っ張られてか、演奏全体の印象は極めて人間的で感情のひだがひしひしと感じられる結果となっています。当たり前のことなのですが、これはやはり『歌曲』なのですね。第4曲など悲しみが本当に心に迫ります。

Ph13058ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)、クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響(1980年録音/Profil盤) マーラーの交響曲第5番に付属の二枚目のディスクにこの曲だけ収められた贅沢な扱いです。テンシュテットらしい遅いテンポにより情緒面々と沈滞するような演奏で、やはりこの曲は「こうでなくては!」と感じさせます。どの曲でも魅力的ですが、特に第4、5曲が優れていてます。後者のオーケストラの音の彫りの深さはどうでしょう。表情豊かなファスベンダーの歌唱も非常に優れています。


Mahler_6de5ba13アグネス・バルツァ(Ms)、ロリン・マゼール指揮ウイーン・フィル(1985年録音/CBS SONY盤) 総じてマゼールのマーラーはテンポが遅めですが、この歌曲も例外ではありません。第1曲などはバーンスタインよりも遅く、沈滞の極みとなっています。ウイーン・フィルの音もさすがにワルター時代の濃厚な味わいは薄れましたが、他の団体の音と比べればマーラーの音楽への適性は群を抜いています。バルツァの感情豊かな歌も曲に向いていて、子を失った母親の哀しみを痛切に感じさせて感動的です。

Mahlerthbrzdfft5トーマス・ハンプソン(Br)、レナード・バーンスタイン指揮ウイーン・フィル(1990年録音/グラモフォン盤) バーンスタインとウイーン・フィルとの組み合わせがやはり魅力的です。ウイーン・フィルの持つ美しい音はもちろんのこと、各フレーズの歌わせ方、彫の深さはやはりバーンスタインが最高です。ハンプソンもFディースカウのような演出臭さを感じさせないばかりか、美しい声と落ち着いた歌唱で心に深く訴えかけてきます。

313a121wgvlアンネ・ソフィー・フォン・オッタ―(Ms)、ピエール・ブーレーズ指揮ウイーン・フィル(2003年録音/グラモフォン盤) ブーレーズのマーラーはバーンスタインやテンシュテットのような巨人タイプでは有りません。ウイーン・フィルの持つ音の美感を生かしながら、さらりと水が流れるような透明感のある音楽を引き出しています。オッタ―の若々しく澄んだ声もそれにピッタリであり、心に静かにしみこんでくるような哀しさを感じさせます。但し痛切な感情表現を求める場合には少々物足りなく感じるかもしれません。

名演奏が多過ぎて絞り込むのも躊躇われますが、マイ・フェイヴァリット盤を選ぶとすればやはりフェリアー/ワルター盤です。次点はバルツァ/マゼール盤とします。男性歌手のものとしてはハンプソン/バーンスタイン盤です。

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2017年11月19日 (日)

福島章恭指揮モーツアルト「レクイエム」特別演奏会

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今週16日はオペラシティのタケミツメモリアルへ福島章恭指揮モーツアルト「レクイエム」特別演奏会を聴きに行きました。来月のモーツアルトの命日にウイーンのシュテファン大聖堂で合唱団が歌うツアーの壮行コンサートです。
さすがに入念に準備をかけたであろうという大変素晴らしい合唱でした。良く歌えているだけでなく正に「魂の籠った歌」が感動的でした。それがタケミツメモリアルのあの高い高い天井一杯に響き渡りました!
特別オケの演奏した「魔笛」序曲、そして交響曲第40番の美しさも特筆ものです。弦楽の澄んだ響きが特に印象的でした。この東京ヴェリタス交響楽団を聴いたのは随分以前のことですが、今日の演奏は格段に充実していました。但しウイーンでは現地のオーケストラが演奏するのだそうです。
 
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ウラディーミル・フェドセーエフ指揮チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラの演奏会

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今週15日のこと。ウラディーミル・フェドセーエフ指揮チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラの演奏会を聴きにサントリーホールへ行きました。この団体はやはり以前の「モスクワ放送交響楽団」の名前に馴染みが深いです。前任のロジェストヴェンスキー時代から数々の名演、名盤に親しんできたので。
 
フェドセーエフはもう85歳とは思えないほどのエネルギッシュな指揮ぶりでラフマニノフの交響曲第2番という大曲を楽しませてくれました。このオケのおおらかで馬力の有る音は昔と変わりません。
サブメインのチャイコフスキーの協奏曲を弾いた三浦文彰君については今更何をいわんやというぐらい人気があるので今日も会場には女性ファンが凄く多かったです。熱く激しくこの稀代の名曲を見事に弾き切っていましたが、曲の中で一転して軽く優しく変わる部分などでは表情にまだまだ余裕や洒落っ気が足りない印象を感じてしまいました。しかし無理に往年の大家の真似事をする必要も無く、いずれ余裕が生まれてきた時に更に更に輝きを増してくれることでしょう!
 
帰りはアークヒルズに飾られたツリーがとても綺麗でした!そういえばもうじき「くるみ割り人形」の季節だなぁ。チャイコフスキー、ラフマニノフ、ロシア、万歳!(笑)
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2017年11月17日 (金)

県央音楽家協会「設立一周年記念コンサート」

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11月11日のことですが、私が事務局長を務めている神奈川県の団体である県央音楽家協会の「設立一周年記念コンサート」が大盛況のうちに終わりました。

新メンバーも多く加わった活動二年目でしたが、今回もバラエティに富んだプログラムがとても好評でした。中でも会員作曲家の手による書き下ろしの組曲「三川の四季」では和楽器、洋楽器と声楽の合同で地元の神奈川県相模川流域にちなんだ四季折々の情景が見事に表現されました。

この日、ご来場下さった皆様、日頃応援して下さる皆様、本当にありがとうございました。

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2017年10月11日 (水)

「ロシアより愛の調べ、愛の詩」 ~マリインスキー劇場から訪れたコンサートツアー~

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ロシアの名門マリインスキー劇場からテノールのカルロス・ドノフリオとバリトンのミハイル・ガヴリーロフの二人の歌手と専属ピアニストのエカテリーナ・ヴェンチコヴァが来日して、「ロシアより愛の調べ、愛の詩」コンサートツアーがロシア文化フェスティヴァルの公式プログラムとして開催されました。

ツアーは9月16日の八ヶ岳高原音楽堂公演を皮切りに10月5日の日経ホール公演まで公開演奏会が全6公演、非公開を加えると全部で7公演が行われました。

このコンサートツアーのホスト役となったのはかつてマリインスキー劇場に在籍し、現在は日本で多彩な活動をされているソプラノ歌手の中村初恵さんです。ワレリー・ゲルギエフとともに名門劇場を支えるゲルギエフの姉ラリッサ・ゲルギエワからの信頼も厚く、ラリッサさんが今回のツアーの後ろ盾となってくれたことでこの素晴らしいツアーが実現しました。

それにしてもマリインスキーの男性歌手の実力は圧倒的で、どの曲でもその深々とした声でロシアの歌をじっくりと聴かせてくれました。対照的に中村初恵さんは清らかで澄んだ声質を持ち、ロシアの歌の抒情性や美しい魅力をたっぷりと味合わせてくれました。

今回の7公演のうちの3公演では日本在住の名チェリスト、ドミトリー・フェイギンさん、そしてフェイギンさんの叔父の名ヴァイオリニスト、グリゴリー・フェイギンさんに師事した日本人の優れた若手ヴァイオリニスト小野唯さんがゲストとして参加しました。

もちろん歌手だけでも最上のパフォーマンスが可能なのですが、あえて日本で活躍するロシアゆかりの演奏家が彼らと共演することで、日本とロシアの友好イベントとしての価値が更に高まったと思います。これは単なる営利目的の事業では無く、国際文化交流事業なのですから。

歌を支えるピアノの妙技。さらにヴァイオリン、チェロが加わってのピアノトリオの演奏、伴奏の素晴らしさ。このツアーでは聴きどころが山ほどありました。

私はたまたま中村さんの活動を以前から応援していたことから、このツアーのサポートをさせて頂ける幸運に恵まれ、横浜みなとみらいホール、日経ホール、八ヶ岳高原音楽堂、ロシア大使館での公演に携わりました。

それにしても、これだけの大規模のプロジェクトがマネージメント会社の運営によるものでは無く、幾ら社団法人とはいえ業務に慣れていないスタッフによる手造りコンサートツアーとして運営されたことは奇跡に近いです。

皆さんにこの素晴らしい公演をお聴き頂きたかったですし、それも出来ることなら一つだけでなく構成の異なる別公演も聴いて頂きたかったです。

それがかなわなかった方へ、せめてツアーの写真をご紹介させて頂きます。

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初回公演の前夜、宿泊先の八ヶ岳高原ロッジで出演者とスタッフの夕食風景(9/15)

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八ヶ岳高原音楽堂で開かれたツアーの初回公演(9/16)

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ロシア大使館で開かれたディナーパーティ付きコンサート(9/27)

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バリトンのミハイル・ガブリーロフと中村初恵さんのデュオ(9/27)

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ピアノトリオの伴奏による素晴らしい歌のハーモ二―(9/27)

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横浜みなとみらい小ホールでの主催公演(9/29)

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本番前のリハーサル。ラフマニノフのピアノトリオ第1番「悲しみの三重奏曲」(9/29)

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終演後にロビーにて出演者全員(9/29)

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ツアー最終の日経ホールでの公演(10/5)

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この日は一段と盛大な拍手に包まれました(9/29)

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終演後のロビーでもお客様に温かく迎えられました(10/5)

このほかにも群馬、埼玉で公演が行われました。

そして多忙な彼らは最終公演の翌朝、成田空港行きのバスに乗り東京を離れました。

3週間を超える来日ツアーを行ってくれた彼ら、その準備に1年をかけて運営してくれた中村初恵さんとハートフルアートの事務局長さん。それを陰で支えた大勢のサポーターたち。その結果、かくも素晴らしき日本とロシアの友好コンサートツアーが大成功に終わりました!

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2017年10月 2日 (月)

500万PV到達 心から感謝!

気づかないうちに拙ブログが500万PV(ページヴュー)に到達していました。(汗)

いつも閲覧下さっている皆さまには心からお礼申し上げます!

次に目指すは1000万PV(!)かな? うーんだいぶ先の事です。

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2017年9月15日 (金)

マーラー 歌曲集「少年の魔法の角笛」 名盤

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マーラーの歌曲集「少年の魔法の角笛」は本当に魅力に溢れる作品です。演奏時間が50分にも及ぶ大作ですが、聴いていて楽しくて仕方が有りません。

マーラーの20代から30代の頃の多くの作品に影響を与えている「少年の魔法の角笛」(Des Knaben Wunderhorn)は、クレメンス・ブレンターノとルートヴィッヒ・アヒム・フォン・アルニムの二人が収集したドイツの民謡歌謡の詩集です。「少年の不思議な角笛」、「子供の不思議な角笛」あるいは「子供の魔法の角笛」とも訳されます。(写真は1874年版の表紙絵)

マーラーはこの詩集に音楽を付けて歌曲集としました。但し初めから一つの歌曲集として作曲をしたわけではなく、それぞれ個別に作曲した曲を出版時に一つにまとめ上げましたので、初演時や出版時、さらに出版後に曲の入れ替わりが起きています。

当初出版されたのは以下の12曲です。番号は単に便宜的に記しただけで、演奏する際の曲順は演奏者に委ねられています。

1.歩哨の夜の歌
2.むだな骨折り
3.運の悪い時の慰めっこ
4.この歌を作ったのはだあれ?
5.この世の生活
6.魚に説教するパドヴァの聖アントニウス(交響曲第2番の第3楽章に流用)
7.ラインの伝説
8.塔に囚われ迫害される者の歌
9.美しいラッパの鳴り響くところ
10.お高い良識 自慢する歌
11.原光(交響曲第2番の4楽章に転用)
12.三人の天使が歌った(交響曲第3番の5楽章に転用)

これに後から以下の2曲が加えられました。
13.起床ラッパ
14.少年鼓笛兵

その後、11は交響曲第2番の4楽章に転用され、12も交響曲第3番の5楽章に転用されました。そのために演奏の際に省かれることが多く、1~10に13、14を加えた12曲で演奏されることが一般的となっていました。しかし演奏者によっては11を加えて13曲とすることも有りますし様々です。

その一方、6は交響曲第2番の第3楽章に堂々と流用されていますが省かれることは有りません。マーラーならではの屈指の名曲だからかもしれません。

また更に補足しますと、出版される前まで含まれていて、出版の際に削除された「天上の生」という曲が有りますが、これは交響曲第4番の4楽章に転用されています。

さて、以上のような複雑な経緯が有るためにCDを選ぶ際には、まず収録曲に気を付けなければなりません。もちろん収録曲が多ければ演奏は二の次で良いという問題でもありませんが、個人的には「原光」入りの13曲のものを好んでいます。

さらに楽譜には、歌をどのパートに歌わせるかの指示が有りませんので、様々に歌われています。それぞれの曲を男性が歌ったり、女性が歌ったり、あるいは男女の掛け合いで歌ったりとCDによって色々です。当然、そこには聴き手の好みが現れるわけで、演奏の良し悪しを語る前に自分好みの歌手の配役を選ばなければなりません。ただ、それは幾つかのCDを比較してみて初めて気づくことではあるのですが。具体的には「この歌を作ったのはだあれ?」「ラインの伝説」は絶対に女性に歌ってほしいし、「パドヴァの聖アントニウス」は男性に歌って欲しいです。

曲の演奏順番も多種多様ですが、これは余り気にしていません。

ともかくは所有盤をご紹介します。

<管弦楽版>
Mahler51tjx1stoil_sx355_ワルター・ベリー(T)、クリスタ・ルードヴィヒ(Ms)、レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1967、69年録音/ソニー盤) 「原光」を加えた13曲収録です。オーケストラの音色は明るいのですが、ロマンティックで情緒が非常に豊かに感じられます。各曲のテンポの振幅が大きく実に雄弁に演奏していて楽しませてくれます。弾ける様な楽しさは同じニューヨーク・フィルとの交響曲第4番を思い起こさせます。そして二人の歌手が大変素晴らしいです。歌の分担もまずは理想と言って良いですが、「パドヴァの聖アントニウス」だけはルードヴィヒが歌わずに男性のベリーに歌って欲しかったです。

Mahle41t8c3n03klディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)、エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)、ジョージ・セル指揮ロンドン響(1968年録音/EMI盤) 一般的な12曲収録です。二人の歌手がべらぼうに上手く、両者とも時に過剰な表現意欲を見せる欠点がここではほとんど感じられません。音楽にピタリと同化していますし、二人の絶妙な掛け合い部分には思わず聴き惚れます。セルのオーケストラ統率力にも抜群でロンドン響の一糸乱れぬアンサンブルに驚きます。その分表現がやや堅苦しい印象も無いわけではありません。問題は私の大好きな「この歌を作ったのはだあれ?」をこともあろうにFディースカウが歌っていること。この歌はやはり女性でしょう!しかし逆に「パドヴァの聖アントニウス」では素晴らしい歌を聴かせてくれます。「原光」が入らないのも現在となってはマイナスです。

418kq5z8nclベルント・ヴァイクル(Br)、ルチア・ポップ(S)、クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィル(1985、86年録音/EMI盤) テンシュテットのマーラー交響曲全集の完成段階で並行して録音されました。一般的な12曲収録ですが、あたかもシンフォニーのように管弦楽が濃密に演奏されていて説得力抜群です。和声や対位法の処理の素晴らしさも流石です。好き嫌いが分かれそうなのは、曲によってはまるでオペラのようにオーバーな歌い方をしているヴァイクルです。特に初めは抵抗感が有りますが、聴き慣れてみるとこれはこれで面白さも感じます。ポップの歌唱は美しく素晴らしいです。男性、女性の歌の分担は正に理想的で、自分の好みと100%合うのはこの盤とインバル盤のみです。ただ「原光」が入らないのがとても残念です。

Mahler51wrcxaz3xl_sx355_アンドレアス・シュミット(Br)、ルチア・ポップ(S)、レナード・バーンスタイン指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1987年録音/グラモフォン盤) 「原光」を加えた13曲です。ニューヨーク・フィルとの旧盤と比べると全体的に落ち着いたテンポに変わっています。旧盤のどきどきするような愉しさは失われましたが、その分コンセルトヘボウのしっとりと落ち着いた響きが非常に美しく魅力的です。シュミットは地味ですが堅実、ポップは美しい声質に惹かれます。但し「パドヴァの聖アントニウス」をやはり女性が歌うのは旧盤と同じでバーンスタインの考えなのでしょう。これは個人的にはマイナス。最後に「原光」が置かれていますがこれは非常に美しい名演です。

Mahler_img_5ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)、ダニエル・バレンボイム指揮べルリン・フィル(1989年録音/ソニー盤) 一般的な12曲収録ですが、何といってもFディースカウが一人で歌ってしまう驚きのディスクです。彼自身はシュヴァルツコップ、セルとの共演盤の声のパワーに任せた歌唱よりもずっと表情のゆとりと円熟さを感じさせます。なのでどの曲を聴いても余り違和感を覚えません。しかし男女で歌われる演奏に比べればどうしても変化に乏しい印象になるのはやむを得ないところです。それにこの人特有の演出臭さが無いわけではありません。バレンボイムはベルリン・フィルから柔らかい響きを引き出していて中々に見事な指揮ぶりを聞かせます。

Mahler230010525_2ベルント・ヴァイクル(Br)、イリス・フェルミリオン(S)、エリアフ・インバル指揮ウイーン響(1996年録音/DENON盤) 「原光」を加えた13曲です。歌の分担は理想的で、「パドヴァの聖アントニウス」は男性のヴァイクルが歌っていますし、「この世の生活」と「ラインの伝説」はしっかりと女性が歌っています。色々なCDが有る中で好みと100%合うのはこの盤とテンシュテット盤のみです。ヴァイクルは表情が大げさでオペラっぽく歌いますし、フェルミリオンはオバさんっぽい声質なので最初は戸惑いましたが、何度か聴くうちに不思議とハマりました。インバルもウイーン響の持つ素朴な音を美しく鳴らしていて素晴らしいです。

Mahler51ckktvwq1lマティアス・ゲルネ(Br)、バーバラ・ボニー(S)、リッカルド・シャイ―指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(2000年録音/デッカ盤) 「原光」と「三人の天使が歌った」を加えた14曲の収録ですのでこれはアドヴァンテージとなります。「原光」はメゾに、「起床ラッパ」はテナーにそれぞれ1曲づつ別の歌手に歌わせているのは特徴的です。どの曲も美しく整えられた演奏ですが、比較的あっさりとしていてバーンスタインのようなマーラーへの濃密な思い入れは感じられません。美しいですが余り印象に残りません、曲の分担でも「この世の生活」と「ラインの伝説」を男性のゲルネに歌わせるのは疑問。どちらも絶対に女性でしょう!

<ピアノ版>
Mahler51tjx1stoil_sx355_ワルター・ベリー(T)、クリスタ・ルードヴィヒ(Ms)、レナード・バーンスタイン(Pf)(1968年録音/ソニー盤) これはウイーンでのライブ録音であり、LP盤での発売当時はオーケストラ盤との二枚組でした。その後は別々に販売されていましたが現在はCD二枚組としてオリジナルの形で販売されています。ですのでこれは是非この形で購入して欲しいです。バーンスタインはピアニストとしての技量を論じる前にマーラーの音楽の表現者として計り知れない深みと大胆さを持っているのは流石です。この音楽を是非ともオーケストラ版と聴き比べて欲しいです。元々楽しい歌曲が更に楽しくなります。

Mahlerimg0912ィートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)、ダニエル・バレンボイム(Pf)、(1978年録音/EMI盤) オーケストラ版のセル盤とバレンボイム盤の中間に録音された、マーラー歌曲集に収められています。こちらも一般的な12曲の収録です。バレンボイムはピアニストから出発した指揮者ですので、技術も表現力も素晴らしいピアノを聴かせています。歌曲の伴奏と考えればバーンスタインよりもずっとそれらしいです。ここでも男性一人が歌うので変化に限界は感じますが、好き嫌いは別としてFディースカウの表現力には舌を巻きますし、これはこれで楽しむことが出来ます。

以上の中から、マイ・フェイバリットを選ぶとすれば、管弦楽版はバーンスタイン/ニューヨーク・フィルの旧盤。ピアノ版もバーンスタイン盤です。どちらも最高に楽しい歌曲集の最高に楽しい演奏です。それがカップリング2枚組で購入できるのですから他に選択の余地はありません。
他に上げるとすればテンシュテット/ロンドン・フィル盤とインバル/ウイーン響盤です。どちらも男性歌手がオペラっぽい点が共通していますが、男女歌手の曲分担はベストですしオーケストラも素晴らしいです。

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2017年9月14日 (木)

県央音楽家協会 設立一周年記念コンサートのお知らせ

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神奈川県で活動をする音楽家団体「県央音楽家協会」の設立一周年記念コンサートを11/11(土)13:30より海老名市文化会館小ホールで開催致します。
地元の神奈川に音楽の楽しみをもっと広げようと志す音楽家達への声援を心からお願い致します。新会員も加わって全員張り切っています!

日時:日時:2017年11月11日(土)13:30開演(13:00開場)
会場:海老名市文化会館小ホール
入場料:¥2500 全席自由

曲目予定
《第一部》
◎「江差追分(仮題)」池田文麿作曲(尺八、ヴァイオリン、ヴィオラによる)
◎日本の歌              
 ・「たあんきぽーんき」中田喜直作曲
 ・「浜辺の歌」成田為三作曲
 ・「黄金虫」中山晋平作曲岩河智子編曲
◎「ヴェニスの謝肉祭」ジュナン作曲(ファゴットソロとピアノ伴奏による)
◎「愛の夢」リスト作曲(ピアノ独奏)
◎世界の歌 
 ・「夢のあとに」フォーレ作曲
 ・「鱒」シューベルト作曲
 ・「アメージング・グレース」
 ・「ウィーン我が夢の街」ジーツィンスキー作曲
《第二部》
◎「三川(仮題)」池田文麿作曲  器楽,歌手全員
◎オペラ名曲集  
 ・『トロヴァトーレ』より
「アンヴィルコーラス」~「炎は燃えて」ヴェルディ作曲
 ・『アドリアーナ・ルクヴルール』より「私は慎ましい創造の神の僕」チレア作曲
 ・『トゥーランドット』より「氷のような姫君の心も」プッチーニ作曲
 ・『トスカ』より「妙なる調和」プッチーニ作曲
 ・『トスカ』より「歌に生き、愛に生き」プッチーニ作曲 
 ・『ロミオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」グノー作曲 
 ・『椿姫』より「乾杯の歌」ヴェルディ作曲

<お問合せ&チケットお申し込み>
県央音楽家協会事務局(私が務めています)
メール:asakura_haru@nifty.com
TEL: 090(6009)7213

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N響メンバーによるベートーヴェン弦楽四重奏曲 全曲チクルス第二回のご紹介

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N響メンバーのカルテット”コスモス弦楽四重奏団”によるベートーヴェン弦楽四重奏曲の全曲チクルスの第二回のご紹介です。11月11日(土)、会場は渋谷ラトリエです。

5月に聴きに行った第一回の演奏は非常に素晴らしかったです。アンサンブルの呼吸はぴったりですし、音楽の表情、ダイナミクスなどが練り上げられていたのに感動しました。

第ニ回では、第5番、第6番、それにラズモフスキー1番が演奏される予定です。室内楽のお好きな方は是非いらして下さい。

公演案内ページ

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ニコライ・ホジャイノフと山根一仁、伊藤悠貴のコンサート

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とても楽しみにしているコンサートのご紹介です。
18歳で出場した2010年のショパンコンクールにおいてファイナリストとなったニコライ・ホジャイノフはいまや世界で大活躍しています。 
彼のピアノソロはもちろん楽しみですが、同じく大活躍中の日本の若手のお二人、ヴァイオリニスト山根一仁さん、チェリスト伊藤悠貴さんがチャイコフスキーの大傑作ピアノトリオを共演するとあれば聴き逃すわけにはいきませんね!
平日昼間の開催ですが、ご都合の付く方は是非ご一緒に聴きに行きましょう。

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2017年8月25日 (金)

歌舞伎座 『野田版 桜の森の満開の下』を観劇して

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昨日は歌舞伎座へ行きました。ひと頃は良く行ったものですが、最近はとんとご無沙汰していました。なにしろ新しく建て替わってからは初めてなのですから。

八月納涼歌舞伎の夜の第三部『野田版 桜の森の満開の下』を観劇しました。
坂口安吾の現代小説を野田秀樹が歌舞伎として演出しての公演です。
何といってもこれは野田歌舞伎。野田さんの演出スタイルをそのまま勘九郎、染五郎、七之助といった人気役者が好演しました。音楽では全編に渡りプッチーニのアリア「私のお父さん」が効果的に流れていました。

もちろん面白かったのですが、過去に故中村勘三郎とコラボした「研辰の討たれ」「鼠小僧」「愛陀姫」の三作と比べると正直面白さは半減しました。やはりあの三作は勘三郎がいたからこその楽しさで、野田さん一人だと歌舞伎での上演にはやや限界を感じてしまいます。
でも歌舞伎座で歌舞伎役者が現代演劇を力いっぱい演じるというのは価値あることで、伝統にとらわれない新しい歌舞伎を造ってゆくという素晴らしい取り組みだと思います。
是非また新しい題材で上演して頂きたいものです。

しかし歌舞伎座は良いですね。新しくなっても雰囲気はそのままです。
お弁当屋さんもレストランも充実していますし、リーゾナブルな価格で結構美味しいです。地下フロアには様々な土産物屋さんがずらりと軒を並べていますし眺めて歩くだけでも楽しいです。
それに客席で幕の間にお弁当を食べられるというのは良いことです。これぞ芝居小屋の原点であり、江戸庶民文化の継承ですね。正にここは歌舞伎のワンダーランドです。
これらのことは新国立劇場や東京文化会館では有り得ません。あそこは西洋文化の劇場なのだからと言われるかもしれませんが、劇場の運営予算を削減することばかりを考えずに、どうすれば収益を増やせるかという新しい発想を起こしてほしいですね。
確かにワーグナーの楽劇に弁当は似合わないかもしれません。でもオペレッタや軽いオペラには似合うし楽しいですよ。
お堅い公営劇場で無理ならば、民間でそういうオペラ劇場を作らないですかね?日本独自の庶民オペラ劇場です。
劇場が格式ばかりを重んじていては、日本のオペラが娯楽文化として歌舞伎の楽しさに追いつくことなど100年経っても叶わないでしょうね。
そんなことをつらつらと考えてしまいました。

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2017年8月17日 (木)

N響メンバーによる弦楽四重奏 厚木公演のご紹介

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N響メンバーによる弦楽カルテットの厚木公演です。
第2ヴァイオリンを担当されるのは我が地元厚木出身の宇根京子さんです。
今年の5月にもこのアンサンブルの演奏を聴きましたが、元N響コンサートマスター山口裕之氏を中心とした熟達のアンサンブルが素晴らしかったです。

地元で本格的なクラシック演奏を聴ける少ないチャンスです。お近くにお住まいの方、是非聴きに行きましょう!

◎チケット入手方法等はこちらから
   ⇒厚木市文化財団イベントページ

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2017年8月 3日 (木)

8月3日はブログ記念日 ~9周年記念!~

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『このブログがいいねと君が言ったから八月三日はブログ記念日』 作: 俵ハル

8月3日はこのブログをスタートした記念日なのですが、ここ毎年同じパクリ写真で書き始めています(汗)。でも年配の方には元本は懐かしいのではないでしょうか。

それにしても2008年にブログをスタートしてから、はや9年も経ちました。その間の閲覧回数がもうじき累計で500万回になろうとしています。最近はアクセス数もピーク時より減っていますが、それにしてもまだ多くの方に訪れて頂いているのが本当に嬉しいです。

音楽を専門的に勉強したこともない自分のような素人音楽愛好家が書き綴ったクラシック音楽の記事をこれだけ閲覧して貰えるというのは不思議ですが、むしろ普通の音楽ファンにとっては身近で易しい内容だったからという気はします。今後もマイペースで続けてゆきたいと思います。

さて来年はいよいよ節目の10周年です。記念オフ会でも開けたら楽しいかなと思っていますので、よろしかったらご参加ください。ってまだ1年も先の話ですね。(笑)

今後ともご愛顧のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます!

2017年8月3日
ハルくん

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2017年7月24日 (月)

マーラー 歌曲集「さすらう若人の歌」 名盤

マーラーの音楽の醍醐味は管弦楽を駆使した大編成のシンフォニーにありますが、歌曲もマーラーのファンにとっては格別な魅力を持つ分野です。

歌曲集も幾つか有りますが、連作歌曲集としては「さすらう若人の歌」(Lieder eines fahrenden Gesellen )が最初の作品です。僅か4曲で短いですが、マーラーの最も良く知られた歌曲集であり、素晴らしい魅力に溢れます。

この作品は、本人の手紙の中に記されているように、ヨハンナ・リヒターという女性歌手へのかなわぬ思いが作曲動機となりました。作品は管弦楽版とピアノ伴奏版の二つが有りますが、先にピアノ伴奏版が完成して、その後に管弦楽用の楽譜が完成しました。もっとも初演は管弦楽版のほうが先に行われたという記録が残っています。

歌曲の歌詞はマーラー自身の手で書かれましたが、ドイツ民謡集『子供の魔法の角笛』に影響を受けていて、実際に第1曲は民謡集をベースにしています。

日本では「さすらう若人の歌」と訳されていますが、"Eines fahrenden Gesellen" とはドイツでは「マイスターとなるために国を広く渡り歩いて修行をする職人」という意味なのだそうです。マーラー自身もこの作品を書いた当時、指揮や作曲を学びながら数々の都市を周っていましたので、自らを曲の主人公に重ね合わせたことでしょう。そして若きマーラーは作品の主人公のように失恋の痛手を負っていたのです。”旅と失恋”というテーマは「美しき水車小屋の娘」に出てくる粉ひき職人とも共通していますね。

曲集は4曲から構成されます。
1.
恋人の婚礼の時(enn mein Schatz Hochzeit macht
2.
朝の野を歩けば(Ging heut' morgens übers Feld
3.
僕の胸の中には燃える剣が(Ich hab' ein glühend Messer
4.
恋人の青い目(Die zwei blauen Augen
 

1曲「恋人の婚礼の時」 若者は恋人を失った悲しみを歌います。どんなにこの世の美しさを想ってみても、眠りについている時でさえ、その痛手と苦しみから解放されることはありません。

2曲「朝の野を歩けば」 晴れやかな気分の曲です。朝陽を浴びながら鳥のさえずりや牧場の朝露のような美しい自然の中を歩く喜びに溢れますが、恋人が去ってしまったことを思い出すと自分には幸せが花開くことは無いのだと気づきます。この曲の旋律は交響曲第1番の第1楽章に出てきます。

3曲「僕の胸の中には燃える剣が」 若者は寝ても覚めても、失った女性が自分の心臓にナイフを突き立てるという妄想に襲われ続けます。悪夢から覚めたとき、自分が黒い棺に横たわっていれば、目が二度と開かなければと願わずにいられません。

4曲「恋人の青い瞳」 恋人の青い眼差しは若者に愛と苦しみの両方を与えました。「なぜ私を見つめたりしたんだ?今の私には永遠の苦しみと嘆きしかない」と歌います。
 しかし、街道に立つ一本の菩提樹の蔭で、ようやく安らかに眠ることができ、「人生がどうなるか知りもしないが、全てがまた素晴らしくなった。恋も、苦しみも、 現(うつつ)も、夢も!」と肯定的に曲が終わります。
シューベルトの「菩提樹」を思い起こしますが、悲壮感で終わるシューベルトとは逆の終わり方が興味深いです。 この曲の旋律は交響曲第1番の第3楽章に出てきます。

曲は、バリトンもしくはメゾ・ソプラノで歌われますが、歌詞内容からはバリトンがふさわしいように思います。

それでは愛聴するCDのご紹介です。

管弦楽版
この曲は何と言ってもフィッシャー=ディースカウと切り離すことは出来ません。

Mahlerimg091D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管(1952年録音/EMI盤) 古いファンはこの曲とこの演奏とは切っても切り離せないと思います。フルトヴェングラーが「トリスタンとイゾルデ」のセッション録音を行ったときに時間が余ったことから、その録音に参加していたFディースカウとこの曲の録音が急遽決まったそうです。おかげで我々はこうして永遠の名盤を聴くことが出来るのです。フルトヴェングラーの指揮は全体に遅いテンポで粘りますが、演奏の味の濃さは比類が有りません。若きFディースカウの歌唱も曲に没入していて後年の演出臭さを感じません。そうなると元々の表現力がマーラーにはぴったりです。録音は歌が大き過ぎてバランスが悪いですが明瞭さは充分です。オーケストラの音はさすがに古めかしく感じますが鑑賞に問題はありません。

Mahler710glcwmuul_sy355_D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1950年録音/オルフェオ盤) 前述のEMI盤に2年先立つ歴史的な録音が有ります。これこそはFディースカウのデビューコンサートで一大センセーションを巻き起こしたときの記録です。EMI盤の音質に比べればかなり聴き劣りしますが鑑賞には一応耐えます。何よりもウイーン・フィルの柔らかい音が魅力的です。Fディースカウの歌の表現力の幅と完成度は2年後のEMI盤よりも未成熟な気はしますが、他の普通の歌手と比べれば既に大きく凌いでいます。


Mahler965D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、クーベリック指揮バイエルン放送響(年録音/グラモフォン盤) クーベリックのセッション録音には少なからずみられる傾向ですが、冷静にして表現も幾らか
あっさり気味です。ですのでフルトヴェングラー盤が好きな方には物足りなく感じられると思います。その為かFディースカウの音楽への没入度もいま一つです。けれどもこの曲をマーラー青春の曲と捉えれば、むしろこれぐらいで丁度良いかもしれません。凡百の歌手と比べれば充分過ぎるほどの上手さです。歌とオーケストラの総合点ではトップレベルですのでリファレンスにしたい演奏です。

Mahler_img_5D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、バレンボイム指揮ベルリン・フィル(1989年録音/SONY盤) このバレンボイム盤はゆったりと表情豊かに演奏していて満足出来ます。ベルリン・フィルは音色が明るいのでマーラーの情念が幾らか薄められはしますが美しいですし、演奏そのものは秀逸なので不満ということではありません。但しこれもフルトヴェングラー盤が好きな方には、おっとりし過ぎに感じられることでしょう。第2曲の躍動感もいま一つです。総合的にはFディースカウの歌唱に演出臭さが少ないのは好みですし、
ソニーによる録音は優秀ですし、これはもっと見直されて良い演奏だと思います。

Mahler230030467ミルドレッド・ミラー(Ms)、ワルター指揮コロムビア響(1960年録音/CBS盤) この歌曲集と密接に関わる交響曲第1番があれほど素晴らしいワルターなので期待するところですが、その期待を裏切らない素晴らしさです。楽譜、音符一つ一つの読みの深さはバーンスタインと並びます。それほどテンポが遅いわけでも無いのにオーケストラの表情が何とも味わい深いです。但し歌手にメゾ・ソプラノが選択されていて、ワルター/ニューヨーク・フィルの「大地の歌」でも使われたミラーです。とても良い歌唱なのですがこの曲はやはり男性で聴きたいところです。


Mahler976クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)、ベーム指揮ウイーン・フィル(1969年録音/オルフェオ盤) ベームのマーラー録音は少ないですが、これはザルツブルク音楽祭のライブです。録音も明瞭でウイーン・フィルの音の魅力を味わえます。但しこの演奏にワルターのようなマーラー愛を感じられるかと言えば微妙です。やはりベームにマーラーは余り似合いません。3曲目などもベームにしては凄みが有りません。また
ルートヴィヒの歌唱も意外に良くありません。一生懸命歌っているのですが、粘りが多くしつこすぎに感じます。メゾ・ソプラノなので余計に強く感じられてしまうようです。

Mahlerthbrzdfft5トーマス・ハンプソン(Br)、バーンスタイン指揮ウイーン・フィル(1990年録音/グラモフォン盤) バーンスタインとウイーン・フィルの組み合わせとあれば歌手は誰でも構わない、と言っては極端ですが、それぐらい魅力的な演奏です。フルトヴェングラーに匹敵する大きなスケールと劇的な表現力が圧巻です。録音もずっと新しいのでウイーン・フィルの音の繊細さや美しさをとことん味わうことが出来ます。
ハンプソンはFディースカウと比べると小粒で声に華やかさも不足しますが、バーンスタインの元で中々に健闘した歌唱を聴かせています。これをFディースカウが歌っていたらなどと思うのは止めておきましょう。

Mahler230010525ヨルマ・ヒンニネン(Br)、インバル指揮ウイーン響(1992年録音/DENON盤) ヒンニネンはフィンランド生まれのバリトンですが声質が重く暗い印象を与えます。なので2曲目などは余り似合いませんが、逆に4曲目などでは深く沈んだ雰囲気が音楽にぴったりで非常に惹き付けられます。高域の声が苦しそうに聞こえるのは僅かにマイナスですが、全体的には悪くありません。インバルも落ちついた指揮ぶりで、
ウイーン響の持つ素朴で柔らかい音色を生かしていて素晴らしいです。個人的にはフランクフルト放送響との交響曲全集の響きよりもむしろ魅力に感じられます。

313a121wgvlトーマス・クヴァストホフ(Br)、ブーレーズ指揮ウイーン・フィル(2003年録音/グラモフォン盤) ブーレーズのマーラーはバーンスタインのような巨人タイプでは有りませんが、ウイーン・フィルから極上の美感を引き出しています。それでも第2曲までは特別な印象までは受けませんが、第3曲での演奏の切れ味の良さに耳を奪われ、続く第4曲では一転して遅いテンポで沈滞する味わいに強く惹きこまれます。クヴァストホフの歌も後半2曲の方が出来が良いと思います。総合的にはFディースカウには及ばず、ハンプソン並みという感じでしょうか。このCDは録音が新しいので特にウイーン・フィルの音を楽しみたい方にはお勧め出来ます。

ピアノ伴奏版
ピアノ版でもやはりFディースカウが巾を効かせます。(笑)


Mahler71mnpavvoll_sl1016_D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、バーンスタイン(Pf)(1968年録音/CBS盤) この録音はバーンスタインというマーラー演奏の巨人との共演。このコンビでオーケストラ盤が無いのは残念ですが
喝を癒します。バーンスタインのピアノが全く素晴らしいです。ピアニストとしてどうこう言う以前にマーラーの音楽として最高だからです。この表現の大胆さと表情はどんなに上手いピアニストでも真似できないと思います。加えてオーケストラ以上に曲の構造を理解させます。Fディースカウも同様に表情力豊かで素晴らしいのですが、個人的には何となく演劇臭く、その上バーンスタインに無理やり合わせた歌唱に感じてしまえるのが少々残念です。

Mahlerimg0912D.フィッシャー=ディースカウ(Br)、バレンボイム(Pf)(1978年録音/EMI盤) 前回から10年後のピアノ版の録音ではピアノがバレンボイムに変わりました。マーラー音楽の表現者としてはバーンスタインの足元にも及びませんが、しかしFディースカウは逆に自分の歌を自然に歌っている印象を受けます。凄みには欠けますが歌曲としてのまとまりはずっと良いです。一長一短なものの聴き手の大半の方は、やはりバーンスタイン盤を選ぶと思います。かく言う自分も、どちらか一つと言われれば、やはりバーンスタイン盤に軍配を上げます。

Mahler194クリスティアン・ゲルハーエル(Br)、ゲロルド・フーバー(Pf)(2009年録音/RCA盤) このドイツのバリトンは大好きです。リリカルな声そのものはFディースカウよりも好みます。この人は「さすらう」を室内楽版で一度録音していますのでこれが二度目になるので十分に歌い込んですっかり自分のものにしている印象を受けます。フーバーのピアノも非常に安定して美しくゲルハーエルの歌唱と寸分の隙も感じさせません。破格のFディースカウ/バーンスタイン盤と完成度の高いゲルハーエル/フーバー盤はがっぷり四つのいい勝負です。

室内合奏版(シェーンベルク編曲)
さすがにFディースカウは出てきません。(笑)


Mahler61cd20pmpl_sx300_ql70_ロデリック・ウイリアムズ(Br)、ジョアン・ファレッタ指揮アタッカ四重奏団、ヴァージニア・アーツ・フェスティヴァル・チェンバー・プレイヤーズ(2015年録音/NAXOS盤) 前回ご紹介した室内楽編曲版「大地の歌」のCDにカップリングされています。シェーンベルク編曲の室内合奏版はピアノ版とはまた異なる新鮮さが有ります。これは是非とも聴いて頂きたいです。ロデリック・ウイリアムズはアメリカ人の歌手ですが声も若々しく美しい声が魅力的です。室内アンサンブルの演奏も繊細な味わいが有りとても素敵です。これは間違いなくナクソスの掘り出し物の一つとしてお勧めです。

ということで、この名曲は多くの名盤に恵まれますが、マイ・フェイヴァリット盤は管弦楽版ではFディースカウ/フルトヴェングラー盤とハンプソン/バーンスタイン盤の二つです。

ピアノ版ではFディースカウ/バーンスタイン盤とゲルハーエル/フーバー盤の二つ。室内合奏版は一つですのでそのまま。こんな感じです。

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2017年7月17日 (月)

マリインスキー劇場のソリスト来日公演ツアー~ロシアより愛の調べ、愛の詩~のお知らせ

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世界有数のオペラハウスとして、ウイーン(国立歌劇場)、ミラノ(スカラ座)、ニューヨーク(メトロポリタン歌劇場)と並び称されるサンクトペテルブルグのマリインスキー劇場。

そのマリインスキー劇場でワレリー・ゲルギエフが指揮者・芸術監督を務めていることは有名ですが、将来のマリインスキーを担う若手を育てるアカデミーの設立者・責任者がゲルギエフの姉ラリッサ・ゲルギエワ女史です。あのアンナ・ネトレプコも当アカデミーの出身です。

その名門アカデミーで研鑽を積み、ラリッサ・ゲルギエワに愛弟子として鍛えられ、信頼されたのがソプラノ歌手の中村初恵さんです。

中村さんは我が国におけるロシア歌曲の卓越した歌手であり、現在も日本とロシアを行き来して活躍されています。

その努力と実績がマリインスキーに認められたことから、このほど劇場から二人のソリスト歌手と専属ピアニストとが日本に派遣されて、中村さんと共演ツアーが行われることが実現しました。
東京(2公演)、横浜、埼玉、群馬、長野の合計6か所で公演が行われる大ツアーです。

そのうちの3公演ではロシアでも有名な音楽家ファミリー出身のチェリスト、ドミトリー・フェイギン氏、モスクワで研鑽を積んだ優れた若手ヴァイオリニストの小野唯さんがゲストとして共演をします。

皆さま、この素晴らしいツアーを是非お聴きになられてください。

<日本ツアー日程>
9/16(土)   八ヶ岳高原音楽堂
9/23(土・祝) 太田市学習文化センター
9/27(水)   駐日ロシア連邦大使館(パーティ付き)
9/29(金)   横浜みなとみらい小ホール☆
10/1(日)   久喜総合文化会館
10/5(木)   日経ホール※

企画・制作 一般社団法人ハートフルアート
共催     ロシア文化フェスティバル
協賛     ロシア連邦文化省・日本航空
後援     駐日ロシア連邦大使館・東京室内歌劇場

各公演につきましてのチケット予約・お問合せはフライヤーをご覧ください。

※日経ホール公演(10/5)のご優待チケットお問合せは、ハートフルアート080-3202-5227(中根)まで

☆私がサポートする横浜みなとみらい公演(9/29)のチケットがございますので、お申し込み可能です。
メールにてrsa54219@nifty.com

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